第39話 命令
薬王閣主の資格剥奪。
一ヶ月の謹慎。
それが、窮奇を前に逃亡した罰だった。
何度も説明しようとした。
だが、最後まで弁明の機会は与えられなかった。
「仕方ないか。報告書をまとめよう。」
どうせ、暇なんだから。
墨をすり終えて、筆を手に取った、
その時だった。
トントン
「沈七様。夕陽です。」
「入っていいぞ。」
「沈七様。」
(盟主様からの伝言です。)
これは、伝音。
(夕陽、君は・・・)
「夕食をお持ちしました。」
(監視されています。このまま伝音で。)
(柳寒舟は、ただちに帰還せよ。との命令です。)
「美味しそうだ、ありがとう。」
(夕陽、君は盟の間者だったのか。)
(・・・申し訳ありません。)
(寒舟様の様子を盟主に伝えるのが任務です。)
(盟に、戻らないと言ったら。)
(・・・奥様と、お二人のご子息が無事ではすまないはずです。)
!!!
な・・・んだと。
柳寒舟には、家族が・・・
急ぎ魔教に来たから、知らなかった。
彼には、守るべき者がいたのか・・・
「今日は、甘味も付いていますよ。」
(わかった。命を受けよう。)
「やった。夕陽ありがとう。」
「ふふ、よかったです。では、失礼します。」
ドサッと、椅子に背を預ける。
天井を見上げ、深く息を吐く。
「……参ったな。」
いままで、柳寒舟の家族の事、
考えた事もなかった。
ただ、身体を借りているだけ。
そう、軽く考えていた。
だが。
「家族、か……。」
守る者がいるのなら話は違う。
私は柳寒舟ではない。
だが、この身体で生きる以上、
守るべきものまで見捨てる事は出来ない。
「帰るしか、ないか。」
そっと、呟いた。
はぁ。
ため息を、一つ。
そっと、窓辺に寄る。
少し欠けた月をみあげた。
陵墓での、様子を思いだす。
「・・・玄夜には、何と言おう。」




