第17話 翌朝
ぎゅう
ぎゅ~う
「裴兄、苦しい」
「玄夜。玄夜と呼んで下さい。」
「玄夜。あの、そろそろ」
私も、空気を読んで我慢していたが、
かれこれ二刻。
「師尊、師尊。」
もう、駄目だ気を失いそうだ。
「げ、玄夜。申し訳ないが、
離してくれないか?」
ぎゅう~~~~~
「嫌です。」
「じゃ、じゃあ、一緒に行くから、取りあえず部屋に入ろう。」
「・・・・わかりました。」
ひょい。
「な、何をしている?」
「担いでます。離れたら、居なくなるかもしれないので。」
「・・・・・」
そのまま、俵のように担がれて、玄夜の部屋に向かった。
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子の刻
私は、まだ寝ることが出来ないでいた。
「師尊、帰らないで下さい。」
「し、しかし。私も眠たい。」
「なら、一緒に寝ましょう。同じ部屋で寝ていた仲です。一つの寝台で寝ても、問題ないでしょう。」
全然違う。
「いや、私は。部屋に帰って寝るつもりだが。」
「この不出来な弟子が、お嫌いですか?」
「そんな事はないが・・・・」
「師尊、お願いします。弟子は師尊がいないと、眠れません。」
「・・・・・・」
結局、押しきられた。
広い寝台は、大人が二人で寝ても十分な広さがあった。
狭くはないが・・・・
ぎゅむっ
後ろから、抱き締められている。
抱き枕か。
「玄夜。くっ付きすぎではないか?」
「居なくなるかもと、不安なんです。」
「居なくならないから、大丈夫だ。」
「このままでは、行けませんか?不安なんです。」
「・・・・・はぁ、まったく、昔と変わらないな。今日だけだぞ。」
子供みたいだ。
昔を思い出す。
「暖かいです。師尊は、ずっと冷たかったから。」
すんすん
すんすん
「師尊、いい香りですね。」
「・・・・・・・・・やっぱり、離れてくれ。」
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翌朝。
午の刻になっても教主が部屋から出てこない。
月影教は、騒然となった。
教主様は、今まで、遅くても卯の刻には起きていた。
こんなに、起きて来なかった事など一度もない。
普段教主様の部屋は、入室を禁じられている。
しかし、安否を確かめなけらばならない。
護法の高要は、処罰覚悟で、扉を開けた。
「・・・・・」
寝台には、二つの盛り上がり。
高要は静かに扉を閉めた。
どうか、見間違いであってくれ。
もう一度扉をあける
やはり二つだった。
夢ではない。
これは、現実だ。
「・・・・・・」
教主と沈七が、同じ寝台でねている。
しかも。
教主の腕が、しっかりと沈七を抱え込んでいる。
逃がすまいとするように。
高要は無言で天を仰いだ。
昨夜、何があった。
いや、絶対に聞きたくない。
・・・・しかし、教主を起こさなければ朝議が始まらない。
覚悟を決めた。
「君上。」
反応なし。
「君上。」
ぴくり。
裴玄夜の眉が動く。
起きた。
高要は安堵した。
その瞬間。
ぎゅうううう
腕に力が入った。
沈七が潰される。
「むぐっ。」
高要は再び無言になった。
裴玄夜は目を開けた。
寝起きとは思えない鋭い視線。
「・・・・何だ。」
「午の刻です。」
「そうか。」
「朝議が。」
「中止だ。」
「・・・は?」
「今日は休む。」
高要は自分の耳を疑った。
月影教が創設されて以来。
いや、少なくとも自分が仕えてから。
教主が朝議を休んだことなど一度もない。
「君上。」
「何だ。」
「熱でもあるのですか。」
「ない。」
「では。」
「忙しい。」
どこがだ。
どう見ても寝ている。
しかも沈七を、抱き締めながら。
高要は言葉を失った。
その時。
「ん・・・?」
沈七が目を覚ました。
寝ぼけたまま周囲を見回す。
「高要さん?おはようございます。」
「おはようございます。」
沈七はにこやかに返した。
状況を全く分かっていない。
いつも通り能天気な顔をしている。
「・・・・・・」
高要は思った。
この人は被害者かもしれない。
その時、教主様が、ぽつりと呟いた、
「師尊。」
師尊とは、誰の事だ?
「あ、あははは。寝ぼけているみたいですね。」
なんで、沈七お前が慌ててるんだ?
何だか怪しい。
しかし、深く聞く訳にもいかない。
「・・・・そ、そうか。」
取りあえず、返事はしたが、やはり意味が分からない。
君上は、あまり人に興味を示さない。
どんな美女であっても、共寝などしたことがない。
だというのに、よりにもよって、どうみても平凡な沈七?
確かに、薬師としての腕は素晴らしい。
性格も悪くはない。
もう一度、沈七を見る。
「なんです?」
「・・・・・」
・・・・忘れよう。
高要は、拝礼すると、素早く扉をしめた。




