第76話 付き纏われる
寒舟は、朝から薬房で薬を煎じていた。
先日完成した、新しい風邪薬。
この薬は、用法用量を守らなければならない。
青蘭谷が運営している幾つかの薬店に、持っていき、説明しなくては。
………でも、大丈夫だろうか?
玄夜はいないよな?
薬を箱に詰め、傍らの想帰を担ぐ。
一応、持っていこう。
そっと、足を忍ばせ裏口から出る。
きょろきょろ左右上を確認。
よし、いないな…
「師兄。」
「ふぎゃっ!!!」
なぜか、今出たはずの裏口の塀に寄りかかっている玄夜。
……変な声がでた。
ゴホンと咳払いをする。
「ま、また殺しにきたのか?まだ、殺される訳にはいかない!」
想帰を鞘に入れたまま構える。
玄夜は、眼前に構えられた剣を指先でそっと押し返した。
「いえ。貴方の邪術のせいで、何故か殺せません。昨晩も、何度も試しました。」
「なっ?結界があっただろう?」
玄夜は、蔑むように寒舟を見下ろす。
「忘れたのですか?師尊は、陣法の天才でもありました。私は、少ししか教えて頂けませんでしたが、貴方の張った結界ごときなら、すり抜けられますよ。」
「………。」
そんな、馬鹿な。
私は、陣など触れたことも、学んだこともない。
この程度の結界も張れるか怪しいぞ?
完全に管轄外だ。
「まぁ、師兄は、あの頃から、不真面目でしたからね。」
「う、うるさい。」
「昨晩も、私に気付かず涎を垂らして、寝ていましたね。」
「そんなの、嘘だ!」
玄夜は、くすくすと嘲け笑った。
「本当ですよ。」
こいつ!!
「それで、殺しに来たのでないなら、何をしにきた?」
「貴方を監視します。何を仕出かすか分かりませんし、いつかは殺せるかもしれませんから。」
「………まさか、着いてくるのか?」
「もちろん」
にこっ
玄夜は、良い笑顔で言った。
ゾクッ
なんだか、急に寒気が。
嫌な予感しかしない。




