第77話 何処まで付いて来る気なんだ?
薬屋へ行く途中。
玄夜は、寒舟の一歩後ろを付いてきた。
背後からの視線を感じる。
首もとがゾワゾワして、何度もさする。
落ち着かない。
「……玄夜。付いてきてもいいから、隣を歩いてくれないか?」
「監視だからな。師兄を見張れる位置にいなくては、意味がない。」
「なら、より一層、潜んで監視してくれ。」
「なぜ?」
「………鬱陶しい!!」
思わず、髪をかき混ぜる。
視線で、痒い!
「それなら、むしろ後ろにいる。」
意地悪に、にやっと笑う玄夜。
イラッ
なんだこいつ?!
思わず、声出しそうになる。
ギリギリで我慢して、拳を握りしめた。
「もう、勝手にしろ!!」
「最初から、そうしてる。」
「ぐぬぅ」
暫くして、やっと薬店にたどり着く。
店に入ると、漢方の香りが漂ってきた。
引き出しが沢山ある、大きな木の薬戸棚。
台の上には、珍しいガラスの瓶が並んでいる。
ビン中には、乾燥させた薬材が入っていた。
寒舟は、薬店を任せている薬師に、直接説明する。
「成人には、二粒。六歳以下には半量を処方するように。咳止めの効果もある。ひどい咳や頭痛の患者にも処方してくれ。ここに、詳しいメモがあるから、必ず熟読するように。」
仕事の最中でも、熱い視線。
寒舟が振り向くと、玄夜が壁に寄りかかり、腕を組んで、こちらを見ていた。
「寒舟様。彼は?睨まれているようですが。」
「………知り合いだ。気にするな。」
説明を終えて、店を出る前に、寒舟は厠に行きたくなった。
店の厠に行こうと、奥に歩いて行く。
………当然、玄夜もついてくる。
「玄夜。私は、厠に行ってくる。ここで待っていてくれないか?」
寒舟は、諭すように優しく伝えた。
「監視ですから、離れられません。」
「厠でもか?」
「厠でもです。」
寒舟は、眉間を揉みながら言った。
「………せめて、扉の前で待ってくれ。」
「仕方ありませんね。」
暫く後。
すっきりはしたが、心は落ち着かず、疲れた。
甘い物が食べたい。
ストレスだ。
付き纏われながら、町を歩いていると、龍鬚糖の店をみつけた。
アメの塊を伸ばして、繊細な糸を作っていく。
思わず見入ってしまった。
美味しそう。
寒舟は、二つ購入した。
「はぁ、綺麗だな。凄い技だ。」
思わず感心しながら、一粒口に放り込む。
すうっと溶けていく甘さに、ほっとする。
くるっと後ろを振り返り、玄夜にも一粒渡そうとした。
「何ですか?俺は入りません。」
「お前、これ好きだっただろ。」
むぎゅっと唇に押し付ける。
玄夜は、しぶしぶ口を開いた。
「毒が入っていたら、すぐに殺しますよ。」
「はぁ、入ってないから、味わえ。」
玄夜は、舌先に落ちた龍鬚糖をゆっくりと舐めた。
甘い。
「旨いか?」
「………」
「もう、行くぞ。」
玄夜は、無言でその背を見つめた。
本当に、寒舟なのか?
昔と、随分変わった。




