第二話 武林盟主の命令
案内された、盟主の執務室。
昔と変わらず、高い天井。
豪華な装飾。
そして、王座に座る男。
臨修言
武林盟主その人だ。
昔と何一つ変わっていない。
その厳かな表情も、黒々とした強い瞳も。
「柳長老、傷の具合はどうだ? 」
「問題ありません。」
沈清月は答えた。
柳寒舟らしく、感情を見せないように。
今は、この状況を誰かに知らせるべきではない。
盟主は、満足そうに頷いた。
「ならばよい。」
沈清月は、内心ため息をついた。
どうやら、不審には思われていないようだ。
「一つ任務がある。」
「どのような、任務でしょうか?」
「裴玄夜を調べろ。」
沈清月の指先が、微かに震えた。
裴玄夜。
沈清月の二番目の弟子。
優しく、明るい青年だった。
そんな彼を調べろ?
「最近、魔教の動きが活発になっている。
教主が、裴玄夜に変わってから、各地で正派との衝突が起こっているようだ。」
・・・・?
「裴玄夜が、魔教主?」
思わず声が漏れた。
臨修言の目が一瞬細くなる。
「何を言っているんだ。忘れたのか?」
そんな、はずあるわけない。
だが、今は臨修言に話を合わせた方がよさそうだ。
「私は彼の兄弟子です。顔を知られています。」
「人皮面具を用意した。柳長老の師尊であれば、易容の達人だったのだがな。」
「申し訳ございません。任務を、お受けいたします。」
柳寒舟が、生前の私と同じ立場であれば、この命令は、断れない。
どういった、経緯で私を殺した柳寒舟は、私の
後継者になったのだろうか。
盟主は、公明正大、間違ったことは大嫌いな人物で、前世の私は、多大な恩があった。
「出発は、3日後だ。」
「かしこまりました。」
・・・恩があるとは言え、それは前世の話し。
柳寒舟の身体に、私の霊識が宿ってしまったのは驚いた。
でも、この状態が、ずっと続くとは限らない。
日本での人生を送ったせいか、柳寒舟に恨みはない。
いつか彼の魂が戻ってきたら、身体を返そう。
それまでの、つかの間。
懐かしい世界で過ごすのも、悪くないかもしれない。
任務は、適当にこなし、昔やれなかった事をやってやろう。
私は、そう開き直った。




