↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/92

第70話 幻の花

この味は………


雪火白蘭(せっかびゃくらん)ではないか?


百年に一度、深い森の奥。


大雪の後に、最も気温が下がった日に開花する。


何千という白い花が一斉に咲き誇り、花から放たれる熱気で、周辺は春のような暖かさになる。


一週間で、全ての花は枯れ、何事もなかったように、雪原に戻るという。


幻の花。


毒性がある。


しかし、使い方次第では、万薬の長とも呼ばれる。


前世薬仙であった私でも、一度しか目にした事がない。


手の中の白磁の壺を眺める。


その花の蜜が、まさか………


「安慈様、この蜜はどこで?」


「深い山で採れた、百花蜜だと貰ったのだ。」


「病の原因は、この蜜かもしれません。お食べになられましたか?」


「…………食べた。」


ふいっと、顔を背け不満そうな安慈。


「他の、長老達もですか?」


「皆で、食べた。」


「そうですか。この蜂蜜は雪火白蘭という、珍しい毒花の蜜ですね。」


「なっ!!毒だと!!蜜をくれたのは、親しくしている猟師の親子だ。なぜ、私達を殺そうとするんだ?」


「落ち着いて。その親子も知らなかったのですよ。自然毒といってたまに、ある事です。冬に蜂蜜が採れる事は、ほとんどありませんから……珍しと思い、自分達は一口も口にせず、親しい長老様に差し上げたいと思ったのでしょう。」



「そ、そうか。意図的では、なかったのだな。」


「猟師を攻めないであげて下さい。解毒は、簡単なので、すぐに雲修様に説明しますね。」


寒舟は、踵を返し外で待っているであろう、雲修を呼びに行こうとした。


「…………まってくれ。」


「?」


「………実は、我々長老は、雲修に甘いものを禁止されているのだ。」


「禁止ですか?」


「………以前、甘味を食べ過ぎ身体が重くなってしまった事があってな。禁止されたんだ。でも、我慢できず、四人で深夜に集まって茶会をしていた………」


安慈様は、必死に言った。


「今回の事は、黙っていてくれないか?」


「…………安慈様。雲修様は、厳しいとは思いますが、言ってる事は正しいですよ。甘味を取りすぎると、足が失くなる事もありますから。薬師として、黙っていている訳にはまいりません。」


「………では、病の原因だけでも秘密にしてくれないか?隠れて甘味を食べて、毒に当たるなど恥ずかしい。」


「…………わかりました。病の原因は秘密にしましょう。その代わり、報酬は全て要りませんので、この蜂蜜をくれませんか?」


「………いいのか?」


「はい。でも、戸棚のお菓子は報告しますよ。」


安慈は、渋い顔をした。


「ぐぬぅ…………」


「ですが、我慢し過ぎもよくありません。もう一度長老様方を診察して、1日に食べれる甘味の量を雲修様に、相談しましょう。」


「…寒舟殿………ありがとう。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。