第68話 長老の病
案内された一室には、一人の老人が寝ていた。
顔色は、青く苦しそうに呼吸している。
寒舟は、すぐに脈を取った。
脈が……遅い。
「どんな、症状がありましたか?」
楚雲修は、少し考えながら言う。
「嘔吐と、目眩がありました。」
「他に、同じ症状の人はいませんか?」
「程度の差はありますが、長老が3人同じ症状です。」
「………なるほど」
何らかの、中毒の症状に似ている。
まだ、原因は分からない。
「何かの毒……あるいは、飲食物に原因があるのかもしれません。水をたくさん、飲ませてください。脈も弱っていますので、身体を冷やさないように。」
「………毒ですか?」
「まだ、わかりません。他の三人も診察しましょう。」
順番に、他の長老も診察していく。
やはり、症状は大体同じ。
吐き気と遅い脈。
その中の一人、比較的軽症だった、楚安慈に、話を聞く事にした。
「楚安慈長老。何か、珍しいものを召し上がったとか、いつもと違う事をしたとか、普段と変わった事はありませんでしたか?」
簡素ながら、上質な家具を揃えた上品な部屋。
その端にある寝台の上。
楚安慈は、身体を起こし寒舟の質問を受けていた。
しかし、どうにも歯切れが悪い。
すっと視線を反らし、短く答えた。
「…………ない。」
「お婆様。本当ですか?」
雲修が問いただすが、逆に安慈の態度は頑なになってしまった。
「………何も食べてなどおらん!雲修は、私の言う事を疑うのか?」
「いえ、そんなつもりはないのですが。お婆様が心配で。」
「ふんっ」
そのやり取りを見ていた寒舟は、そっとため息を付いた。
「雲修様。他に症状が出た方は、本当にいないのですよね?若い門弟や雲修様ご自身は、何ともないのですか?」
「はい。長老方四人だけです。」
う―んと、寒舟は考え込んだ。
視線の先では、安慈が頑なに口を閉ざしている。
とりあえず、疑わしい所から、少し調べてみよう。
「少々時間を下さい。調べてみましょう。原因が分かれば、解毒剤が作れるかもしれません。」
「よろしく、お願いします。」
寒舟は、二人に拱手し、退室した。
四人が、共通して、触ったり食べた物がある可能性が高い。
まずは、井戸を調べてみるか…




