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がん病棟の鍼灸師  作者: 中元信作


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第7話 自然治癒力の見つけ場所

 ほとんどの病気や怪我は放っておいても自然に治ります。

 人間が生来備えているこの自然に治癒する能力(自然治癒力)はどうすれば高められるのでしょう?

 自然治癒力はどこにあるのか?


 自然治癒力を、この手で捕まえコントロールしようと何十年にも渡り試行錯誤を重ねてきましたが、未だ捕まえられずにいます。

 同じ治療方法を使っても、人によってうまくいったりいかなかったり、昨日までうまくいっていた方法が、ある日を境に突然うまくいかなくなったり、全然効果がないと捨てていた方法でも、何かの気まぐれで使ってみたら意外とうまくいったりと、相手が生きている人間のせいか、何十年と施術していても治癒には法則が見つかりません。


 自然治癒力は確かにあります。それもすぐ近くの目の前で起こります。なのにコントロールできない。もどかしい。

 病気や怪我が放っておいても勝手に治ってしまうのは誰でも経験するごくありふれた当たり前の現象です。ところがこの現象は人間が意図的に作り出すことができません。

 この自然に治癒する現象がどのような力によってもたらされているのか。

 私も悩んでいますが、実は人類もまた未だその正体を探っている最中にあります。


 ある学者は自然治癒力を免疫力と同じだと言います。私の雇い主であり医療の師匠でもある帯津病院名誉院長のO(オー)先生は、自然治癒力とは生命力だと言います。前者より師匠の方が実態をとらえていると思います。

 どう言ったとしても、やはり人間の支配が及ばない能力、謎が謎のままであることに変わりはありません。


 鍼灸もまた四千年の長きにわたり、数多の優れた先人たちが、この目に見えない自然治癒力を自在にコントロールしようと試行錯誤を重ねてきました。

 その結果は?

 鍼と灸を使えばまあまあの確率で鎮痛はできる、と言えるところまでは到達できた、と思います。

 ただ残念ながら自信を持って言い切れるのはそこまでで、やはり自然治癒力は霧の中にあり、鍼灸もまた治癒力を自在にコントロールし「どんな病気も立ちどころに治せる」までには至っていません。


 余談になりますが、中国は今でも手術の時に針※麻酔をやっているのでしょうか?以前は針のすごさを強調する時には必ず針麻酔が例に挙げられました。気のせいか最近あまり耳にしません。


 ※はりきゅうの漢字は日本の伝統鍼灸の場合だけ「鍼」を用い、そのほかは「針」を用いるのが通例です。私は日本伝統鍼灸の鍼灸師なので通常は「鍼」と書きます。


 帯津病院名誉院長のO先生は中国で実際に針麻酔による手術の様子を見学し、大変驚いたと言っていました。

「開腹して、まさに手術を受けている患者さんなのに、ちゃんと意識があって、目が合うとニッコリ笑って会釈するんだよ!」

 針で麻酔ができるようになれば、麻酔薬によるリスクもなくなり手術が安全になるとO先生はとても感心しましたが、ふと疑問が浮かんできました。

「針麻酔の場合、麻酔が効いているかどうかはどうやってわかるのです?」

 説明を担当していた中国の医師に聞くと、彼は胸を張って答えました。

「なに、そんなのは簡単なことです。お腹をメスで切ってみて患者が何も言わなければ麻酔が効いている。反対に患者が悲鳴を上げれば、」

 これは日本では使えないな、とO先生はその時思ったそうです。おかげで私も手術室に呼ばれずにすみました。


 どうも鍼灸(針灸)業界は社会的な地位を上げるため一生懸命に現代医学の枠に鍼灸を当てはめ、現代医学から認められようと必死になっているようにみえます。

 日本では法律で医学が現代医学に独占されている以上当然とも言えますが、

 現代医学に認められるよりも先に直接病気や怪我で困っている人に鍼灸がどう役に立てるかをもっと必死になって考え努力した方が、鍼灸の社会的地位を上げるのに役立つと思えます。

 私は、以前にも書いた通り鍼灸の手を使ったコミュニケーションには、医学やカウンセリングなど他の言葉に頼った医学健康分野にはない人の治癒力を高める大きな特長があると思っています。

 ただ、言葉を使わないコミュニケーションの素晴らしさを言葉を使って説明するのはとても難しく、また治癒力を高める言っても治癒力を計測する方法が、そもそもありません。

 免疫細胞の数で治癒力を測る人もいます。この場合も、がんの免疫療法がまだがんを常に治せるには至っていないことからも分かるように、仕事をしない怠けものの免疫細胞がいくら増えたとて治癒力は上がらないといえます。なので免疫細胞の数は治癒力を測る方法にはなりません。

 余談が長くなりました。


 私の鍼灸の先輩であり帯津病院の先代の鍼灸師でもあったU先生は、私たちの地球があまりにも大きくどこまでも広いので、どこかにきっと万病を治す治療法が埋もれていて、誰かに発見されるのを待っていると信じていました。

 U先生にとって、鍼灸師のような治療家として生きるということは、地球のどこかに隠れている神秘の治療法を見つけ出すということで、一生をかけた壮大な宝探しをしているようなものだと熱く語ってくれたことがあります。

「どこかに宝が埋まっていると思ったら、楽しくないですか?」

 うれしそうなU先生の笑顔を思い出します。


 一方、もっと冷めている私は、そんな魔法の青い鳥など地球はおろか宇宙の果てまで行ったとしても見つからないと思っています。

 ただ青い鳥はいます。確かにいます。

 探す場所が違います。

 よく聞く青い鳥のお伽話の例に漏れず、自然治癒力の青い鳥も外の世界ではなく自分の内側にいます。

 誰でもみんな自然治癒力を持っているのですから、万病を治す万能の治療法だって外へ出て探し回らずに、自分の内側を探すべきです。自分の治癒力を見つめ直し、活用した方が手っ取り早いですし、自分の治癒力が足りないと思う時は瞑想や坐禅など古くからの鍛錬法で、眠っている能力を高めるといいと思います。その方がお金もかかりません。

 たくさんの人が環境やストレスや思い込みで自らの自然治癒力にフタをしてしまっています。瞑想や坐禅に限らずスポーツでもSNSでも旅行でも食べ放題でも自分を活き活きさせるものならどんなものでも自然治癒力を解き放ってくれるはずです。どうぞ積極的に試してみてください。

 

 今現在さまざまな症状で悩んでいる人は、ちょっと楽しいことをやったくらいでこの苦痛がなくなるはずはないと思われると思います。

 それが思い込みです。

 「そんな膝の痛み、ほっときゃ治りますよ。」

 私うがこう言うと、言い方も悪かったのか知り合いの男性は怒りました。

「絶対治らない!」

「いや治ります。」

「治らない!」

「治る!」

 何回も同じことを言い合っても埒が開かないので、

「私が鍼とかテーピングで手伝ってもいいですけど、自分の膝は自分で治すって決心してもらわないと、手伝っても意味ないですよ。それ、私の膝じゃないんですから。」

 と言うと、

「わかった決心する。」

 と決心して、その後この男性は自分で運動療法をやったりストレッチやったりして今はすっかり膝の痛みがなくなったそうです。 数日前1年ぶりくらいに電話がかかってきたので、

「最近は私の方が膝が痛いですよ。」と伝えると、

「自分で治せ。」と笑っていました。


 自然治癒力を高めようとするとき、ぜひとも注意していただきたいことがあります。

 私たちの健康業界には、悲しいことに悪い人がたくさんいて、人の弱みにつけ込んでは高額な治療や健康法を売りつけることが多々あります。

 先ほども申し上げた通り、自分の外側には万人に効く治療法はありません。なのであまりにも高額なサプリや健康器具には手を出さないのが無難です。

 U先生は自らの宝探しのため様々な健康治療器具を購入しています。中にはかなり高額なものもあります。(彼の場合、購入した健康治療器具や治療法を高額な値段でご自分の患者さんに売りつけることは絶対にありません。彼は悪質な人間ではありません。むしろ滅多にいないくらいの善人です。念のため)。U先生は購入した数ヶ月後「結局効きませんでしたからね!」とムッとしているのがいつものパターンでした。それでもあきらめずに探し続けるのが先生の良いところです。尊敬しています。


 ただ、万能の治療法・健康法はないとしても、ものすごい治癒の力を持った人はいると私は思っています。

 例えば、戦前から戦後にかけて活躍した整体の野口晴哉先生や霊気の創始者の臼井甕男先生などは実際にその手でたくさんの人を救いました。現代にもそういうすごいパワーを持った人がどこかに絶対いるはずです。まだ会ったことはありませんが、昔いたのですから今もいると思っています。今そんな人が私たちの目に触れないのは、おそらく世界的大富豪がその強大な情報網を駆使して彼ら特殊な治癒能力を持った才能を探し出し、世間の目に触れる前に自分の手元に囲い込み隠してしまっているからだ、と私は睨んでいます。世界の富を独占しているように世界的大富豪は現代の貴重な治癒力を独占していると疑っています。


 いずれにせよ、騙されないためには本物を見分ける目を持つことが大事になります。

 見分ける方法は簡単です。本物のヒーラーは高額な金品を要求しません。先ほど挙げた野口先生も臼井先生も無理なお金は要求しなかったと記憶しています。要求しなくてもみんな喜んでお金を渡しました。何しろ彼らは本物ですから。

 対して、私が聞いた一番高額な治療費を要求する輩は、富士山の麓にいて一回の治療で100万円を取りました。私の患者さんはその治療を3回受けたところでついに疑心暗鬼となり

「先生、あと何回(治療を)受けたらいいですか?」と聞くと、大先生は

「治るまで。」と答えたそうです。

「こいつ、治す気ないな」と患者さんは以後そこへ行くのをやめました。


 でも、もしその100万円が本物の治癒力を持った本物のヒーラーだったら?

 本物だったら100万円払ってでも治療を続けるべきだったのでは?

 その必要はありませんし、心配もいりません。

 万が一この人物が本物だとしても、繰り返しになりますが、自然治癒力は誰でも持っているので、何もわざわざ100万円かけて彼に頼らなくても自力で高める方法はいくらでもあるからです。


 自然治癒力を高める方法は、別に治療法や健康法と銘打っている必要はまったくありません。治癒力というものが人を元気にする力である以上、自分が楽しく感じるもの、夢中になれるもの、やっていて気分のよいものならならなんだって治癒力を高めてくれます。手段・方法は問いません。なんだって楽しいことならなんでも治癒力を活性化させてくれます。


 困るのは、100万円のようなタイプのヒーラーが時として呪いの言葉を吐いて、人を不安にし恐怖で人を縛ろうとすることです。しかし、治癒力が人を元気にするポジティブなエネルギーである以上、どんな形であれ心地よいプラスの感情が伴います。その反対の感情、不安や恐怖、なんとなく嫌な感じがする場所に治癒力は生まれません。

 どうぞそのような気分の悪い場所からはすぐに離れてください。そこにいても健康にはなれません。


 治癒力はどんなに苦しいときであっても楽しいと感じているときに発揮されるようです。

 病気を克服した人に話を聞くと、抗がん剤や手術などの過酷な治療をやっている最中でさえも「なんとなく楽しかった」「これが病気を治してくれるんだと思うとゲーゲー吐きながらも心の奥ではウキウキしていた」という言葉をよく耳にします。

 「良薬口に苦し」という諺はその意味で嘘です。

 苦いことで有名な漢方薬も自分の体や症状にピッタリ合っていると甘く感じると言います。


 難しいのは、自分は本当に心から楽しく感じているのかということで、楽しくないことを無理やり楽しく感じようとがんばっても治癒力は高まらないようです。歩くことが究極の健康法だと聞いて、本当は歩いていてもちっとも楽しくないのに「楽しい楽しい」と自分に言い聞かせて無理やり歩くのは、あまり効果が上がりません。

 あるいはマズイ玄米を「おいしいおいしい」と必死に言い聞かせて食べて、良い効果があったのを見たことがありません。悲しくなるだけです。

 ところが、人間というのは本当に複雑で、泣きそうな時に無理に笑顔を作ってみると気持ちが楽になるということもあります。辛い時でも楽しいと思っていれば楽しくなる。このように後から気持ちがついてくるということもあります。

 自分はいったい何が楽しいのだろうと考えれば考えるほどわからなくなってきます。


 両膝が壊れてしまい人工関節を入れている中年の女性が、必死になってテニスをやり、膝が痛くなって私のところに通っていました。医者からあんまりやらない方がいいと言われながら、それでもテニスをやめないで必死になってやっています。これがまた、はたから見ているとちっとも楽しそうではありません。むしろとても辛そうにみえます。おまけに施術に来るたび「コーチに怒られた」「試合に負けた」(私の知る限り彼女は一度も試合に勝ったことがありません)「仲間にひどいことを言われた」などとずっと愚痴を言っているので、私も「そんなに辛いならもうテニスなんてやめたらいいじゃないですか」と提案するのですが、彼女はテニスをけっしてやめようとしません。テニスをやっていると本人にも周囲にもわからない何かがものすごく楽しいのだと思います。

 この女性も私と出会うずっと以前に胃がんを手術で克服しています。でも抗がん剤は辛かったので途中でやめました。


「好きなこと、夢中になれることをやったらいかがですか?」

 私が患者さんにこう言うとほとんすべての人は

「自分が何を好きなのかわからない。好きなものはない。」

 と答えます。当然です。

 好きなものがあるのであれば、私に言わなくてもすでにやっています。


 そんな方に私は、先ほど少し書きましたが『瞑想』を提案します。

 ここでようやく今回のエッセイの最初の問い「どうすれば自然治癒力を高められるのか?」に対する私なりの答えを書くところまで辿り着きました。

 楽しいことが見つからない人に、私は「瞑想」を最も治癒力を高めてくれる方法として提案しています。

 やり方は簡単。

 リラックスして椅子に座り、目を軽く閉じて20分間、吸ったり吐いたり呼吸に気持ちを向けるだけです。雑念が浮かんでも浮かぶままにして、しばらくしたら呼吸にまた気持ちを向けます。これだけです。

 オーストラリアのイアン・ゴーラーという人は1日に瞑想を10時間やってご自分のがんを克服したそうです。この人の本『私のガンは私が治す』は何年か前にプレミアがついてものすごい高値でネットで売られていました。その前に私はこの本を古本屋に10円くらいで売っていたので、売らなきゃよかったとものすごく後悔したものです。それが今アマゾンで見たら169円になっていました。ここまで暴落したのはもしかしたら著者が何かやらかしてしまったのかもしれません。でも良い本です。

 時々NHKでマインドフルネス瞑想が紹介されていることもあります。

 この方法も良い方法だと思います。瞑想の効果に方法の優劣はないと思っています。教室やお寺に通う必要もありません。むしろ怪しい教室やお寺もあるのでお勧めできません。

 自己の治癒力を高めるのですから自己流で全然大丈夫です。自分が気持ちよければそれが正しい瞑想法になります。


 さて、今回も長くなりました。

 ここまで自然治癒力についてあれもダメこれもダメ、これはいけない、あれはいけない、本物はどれで偽物はどれだなどなどと偉そうに書いてきましたが、「じゃあお前は鍼灸師としてどれだけ人の治癒力を高められるのだ?治療家としてどれだけ実力があるのだ?」と疑問に思ってらっしゃる方に答えておかなければフェアではありません。最後に自己紹介がてら私の治療家としての力量をご紹介します。

 鍼灸師、手技療法家としての私は、まあ凡人が到達できるレベルとしては、かなりの高いレベルには到達できていると自負しています。凡人の割には世界のトップレベルの治療家と言っていいと思っています。

 なにしろがんの患者さんばかりの総合病院で働き、毎日、普通の鍼灸師が一生に一度出会うか出会わないかくらいの難しい患者さんを相手に、経験値だけは莫大な量を果てしなく積んできました。

 試みに、どこかの誰かの鍼灸院のホームページを適当に開いてみてください。そこにはおそらくその鍼灸院の治療成功例が紹介されています。その成功例はすべて私も違う患者さんで成し遂げたことがあります。見なくてもわかります。それだけの経験を積んできました。

 ただ、残念ですが、死神を相手に勝ったことは、悔しいけれど一度もありません。


 そこで世界の大富豪の皆様にお願いがあります。

 こんな私ですが、お声掛けいただければ喜んで馳せ参じ、あなたのために働きます。

 その代わり、どうぞ私の代わりに今囲っておられる本物のヒーラーを解放してあげてください。そうして、今病と闘っているたくさんの人たちを苦しみから救ってあげてください。

次回、第8話は病院の幽霊について書くつもりです。

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