第29話 それは罪
「村長、それはどう言う事ですか?」
「いま、申し上げた通りです。病に掛かっていない者は、遠くに隔離しました。これ以上、苦しむ者が、出ないよう。どうか、お願いします。」
そんな事、できるはずがない。
「できません。」
「では、清月様は、我々を治療できるのですか?」
「それは、調べています。もう少し待って下さい」
村長は、そっと腕を捲った。
「見て下さい。腕がこんなに黒く。処方して下さった薬が切れれば、とんでもない痛さです。実は、孫娘にも、症状が現れました。」
「そんな、バカな。桜凛は、一番初めに避難させました。症状の出る兆候もありませんでした。」
「あの子は、戻ってきてしまったんです。一人で、まだ5歳なのに。森の中を何日も歩いたんです。母親に、会いたい。その為に。」
村長は、静かに涙をながした。
「バカな子です。私の孫だけではありません。
この病は、余りにも苦しい。」
「ですが、私には・・・」
「お願いです。村の皆も納得しています。
どうか、この地獄から救ってください。」
「・・・本当に、それで良いのですか?」
「構いません。」
それから、清月は眠らなかった。
何日も、何日も。
初めて、薬ではなく毒を調合した。
幸せな、夢を見ながら、苦しまず、
最後を迎えられるように。
満月の夜。
佩剣である無名剣を片手に。
村で一番小高い丘に登った。
自分の持っている中で、一番上等な衣を着て、
舞った。
剣舞。
剣線が、月光に光る。
さらりと揺れる銀髪。
袖を一振する度に、金の粉が舞う。
旅立つ者を惜しむように。
旅立ちを祝福するように。
悲しげで、美しい舞だった。
その夜、村人達は、久しぶりに痛みもなくぐっすりと眠れた。
ある者は、家族と食事をする夢
また、ある者は友人と語らい
子供達は、母親や父親、友達と遊ぶ夢を見た。
他愛ない。
幸せな夢。
桜凛は、母親に寄り添い、眠った。
「ほら、肉まんだぞ。」
そう言って笑った、美しい男。
母と、先に失くなった父親と弟。
皆で、満開の桜の下。
お花見をする夢を見た。
幸せだった。
一晩にして、一つの村が滅んだ。




