第27話 討伐部隊
翌朝。
討伐部隊は、各々の馬車に乗り込む。
沈七が、薬王閣の馬車に乗り込んだ時には、
一番戦闘を走る玄夜の馬車は、
とっくに出発した後だった。
「なんだか、寂しいものだなぁ。」
「何がですか?」
今回、沈七の身の回りの世話をする為に、
下女の夕陽が、同行している。
2人は、同じ馬車に乗り、
お菓子を食べたり、話をしたりしていた。
「いや、昔弟子がいたんだが、その弟子が師匠離れしたみたいなんだ。」
「親離れみたいな事ですかね?」
「そうかもなぁ。ほら、夕陽、ほらこの穴が開いてるの、ド―ナッツて言うんだ。食べてみて。」
「油で、揚げてあるんですか。いただきます。」
もぐ
もぐ
「おお、美味しいですね。」
「そうだろう。」
とても、これから窮奇討伐に行くとは、
思えない。
ほのぼのした空間が、広がっていた。
ガタンゴトン
外を見ると、石の転がる悪路。
でも・・・
「この、馬車。あんまり揺れませんね。」
「気付いたか。うっすら霊力で覆って、揺れないよう調節してるんだ。」
「・・・・そんな事する人、初めて見ました。」
「あははは、そうかなぁ」
夕陽は、沈七をそっと眺めた。
何処にでもいる、人当たりの良さそうな男だ。
最初は、もっと気難しいと思っていた。
でも、本当に気さくで、よく話を聞いてくれる。
すぐ、気を許して、何でもスラスラ話せてしまう、そんな雰囲気を持っていた。
恐ろしい。
「そういえばさ、妹さんは?どうしたの?」
「妹は、一足先に故郷に帰りました。
私も、もうすぐ帰るつもりです。」
「じゃあ、辞めちゃうのか・・・」
「ふふ、寂しいですか?」
「だって、魔天閣に来て、初めて親しく、
してくれたのって、夕陽だからね。」
沈七が、魔天閣に連れて来られて、
玄夜が目を覚ますまでの間、
どう生活していいのか、
まったく分からなかった。
その時、助けてくれたのが、夕陽だ。
夕陽のお陰で、他の使用人とも話をする
ようになり、寂しくなくなった。
「ありがとな。」
「そんな、感謝される程の事は、してないですよ。大げさですね。」
照れくさそうに、笑う夕陽。
彼女の、肩で切り揃えた短い髪が、
さらりと、揺れる。
下女用の浅葱色の着物を着ていても、
夕陽は、可愛かった。
どこか、幼さが残る顔つきで、
なんとなく、妹のように思っていた。
やがて、日が沈み、夕焼け空になる。
まだ、目的地につかないようだ。
その日は、森の中で野宿する事になった。
それぞれ閣主ごとに、別れて野営地を準備する。
沈七は、シチューをことこと煮ていた。
やっぱり、こうゆう時は、シチューだろ。
氷攻が使える沈七だからこそ、新鮮な牛乳を
運べる。
良い香りが漂い始める。
自然と魔人達が集まってきた。
その中に、周青もいた。
真っ白い、見たこともない料理。
手渡され、少し嗅いでみる。
食欲の沸く香りだ。
勇気を、出して、一口。
「・・・・ふっ、うまっ」
思わず呟いた。
周囲の魔人達も、一心不乱に食べている。
沈七は、肉を焼きながら、その様子を見ていた。
久々に、料理をした。
やっぱり、自分には、こっちが向いている。
だけど、なんでだろう。
もう、これでこんな時間は、最後な気がする。
嫌だな。
なにかが、終わってしまうような、
そんな予感がした。
森を渡る夜風だけが、静かに木々を揺らしていた。
食事も終わり、皆が寝静まった頃
野営地から、少し離れた木の上に、黒衣の女が
立っていた。
女の元に、1羽の鷹が降り立つ。
女のは、鷹を一撫でし、その脚に何かをくくりつけた。
鷹は、音もなく去っていく。
黒衣の女は、少し寂しそうに笑った。
やがて、女さえも居なくなり、
周囲は、闇に満たされた。
これまで、投稿してきた話しの中で、
魔攻と表記している部分があります。
正しくは、魔功。
今後は、魔気と書いていきます。
後で、一括で直します。
読みにくくて、すみません。




