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13話 各々の思惑

リバルとレオリックスの戦闘を観ている者は目が釘付けになっていた。素早く繰り出される攻防はもはや剣舞のようである。


どこかで見たことのある技がいくつも放たれては、反撃の技もまたどこかで見たことのある技。激しい剣技の応酬は見る者を惹きつける魅力があった。


「アイツあんなに動けるなんて……そりゃあミノタウロスも倒せるよね」

「お姉様、あの男に興味が沸いてるんですか?」

「ち、違うわよ!ちょっと気になってるだけだから!」

それを興味があるというのだ、と言いそうになったアルカはグッとそれを飲み込む。


「それにしてもあの動き……本当に山で籠もっていた人とは思えません」

「まだ疑ってるの?言ったじゃない。リバルは山奥で一人で住んでるんだって」

「でもあの動きは明らかに誰かから学んだとしか思えませんよ」

リバルは父親であるハインツから一通りの剣術は習っている。それを改良しているのはリバル自身だが、素人の動きではなかった。


「才能なんじゃない?リバルはあのミノタウロスですら倒して見せたのよ」

「一度手合わせしてみたいです」

「やめときなさい。アンタじゃ簡単にやられてしまうわ」

「ですが私は学年二位ですよ。一つ歳が違いますけど負けるつもりはありません」

アルカは自他共に認める強さがある。学年二位は伊達ではない。しかしミーシャはそんなアルカを見て呆れたようにため息をついた。


「アルカ、昔からいつも自信満々だけれどその驕りがいつか足を掬うわよ」

ミーシャは妹の事が心配だった。


リバルのような才ある剣士を目の敵のように見ているのも今に始まったことでは無い。昔から強い人をみると自分の方が上だと言い聞かせているのだ。


流石に生徒会長を前にしてそんな口は効かないが、それでも副会長程度なら自分でもいい勝負ができると思っているフシがある。


自信過剰なのはいずれ身を滅ぼすと思いながらもミーシャはあまり強くは言わなかった。自分で気づくことこそ成長の一つだと考えている。


「それにしてもレオリックス様はまだまだ余裕がありそうね」

「六聖ですから当然です。あんなよく分からない男に負けるはずがありません」

「でも六聖相手にアレだけ戦えてたら十分凄いと思うけど」

「手を抜いてくれているからです。あんなの本気になれば一瞬でやられますよ」

アルカの相変わらずの態度にミーシャはもう一度深いため息をついた。



一方、サリアは想像以上の人材を見つけたものだと内心歓喜していた。リバルが天才の類であることは気づいていたが、六聖とこれだけ剣を打ち合えるほど腕が立つとは思ってもいなかったのだ。


「お前さんが連れてきたあの子、凄いじゃないか」

「ええ。私もあれほどとは思っていませんでした」

「レオリックスは六聖の中でも最強って訳じゃないが、剣聖であることには変わりないからね。手を抜いているとはいえあれだけ剣を交えることができる奴なんてそうそういないよ」

ガーベラはリバルの一挙手一投足を見逃さないようにしっかりと目に焼き付ける。これから学園のエースになるかもしれない逸材だ。それにガーベラには模倣剣術に対して思うところがあるようだった。


(ハインツ……恐らくあの子はお前の息子なんだろう?なかなかの逸材に育っているじゃないかい)

リバルをジッと見つめているガーベラの瞳は優しかった。



また別の観戦席ではガイラが嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。


「リバルぅ!スゲェ……スゲェじゃねぇかよ!おいアルベルト見たか今の!アイツ次々に流派を変えてやがる!」

「ああ、見ている。あれだけの練度で技を放つ、か。ただ見様見真似、というわけではなさそうだな」

「斜に構えてんじゃねぇぞ。やべぇだろあれ。まあまだ発展途上とはいえあのまま成長したら俺らも勝てなくなるぜ?」

アルベルトも斜に構えているわけではなく、純粋に分析した結果を口にしただけなのだがガイラはそれがイラッとしたらしい。


ガイラとアルベルトはスティーニア学園が誇る生徒会の一員だ。その実力は言わずもがな。そんな二人にとってもリバルの才能は脅威足り得るものだった。


「てかレオリックス様本気で戦ってねぇな。なんか嬉しそうな顔してるが」

「自分と同じ模倣剣術使いだと分かったからだろう。探しても見つからないのが模倣剣術だ。それが今目の前にいて剣を交えている。嬉しい以外にないだろう」

「いちいち分析してんじゃねぇ。お?なんだ?レオリックス様の動きが追えなくなったぞ」

ガイラの目でも追えないほどの速さで動くレオリックス。それをあたかも見えているかのように反応して動くリバル。


リバルへの評価がまた一段階上がっていた。




そして柱の影に隠れて見ている人物。

赤に若干緑のメッシュが入っている特徴的な髪が目立っているのだが、本人はなんら気にした様子はない。レオリックスとリバルの戦闘を食い入るように見つめるアメリアである。


「あの子……欲しいな……」

アメリアは誰に聞かれるでもなく小さく呟く。美人で強くて誰もが憧れる存在であるアメリアは絶賛恋人募集中。数多の男から言い寄られても"弱い"の一言で一蹴してしまう彼女の歳は既に二十も後半に差し掛かっていた。


アメリアにとって弱いことは罪なのだ。

そして残念な事に自分より歳下が好みという。


剣士というのは歳を重ねればそこそこ強くなれるものだが、若いうちから強い剣士というのは少ない。それこそ才能がモノを言う世界だ。しかしどうだ、今見ている少年は歳下でありながら才能溢れる剣士ではないか。これを逃せば婚期は一生巡ってこないだろう。


良物件を見つけたと言わんばかりにアメリアはだらしのない笑顔を浮かべた。




そろそろ決着がつくかと思える終盤戦。

リバルの服はボロボロになり、レオリックスは無傷だった。力の差は歴然。しかしリバルの放った次の一撃は誰もが驚かされていた。



「あの技は……私の流れ星か。劣化版とはいえあそこまで模倣してみせるとは。たった一度見ただけであれほどのクオリティに仕上げるとは、大したものだ」

サリアは独りごつ。自身の放てる最高峰の技を見ただけで真似してみせたのだ。驚かないはずがない。


「よくこんな逸材が眠っていたねぇ。やるじゃないかサリア。今年の剣舞祭はウチの学園が圧倒的勝利を収めるだろうね」

「はい。何年連続で勝っているか数えるのも馬鹿らしくなりますが……流石にそろそろ他の学校も腕が立つ剣士が現れるかと思います」

「そう願いたいね。あんまりにもウチが強すぎて他の学校が見劣りしちまうよ。ここ数年ウチの学園に応募してくる生徒の数は右肩上がりだからねぇ。試験監督が悲鳴を上げていたよ」


スティーニア学園はアストラ帝国が誇る最高峰の学園だ。当然入学希望者が殺到する。


毎年恒例の行事、剣舞祭ではアストラ帝国内の学校が参加し各々鍛え上げた剣の腕を競い合う。ここ最近入学希望者が増えているのはこの剣舞祭が原因であった。


というのも、スティーニア学園が強すぎて何連覇もしているからである。そんな強者が集う学園に自分も入りたいと思うのは自然なことだ。



ただし剣舞祭に出られるのは学園でも優秀な者だけ。


リバルは既に目を付けられていた。学園長だけでなく、生徒会メンバーにも。


「彼なら……少なくとも学年三位以内は確実かと。であれば剣舞祭の出場権が貰えます」

「まあ他の生徒がうるさいだろうねぇ。ポッと出の少年に出場権を奪われるんだから」

リバルが入学した後の事を考え、サリアは苦笑いを浮かべる。


イジメられる、ことは流石にないかもしれないが嫌がらせくらいなら受けるかもしれない。学園が嫌になって辞めてしまわないかだけが心配だった。


「ま、なるようになるさ。ほれ、そろそろレオリックスが終わらせるようだよ」


ガーベラが言葉を発したと同時に、衝撃音が訓練場に響き渡った。

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