黄金の砂が舞った日 〜ヒラム・イブ・ファルダット〜
イブ姫のファンが増えてくれたら嬉しいΣ('◉⌓◉’)
ズードリア大陸の南、ファルダット自由国ーー
そこは常に明るい陽射しに照らされる国。
この国は雨が降ることはあるが、豪雨になることはほとんど無い。
広がるのは果てしない砂漠や荒々しい岩山ばかり。
だがファルダット自由国の王宮だけはーー
その殺風景な景色を覆し、陽炎のように、
玉ねぎのような白亜のフォルムをその灼熱の太陽に晒していた。
その王宮地下深くにある錬金術講堂は、
いつも冷たい石の匂いと薬草の香気に満ちていた。
十歳のヒラム・イブ・ファルダットは、痣だらけの拳を握りしめ、
古い魔導書を睨みつけては、肩を落とす。
「……闇属性の攻撃魔法など、錬金術の深淵に比べれば遊びに等しいわ。
簡単すぎて、退屈じゃな」
そうつぶやき、希少な魔導書をポイッと放り投げる。
彼女が本当に欲していたのは、そんな既製品の魔術の習得ではない。
彼女は幼い頃より、その天性のリズム感から踊りが巧かった。
ファルダットの民、ダークエルフの女性は稀に、
後天的特殊スキルーー『踊り子』を目覚めさせる。
その舞い踊りながら戦う姿は、他国の者からすれば、死の舞と恐れられた。
彼女は夢中でその舞を習得すべく、練習するのが毎日の日課。
一方で女王である祖母からは『月読の兆しは見えぬか』と、
期待の剥落した瞳で問われる日々。
「予言など、不確かな未来に何の意味があるのか……」
彼女が欲したのは、今この瞬間にある命を、
己の手で繋ぎ止める確かな力だった。
ーーその時、講堂に血の匂いが流れ込む。
担架で運び込まれたのはーー
国境の小競り合いで猛毒の刃を受けた一人の若い衛兵だった。
「……もう手遅れだ。内臓が溶け始めている」
師範たちが首を振る中、イブは無意識に動いていた。
彼女の瞳には、兵士の肉体が【物質の結合体】として見えていた。
毒が細胞を崩していく連鎖を、彼女の魔力が波動を捉える。
「還し、編み直すだけよ。妾が、死の運命を書き換える」
彼女は兵士の胸に手を置く。
その瞬間、禍々しくも神々しいーー
黄金の円環が床に浮かび上がった。
「万物よ、汝の基盤たる元素に還れ……!」
澄んだ声で紡がれる詠唱。
それは後に【アルケミア・リジェネラートゥム】と呼ばれるーー
奇跡の萌芽だった。
周囲の大人たちが息を呑む。
イブの手の先から、兵士の皮膚がーー文字通り【砂】となって解けていく。
焦茶色の肌が粒子となり、空気中を舞う。
死を待つだけだった肉体が、個の形を失い、
純粋なエネルギーへと還元されていく。
「くっ……あ、あああああ!」
幼いイブの血管が、魔力の過負荷で浮き上がる。
全身の毛穴から血が滲むような激痛。
だがーー。
彼女は手を離さない。
砂の霧の中で、彼女は見た。
毒素という「不純物」だけが黄金の粒子に弾かれ、
黒い煤となって地面に落ちるのを。
「回帰せよ……完璧なる、形に!」
叫びとともに、宙を舞う砂が急速に収束した。
足元から、ふくらはぎ、腿、腹部。
まるで目に見えない神の機織り機が、
光の糸で肉を織りなしていくかのようにーー。
数秒後。
そこには、毒に侵される前よりも瑞々しい肌を持った衛兵が、
豪快な寝息とともに安堵の表情を浮かべながら深い眠りにつき、
横たわっていた。
静寂が支配する講堂で、イブは膝を折り、激しく肩で息をした。
その手にはーーまだ消えやらぬ黄金の微粒子が、
彼女の運命を祝福するように煌めきを儚く残す。
「……見えた。未来じゃなくて、命の、繋ぎ方が」
彼女の瞳には、予言の静謐さではなく、
破壊と創造を司る覇道への渇望が宿っていた。
これが、後にファルダットの姫ーー
ヒラム・イブ・ファルダットが『錬金術の黒い踊り子』と、
呼ばれるようになる最初の記録である。
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名称:ヒラム・イブ・ファルダット。
ーーファルダット自由国の第一継承権を持つ姫。
パーティ『リリゴパノア』の刺客的存在。
年齢28歳 冒険者ランクS級
ギフト:暗殺者・月読・錬金術師
覚醒スキル:踊り子(死の舞を習得)
冒険者登録名:イブラヒム
冒険者としての二つ名は『暗殺姫』
錬金術師としての二つ名は『錬金術の黒い踊り子』
ダブルネーミングを持つ。
一人称は妾。
ダークエルフ族の女王ーーノリム・ダリ・ファルダットの孫。
【月読】のギフトを持つーー予言の一族でもある。
一夫多妻制の国、ファルダット自由国ゆえに、
異母兄弟が多数いる。
彼女は幼少期よりその才能が開花せず焦りながらも、
ギフトである暗殺者としての格闘術や、
闇属性の魔法を元暗殺部隊の師団長より叩き込まれる。
彼女が持つ【陽刀・灯火】の双刀は、三大妖刀の一つに数えられる。
明るく優しい性格で部下想い。
部下にもフラットな態度が好感を持たれ、慕われていた。
彼女の腹心ーー5人の護衛師団長と部下数百人を引き連れ、
祖母の予言『八咫鴉』の二つ名を持つゴクトーを探す。
彼女の装備は機能性、俊敏性に特化した暗殺者の装備。
一方で、母親譲りの錬金術は目を見張る才能を開花させ、
身体の欠損まで修復させる古代の錬金法を習得。
第一護衛師団長、ガリハナ・カムヨとは幼い頃からの親友。
ガリハナ・カムヨの妹ーー
第二護衛師団長のココハナ・カムヨを自分の妹のように可愛いがっている。
派手なインナー装備を好み、さりげなくゴクトーに見せるのが得意。
月読のギフトが開花したその暁にはーー
ゴクトーを婿に迎える野望を持つ。
ゴクトーの名は呼ばず、「殿」と呼ぶ。
お読みいただき、ありがとうございます。
引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )




