第一話 帰還した薬仙
ブロマンス小説になります。
キス、匂わせ程度の表現を書くつもりです。
直接的な表現はありません。ご注意下さい。
2026.7.22
我慢できず、一話のみ書き直しました。
さすがに、酷すぎた。
『起きろ』
声がした。
どこか、聞き覚えのある深い声だった。
そっと、目を開ける。
見慣れない格子の天井。
いや、ある意味では、懐かしさを覚える。
「………ここは、まさか」
思ったより、低い声。
自分の声では、ないような違和感。
私が、最後に覚えているのは、トラックのヘッドライト。
そして、急な衝撃と浮遊感。
車の部品が、バラバラに散らばり、目の前に落ちていく。
動かない身体。
そして…赤い血。
そこからは、何も覚えていない。
どう見ても、この部屋は日本の病院ではない。
薄布が掛けられた、欅の寝台。
深い飴色で、艶がある。
立ち込める香木の香り。
戻ってきてしまったのか…
「まさかな…」
嫌な予感がする。
おもわず、頭を抱えた。
私は、前世。
霊力や武功のある世界に生まれた。
そして、最後は、育てた弟子に殺されて、
死んだ。
その後、驚く事に、日本に転生してしまった。
普通の家庭に産まれ。
幸せな両親の元で育ち。
妹も産まれた。
大人になると、料理人として働いた。
それなりに、人気の店のシェフで、毎日楽しかった。
自分の店をもつという、夢の途中だった。
それなのに…
また、死んでしまったのか?
あの世界に戻ってきたと言うのか?
よろよろと、立ち上がり、近くの机にあった曇った鏡を覗く。
長い黒髪に、黒がかった緑の瞳。酷薄そうな薄い唇。
いつも笑っているようなその顔は、
美形では、あるがやや軽薄そうで、何を考えているのか分からない様に見える。
「……柳寒舟」
これは、前世で私を殺した弟子の顔だ。
どうして、こうなった?
私は、しばらく現実逃避を試みた。
お茶を入れ、ゆっくり飲み込む。
苦い。
窓の外を眺めると、夏の終わりだろうか、虫の声が聞こえる。
ゴクッ
再びお茶を飲む
ああ、それでも…現実は変わってくれない。
私は、なんらかの理由で、自分を殺した弟子、
柳寒舟に乗り移ってしまった。
「そんなことが…」
そんなことが、現実で起こるなんて…
小説では、よくある展開。
何度も、何度も読んだ事がある。
前世の記憶があったから、より熱心に読み漁った。
しかし、元の世界に戻ってしまうなんて!
嘘だろう?!
…弟子の魂は、何処にいってしまったのか?
いつまでこの身体にいられるのか?
分からない事だらけだ。
「幸せに暮らしていたのに。できれば、夢を叶えたかった。」
天は、なんて意地悪なんだろうか。
父は、母は、妹は、私がいなくなり泣いているだろうか?
ボ―っと、感傷に浸っている時だった。
コンコン
扉を叩く音がした。
「…はい。」
思わず、返事をしてしまった。
「柳長老」
袖を絞った、青い衣。
おそらく、ここで修行する弟子の一人。
手を胸の前で合わせ、拱手をすると、
「盟主様が、お呼びです。」
そう告げられた。
盟主…
身体に残った柳寒舟の記憶なのだろうか?
寒舟の今の立場を思い出した。
そうだ、寒舟は、今や正派の長老。
かつての私がいた立場と同じ。
「・・・そうか」
私は、ゆっくり立ち上がった。
右手で、左手をぎゅっとにぎる。
震える足に力をいれた。
今は、何も分からない。
でも、もう後悔したくない。
今度は、過去の私と同じようには、ならないように。
例え、限りのある命でも、自分の思ったように行動しよう。
…日本で、学んだ事がある。
時には、息抜きも必要。
プライベートも、重要だ。
私は、首を傾け、唇の端だけ笑った。
「はは、こうなったからには、好きにやろう」
小さな声で、ぽつりと呟いた。
なんとか、最後までかきたいです。
拙い文章ですが、よろしくお願いします。




