↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/92

第82話 月夜の怪人

チリンチリン


その夜、召使の少年は厠に行こうと、布団を出た。


古く趣のある廊下を歩いていると、ふいに、遠くから鈴の音が聞こえる。


気のせいだろうか。


あまり、深く考えなかった。


厠から帰り、布団にくるまる。


チリンチリン


やはり、聞こえる。


一度意識してしまうと、もう眠れない。


しばらく、耐えていたが、勢いよく布団を捲る。


誰だか知らないが、迷惑にもほどがある。


少年は、鈴の音を辿り歩いていく。


屋敷の門の傍。


塀の上にそれはいた。


奇妙な道化の化粧。


月光の下で、舞っている。


動くたび、腰の鈴がチリンチリンと鳴る。


黒い広袖がはためく度に、月光を受けて煌めく粉が舞う。


少年は、劇の一部を見せられているような気分になった。


やがて、道化はピタリと止まり、月光を背に一礼。


姿勢を正したとき、顔の左側が、ひくりと引きつった。


そして………


少年の目の前で、忽然と姿を消した。


翌日、少年は熱を出した。


買ってきた薬を飲む。


布団の中で思った、あれは悪夢だったのではないか。


きっと、具合が悪く夢うつつで見た、幻だったのだろう。






町は、朝から喧騒につつまれていた。


武林盟大会


武林各地から強者が集まる、大祭だ。


ここで、優勝すれば武林一との名声を得られる。


実際、「天下四大達人」と呼ばれる高手達は、

そのほとんどが大会の優勝者だ。


若手は勿論、経験を積んだ者まで、希望と憧れを抱いて、大会に参加する。


優勝までいかなくとも、力を認められれば、二つ名が付くこともある。


それは、武人としての誉れだ。



………そんな訳で、朝から活気に満ち溢れた町中を疲れ果てた寒舟が歩いていた。


隣には、玄夜が並ぶ。


「なぜ、そんなにぐったりしている?」


今日もいつも通り寒舟の屋敷に出勤した玄夜は、しおしおになった寒舟を発見した。


いつもは、沢山食べる朝食も、今日は少なめ。

様子がおかしい。


「………夜通し準備して、朝帰った。そして、今また行く。はは。」


寒舟は、力なく笑った。



大通りを抜けると巨大な演武場が見えてきた。


丸い演武台が一つ、二つ………六つならぶ。


唐家、慕容家、南宮家……名だたる門派や世家の色とりどりの旗がはためく。


ドォォオン


銅鑼が一つ鳴った。


まもなく、大会が始まる。


間に合わない。


寒舟は、用意された主催者席に走る。


走りながら、ふと、横を向く。


いつの間にか隣にいたはずの玄夜が消えていた。















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。