表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/67

第64話 慕容雪希

案内された部屋に入ると、門主である慕容雪希が漆塗りの机に座っていた。


四十代半ばくらいだろうか。


青い上衣に、白の中衣。


鍛え抜かれた、均整の取れた身体つきだ。


精悍な顔には、濃い疲労の色が浮かんでいる。


寒舟は、拱手をした。


「青蘭谷の門主、柳寒舟と申します。」


雪希も、立ち上がり拱手する。


「慕容雪希だ。挨拶が遅れ申し訳ない。」


椅子に座るように、促され寒舟は着席した。


従者の青年がお茶を淹れ、静かに退室する。


それを見届けてから、雪希は話し出した。


「四季の病が、改善したと聞きました。寒舟先生、心からお礼いたします。ありがとうございました。」


深々と、頭を下げる雪希に、寒舟は驚いた。


「薬師として、当然の事をしたまでです。」


「しかし、今まで原因がわからなかった病を治すとは、流石薬仙と呼ばれるお方。」


「四季様ご自身の協力が、あってこそです。」


「だとしても、このご恩は忘れません。」


「………門主様、話しておくべき事があります。」


「なんでしょうか。」


寒舟は、真面目な顔をして言った。


「四季様は、哭面蟲に寄生されていました。本来は、人に寄生する虫ではありません。人為的なものを感じます。」


「四季が、狙われたという事ですか?もしかして、長男の秋生(しゅうせい)も……」


「必ずしも、そうとは言い切れません。しかし、何かが、おかしい。私は、そう感じています。」


雪希の顔が曇る。


疲労の浮かぶ顔が、今にも泣き出しそうに歪む。


「長男が、行方不明になって、一週間。寝る間も惜しんで探していますが、見つかりません。

四季と同じ、夢遊病の症状がありました。

誰かに、連れ去られてしまったのでしょうか……」


「正確な事は、私も分かりません。しかし、少し前に、万象楼ばんしょうろうの怪僧に遭遇した事があります。残酷なやり方が、その時と似ています。もっとも、証拠はありません。」


「な、万象楼?!」


「………あくまで、私の主観です。確証も、根拠もありません。」


ズキッ


急に、腹の奥が疼いた。


「!?」


「寒舟先生、どうされましたか?」


「いえ、大丈夫です。」


寒舟は、腹を押さえた。


……もう、何ともない。


…………気のせい、だろうか?






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ