第86話 処刑
武林盟大会が終わり、宴席が設けられた。
一般客にも、料理や酒が振る舞われ、優勝者や実力を示した者を盛大に労う。
夜半をすぎても、一向に衰えない喧騒のなかで、
玄夜は、寒舟を見失った。
魔教主が、大勢の前に顔を晒すわけにはいかない。
なので、離れた場所で隠形していた。
それが、よくなかったのかもしれない。
見張っていたつもりが、いつの間にか、姿が消えていた。
周囲を探っても、気配一つない。
高要に、命じて探させるも見つからない。
おかしい。
師兄である、寒舟の実力は、玄夜より遥かに劣る。
それなのに、気配まで辿れないとなると、誰かに誘拐された可能性も出てくる。
それから、三日。
寒舟は帰って来なかった。
民衆が集まる盟館前の広場に、人々が集まっていた。
中央の台の上には、罪人である蘇順が、跪かされ拘束されている。
「父上!父上助けて下さい!」
蘇順は、必死に助けを求めた。
自分を天才と褒めてくれる父なら、必ず助けてくれる。
「父上!何処にいるのですか?」
左側の顔が、ピクリとひきつる。
蘇順の父親は、彼が15歳の年に死んだ。
盟主、臨修言は、淡々と、蘇順の罪状を読み上げた。
「罪人、蘇順。武林盟大会の開催中、毒を用いて謝家当主・謝文徳ならびに長老一名を殺害。さらに毒を広範囲に散布し、多数の民と武林の者を危険に晒した」
修言は、一度大きく息を吸った。
「よって武林盟主の名において――蘇順を斬首刑に処す」
喧騒が、遠くなる。
………蘇順は、ふと顔を上げた。
集まった群衆の中に、鬼医がいる。
その姿を見た途端。
『尊主様は、貴方をお捨てになりました。』
「ああっ……」
鬼医の声が甦る。
「ああ、そうか。本当に………はは...」
処刑執行人が、刀を振り上げた。
蘇順は、目だけで刀を見上げた。
日の光に刃が煌めく。
「尊主様!!」
蘇順が、突然声をはりあげた。
「万象楼、万歳!!」
「尊主様、万歳!!」
「万象楼、万歳!!」
「尊主様、万歳!!」
「はは……はははははっ!」
狂ったように、叫ぶ。
広場は、その狂喜に圧倒され、静まり返った。
「万象…………」
刀が振り下ろされた。
静寂だけが、その場を支配した。
流れた赤い血が、台の上から、ポタリと滴り落ちた。
玄夜は、ようやく寒舟を見つけた。
群衆の中に佇むその肩に、ポンと手を置いた。
振り返るその顔は、青白く唇はきつく結ばれている。
寒舟は、玄夜を一瞥すると、踵を返して歩きだした。
「何処にいく?」
玄夜は、その背中を追いかけた。
ふと、同じ光景を思い出した。
師尊が殺された夜。
最後に別れた時も、こんな風に立ち去る背中を見つめていた。
書くの大変すぎた。
映像としては、イメージできてるんですが……文章にする文才がない。




