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薬仙の帰還  作者: 夏目葵
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第11話 厄介な患者

「沈七大変だぞ!」


楊店主が、駆け込んできた。


「魔天閣からの呼び出しだ。早く来てくれ。」


「魔天閣?」


魔教の総本山。


中心地。


「薬師としての呼び出しだ。」


ということは、病人がいるのか?


「すぐいきます。」


包丁を置くと、すぐさま歩き出す。



店内には、1人の黒衣の使者がいた。


「あなたが、沈七薬師ですか?」


「はい、そうです。」



「重病の患者がいます。今すぐ、一緒に来てください。」


どうやら、ただ事ではない。


かなりの幹部が怪我でもしたのか。


薬仙に戻るつもりはない。


だが、見捨てる気にもなれなかった。


数分後。


簡単に着替えた沈七は、薬箱を肩に担いで店を出た。


もちろん。朝食の饅頭も忘れない。


「ふご、じゅんびできました。」


黒衣の使者は一瞬だけ沈黙した。


「・・・何故、饅頭を。」


「朝食です。」


「今食べる必要がありますか。」


「お腹すきました。」


使者は何かを諦めた。


「行きましょう。」


二人は町を抜ける。


魔天閣へ近付くにつれて。


沈七は違和感を覚え始めた。


静かだ。


あまりにも。


いつもなら、魔天閣周辺は武人で賑わう。


だが今日は違う。


巡回する護衛。


張り詰めた空気。


隠しきれない焦燥。


そんな空気だった。


「・・・重病人って。」


使者の背中へ声を投げる。


「偉い人ですか?」


使者の肩が僅かに揺れた。


「・・・。」


答えない。


その沈黙が。


何よりの答えだった。


沈七は眉をひそめる。

(面倒な予感しかしない。)


ぽいっと、最後の一口の饅頭を口に放り込む。


魔天閣の巨大な門が見えてきた。


普段ならば人の出入りが絶えない場所だ。


だが今日だけは違う。


門前に立つ護衛達の表情は固い。


空気が重い。


まるで葬儀の前のようだった。



~~~~~


案内されたのは、黒一色の部屋。


豪華な寝台が置かれている。


いまは、薄布に遮られよく見えないが、誰か寝ているようだ。


「患者は、あの方ですか?」


「そうだ。何人もの医師や薬師が診察したが、目を覚まさない。」


「それで、私にも白羽の矢が立ったのですね。」


護衛達に見張られながら、そっと寝台に近づく。


薄布を捲った瞬間。


沈七の動きが止まった。


寝台の上にいたのは。


裴玄夜だった。


一瞬だけ。


心臓が強く脈打つ。


「・・・・・・。」


なぜ。


玄夜がここにいる。


昨夜見た夢。


そのままの姿だった。



急いで、診察をする。


浅い呼吸に、蒼白の顔色。


脈を見る。生きているのが不思議なくらいだ。


どうして、こんなことに?


私の弟子だ。


死なせるものか。



「彼は、どうしてこうなったんですか?」


「教主様は、毎年祭の後に儀式をするのです。

私達にも、何をなされているのかは、知らされておりません。」


沈七は再び脈を取った。


眉が寄る。


気脈が裂けている。


霊力の流れも乱れている。


沈七は玄夜の手首を離した。


「彼は毎年この状態になるんですか。」


部屋の空気が変わる。


「・・・はい。」


「いつからです?」


「五年以上前から。」


沈七は黙り込んだ。


五年以上。


これを繰り返して生きていたのか。


「全身の気脈がめちゃくちゃだ。内傷も深い。いつ死んでもおかしくない。」


「そ、それでは教主様は・・・」


「だが、ギリギリ間に合いました。」


慣れた手つきで、針をうつ。


「今から言う薬剤を全て持ってきて下さい。一刻を争います。」


高黄


白火蘭 


六首亀の内丹


幽濃草


「な、お主。教主様を殺すきか?」


近くで見ていた、魔医が沈七につかみかかった。


「今言った薬剤は、全て劇薬。混ぜて使っていいものではない。」


「私は、教主様を必ず助けてみせます。配合一つで、薬効は変わるのです。」


「しかし・・・・」


言い争っている暇はない。


「いいから、持ってきなさい。」


有無を言わせぬ声。


「教主を死なせたくないのなら、早くしろ」


先ほどまでの男の雰囲気ではない。


逆らえる者は、いなかった。



~~~~~


老魔医は、感嘆していた。


その手際。


配合。


まさに神業。


完成した薬湯を玄夜の口にそっと含ませる。


こくっ


「やっと、飲んだ」


ほっと、一息。


「暫くすれば、目を覚ますはずです。」


少し、良くなった玄夜の顔色。


あと少しでも遅ければ、本当に危なかった。




~~~~~~~





師尊の住む小さな家。


裏にある薬草畑。


白銀の長い髪。


綺麗な顔に付いた土。


師尊は気がついていない。



「師尊。あとどのくらい摘みますか?」


「そのカゴが、一杯になるまでだ。」


誰が想像できるだろうか、厳かで美しい薬仙が、


顔を汚して、畑の手入れをしている。


春の暖かい日差し。


横にいる師尊をふとみつめる。


「玄夜。お前は、後どのくらいかかるんだ?」


師尊が、薬草を摘みながら言った。


「どれくらいとは?」


「・・・私は、あとどれくらい冥府を彷徨えばいい。」


師尊が顔を上げる。


瞳から血が流れていた。


「何度失敗するんだ。」


「師尊・・・?」


花が枯れる。


薬草が黒く染まる。


白かった衣が血に染まる。


「苦しい。」


ぽつり。


「苦しい。」


もう一度。


「苦しい。」


師尊の声が重なる。


「苦しい。」


「苦しい。」


「苦しい。」


無数の声になる。


頭を抱えても聞こえる


誰か、助け・・・



『玄夜』




暗闇の向こうから。


懐かしい声が聞こえた。


優しく。


昔と変わらず。






はっと、目を開ける。







正直、自分好みの作品があまりないんですよね。

それは、そうなんですけど。

どこまで、書けてるかわからないですけど、

これは完全に自分のための作品です。

なにか、刺さる作品に出会えたらな。

自分で書く必要もないし。

面倒だし。

ずっと、気に入る作品探してます。

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