第53話 演技
前回に引き続き、精神の病の描写があります。
現実の病ではありません。
物語オリジナルのものです。
苦手な方は、ご注意下さい。
「ゲホゲホ」
ようやく、薬を吐き出せた。
袖で口元をぐいっと拭う。
黒蓮華の混じったこの薬。
かなり強い精神薬だ………
「寒舟………どうしてこんな薬を………」
飲めば、一時的に精神を正常にしてくれる。
でも、薬がきれてしまえば………
更なる闇に襲われる……
私が死んだあと、弟子に何があったのだろう?
私は、寒舟に殺された。
しかし、すぐに日本に転生して、幸せな日々を過ごした。
恨んでいない………
そう、伝えられたら、違ったのだろうか……
………いや、今考えてもわからない。
日々を過ごすうちに、自然と見えてくるものも
あるだろう。
そのためにも、まずは本物の寒舟を演じなければ…
確か、薬を飲んでから、半刻ほどで正気に戻る、と聞いた。
あとは、なんだったか………
薬の効き始めは暴れるともいっていた。
暴れるのか?
私が?
ガッシャァァン―――――
唐麗華は、大きな音が聞こえた途端。
またか、と思った。
客人の対応もそこそこに、寒舟の私室に駆けつける。
………そこには………
ひっくり返った、書き物机。
割れた茶器。
倒された鉢植え、溢れた土。
床には、散乱した衣。
部屋の真ん中には、着物を乱し、
結っていた髪をほどいた男が立っていた。
はぁはぁと、肩で息をしている。
「………?」
何時もより、随分控えめだ。
机も倒されただけで、叩き割られてないし。
家具も壊れてない。
「あなた、大丈夫?」
麗華は、寒舟に駆け寄った。
「奥様、気を付けて下さい!」
使用人達が、必死に止める。
「大丈夫、大丈夫」
麗華が、手を伸ばそうとした途端。
寒舟は、よろりとよろめいて、そのまま頭を棚にぶつけた。
「ゔゔ…」
棚の小物がいくつかおちた。
屈み込んで呻く。
暫くして、顔を上げた。
正気に返ったのか、瞳には理性の色が宿っている。
「はっ、わ私はいったい……」
使用人達が、急いで駆け寄っている。
「だ、旦那さま!戻られたのですね?」
「すぐに、白湯をお持ちしろ!」
麗華は、自分の手を見つめ、考えた。
今まで、寒舟を元に戻すとき、パチンと一発叩くのが、常だった。
今日は、必要なかったみたいだ。
いったん予約解除したら、投稿してしまった。
今だに、システムわからない。




