第43話 さよなら
沈七は、夕陽を抱えて走った。
雲で月は陰り、辺りは闇に包まれている。
魔天閣の裏にある、森を駆け抜ける。
夕陽は、腕の中で意識を失ってしまった。
シュン
顔の横を弓が掠める。
「…っ!」
もう、追いついて来たのか。
気配を探る。
10人ほど追ってがいる。
ガァン
鉄剣で、弓を弾く。
本来なら、魔天閣の裏を回って、夜陵城の町に抜ける筈だった。
違う道を通ったと、見せかける痕跡も
残したのに……
ピィーーーーーー
「此方にいたぞ!!!」
けして、甘くみていたわけではない、
だが、思った以上だ。
沈七は、知らず追い詰められた。
気付くと、後ろには崖。
「くっ!!!」
「沈七。観念するんだ。」
高要が、言った。
後ろには、玄夜も佇んでいる。
高要が放った弓が、沈七の頬を切り裂く。
「うっ。」
「なっ、人皮面具!!!!」
薄皮の下、本来の肌が見える。
玄夜は、大きく目を見張った。
「間者め!!」
高要は再び、弓を放った。
沈七は、夕陽を抱えたまま片手で弾く。
ジリジリと、追い詰められる。
玄夜が、スラリと黒雨を抜いた。
剣を握る手が、震える。
「…沈七。よくも、騙したな。」
地を這うような声。
沈七は、うつむいたまま、ポツリと言った。
「騙される方が、悪い。」
雲が流れ、月が顔を出す。
沈七は、顔を上げ首を少しだけ傾けた。
ふっ、唇だけで笑った。
人皮面具の顔を、月光が照らす。
「…玄夜。さよならだ。」
そのまま、後ろにトンッと飛んだ。
夕陽を抱えたまま、空に身を投げ出した。
「!!!」
「沈七っ!!!!!」
もう、声は届かない。
沈七の身体は、あっとゆう間に
闇の下に消えた。




