第四話 料理無双する
あれから数日後。
私は結局、最初に入った料理店で働かせてもらうことにした。
「店主。私を雇っていただけないですか?」
「あなたがですか?」
店主は私を上から下まで眺めた。
どう見ても料理人には見えないのだろう。
それは分かる。
今の私は、人皮面具で変装しているとはいえ、どちらかと言えば商家の坊ちゃんか、仙門の弟子に見えるはずだ。
「給仕なら間に合っていますよ。」
「いや、私は料理人なんです。」
「料理人?」
店主の眉がぴくりと動いた。
どう見ても信じていない顔だ。
「では、一品作ってください。」
「分かりました。」
店主は腕を組んだ。
どうせ冷やかしだと思っているのだろう。
まぁ、無理もない。
見た目だけなら私だって信じない。
・・・
数刻後。
机の上には大鍋いっぱいの煮込み料理が置かれていた。
柔らかく煮込まれた豚肉。
香辛料と薬草の香り。
透き通った琥珀色の汁。
「基本の煮込みです。薬膳を少し加えてあります。」
「ふむ。」
店主は蓮華で一口すくった。
そして固まった。
もう一口。
さらにもう一口。
止まらない。
隣にいた料理人が慌てる。
「店主?毒でも入ってましたか?」
「お前も食え。」
「え?」
「いいから食え!」
料理人も恐る恐る口に運ぶ。
数秒後。
黙った。
「・・・なんだこれ。」
「旨いだろう?」
「旨いなんてもんじゃねぇ。」
二人は顔を見合わせた。
私は首を傾げる。
そんなに驚くほどだろうか。
日本ならもう少し上手い料理人もいた。
もちろん、この世界では見たことがないが。
「お前。」
店主が真顔で言った。
「本当に料理人か?」
「料理人です。」
「今日から来てくれ。」
「明日ではなく?」
「今日だ。」
「分かりました。」
こうして私は、料理店《崑崙閣》こんろんかく
で働くことになった。
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「沈七!豚麺二つ!」
「薬膳煮込み三つ追加!」
「豆花が足りないぞ!」
「今作ります!」
厨房は戦場だった。
火が踊る。
鍋が鳴る。
包丁が響く。
忙しい。
だが嫌ではない。
むしろ楽しい。
私は前世でも料理人だった。
厨房の喧騒は嫌いじゃない。
それに。
この世界には仙術がある。
「便利だな。」
空中に浮いた包丁が野菜を刻む。
隣では鍋が勝手にかき混ぜられている。
さらに別の鍋では煮込みが完成寸前だ。
「・・・沈七。」
「はい?」
「お前、手が足りてるか?」
「足りていますよ。」
「いや、どう見ても足りてないんだが?」
私は首を傾げた。
何を言っているのだろう。
鍋三つくらいなら普通だ。
昔は剣を六本同時に操っていたのだ。
今は身体の関係で四本までしか使えないが。
鍋ならもっといける。
きっと化境の料理人は史上初だろう。
そんなことを考えながら麺を湯切りする。
少し楽しい。
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数日後。
崑崙閣は異常な繁盛を見せていた。
昼。
満席。
夜。
満席。
「店主!」
「なんだ!」
「席が足りません!」
「知ってる!」
店主は頭を抱えた。
客が増えすぎたのだ。
しかも大半が沈七目当てである。
「あの薬膳煮込みをくれ!」
「豚麺二つ!」
「豆花追加!」
「沈七はいるか!?」
「料理人を呼ぶな!」
店主が怒鳴った。
厨房では私が黙々と鍋を振っている。
楽しい。
実に楽しい。
新しい食材。
新しい調味料。
知らない料理。
研究し放題だ。
「沈七。」
「なんですか?」
「お前、どこかへ行ったりしないよな?」
店主が不安そうに聞いた。
私は少し考えた。
確かに、いずれは帰らなければならない。
だが。
「暫くは大丈夫ですよ。」
今はまだ。
この店で学びたいことが沢山ある。
そう答えると、店主は目に見えて安堵した。
その時だった。
店の入口が静かに開く。
黒衣の男が一人。
顔は平凡。
だが妙に存在感がある。
男は店内を見回した後。
当然のように窓際の席へ座った。
「・・・また来たのか。」
私は思わず呟いた。
以前、麺を奢ってくれた妙な男だった。
男は私を見る。
ほんの一瞬視線が合う。
その目元が柔らかくなった気がした。
気のせいかもしれない。
「何にしますか?」
給仕の娘が近付く。
男は答えた。
「沈七のおすすめを。」
「またですか。」
「まただ。」
給仕の娘は苦笑しながら厨房を振り返った。
「沈七ー!」
「なんですー!」
「例の人です!」
「例の人とはなんですか!」
店内から笑い声が上がる。
男は少しだけ眉をひそめた。
だが席を立つことはなかった。
沈七は、料理店で働きはじめました。
コードギアス、魔道祖師、絶対剣感、魔道転生あたりが好きなので、適当に要素混ぜ込みまくってます(笑)
主人公最強好きなんですよね。
ブロマンスも好き。
頭のいい主人公は、難しくて書けなさそうです。
策略練る系書きたかった。




