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神様(仮)達の日常  作者: 葛葉 シナチク
4月
15/308

真照失踪事件



「あれ?真照は今日来て無いのか?」

「来て無いな!確か休みらしいぞ!」


九頭龍が答える。今日の朝のガヤガヤとした教室の中に、いつも見慣れた白髪はいなかった。


また風邪か?放課後にお見舞いでも行くかな?


☆☆☆


今日もお土産を持って来た。今日持って来たのもリンゴだが、剥いてない。この間の惨劇の二の舞にしてはいけないと思ったからだ。


真照の家は俺の家から少し遠いが、自転車でなら行けない距離じゃない。カゴの中でリンゴ(高級)が揺れている。


『ピンポーン ピンポーン』


大きな門の横にあるチャイムを鳴らす。直ぐに出るメイド。


「はい。幸神様ですね。如何されました?」

「真照が学校に来て無いんで風邪かと思って…。またお見舞いしに来ました」

「え?」


え?何?俺変な事言ったか?それとも聞こえなかったのか?


しばらく続く沈黙。メイドがおそるおそると言った感じで、


「…本当に、学校に来て無いんですか?」


と念を押すように言った。


「え?あ、はい。…休みじゃ無いんですか?」

「…その話、詳しく教えてくれませんか?今、門を開けます」


キィイイ…


と言う音がして開く門。その大きい門がゆったりと開く様は俺の心に不安を与えた。


庭を急いで駆け抜けて行く。この間見た白菊が完全に枯れていたのも不安に拍車をかけた。


「来て下さりありがとうございます。急いでこちらへどうぞ」


と言われ付いて行った先は食堂だった。大きな一目で高級と分かる真っ白な机に、白いテーブルクロス。天井からは大きなシャンデリアがぶら下がっている。ぼんやりと辺りを照らしている様だ。そして椅子。その椅子には着物を着た男性が1人。…あ。この前真照の家に来た時の帰り際に『ワシはお前を認めんからなぁあああああ!』って言ってた人だ。本当に誰なんだろう?


「良く来たな。ワシは真照の父だ」


あ、真照のお父さんだったのか。良く見たら髪が白色だ。それ以外は似ていない。


真照のお父さんってことは日神財閥のリーダーか。


「いきなりで悪いが君に聞きたい事がある」


目がキリッとして、何がカリスマの様なモノを感じる。すげえ、これが数多の会社を傘下に置く財閥のリーダーか。


「はい。僕に答えられる事なら何でも」


あまりにも威圧が強すぎて一人称も『俺』から『僕』になってしまった。そのうちス○ンド出せそう。ゴゴゴゴゴ…と言う文字が見える気がする。


「…真照が今日学校に来ていないと言うのは本当かね?」

「はい。先生が『今日、日神は休みだ』って言ってました」


九頭龍から聞いた後に先生からも聞いた。遅刻して来た訳でも無かったし、早退と言う訳でも無いらしい。


「実は…真照は今朝ちゃんと学校に行ったのだよ。ワシから休みの連絡をした覚えも無い」

「えっ!?」


って事は真照は学校に行く途中に居なくなったって事か?誘拐?迷子…は無いとして、失踪?


「おそらく君が考えている事の内のどれかだろう。誘拐は金が欲しい人ならやりかねんな。なにせ大財閥の令嬢だ。狙うならこれ以上の上玉はなかなか無いだろう。過去にそう言う事例も何度かあるしな」


なるほど、確かにな。でも、令嬢って言うと車で登校して来そうなイメージがある。マンガでもそう言うシーンあるし。


「真照は車での登校じゃ無いんですか?」

「違うな。真照は徒歩で通学しておる。何でも、『自分の足で行きたい!』と言ってなぁ…。聞かないんだ」


まあ真照はな。普通のお嬢様じゃ無いしな。


「車に押し込もうとするボディーガードを8人全員病院送りにした時は驚いたよ。それに襲って来た誘拐犯を生死を彷徨わせるほど叩きのめした事もあったね。あれ以来力での無理強いは出来ないんだ。返り討ちにされるから…」

「強いんですね…」


真照のお父さん…めんどくさいから社長でいいや。社長に哀愁の色が浮かんでいる。苦労してるなぁ。


…そう言えば真照に初めて会ったのって入学式の帰り道だっけ。あの時真照に助けられて無かったら、今頃俺はこの世に居なかったのかもしれない。


「と言う訳で誘拐は無いと思う。だとしたら失踪って事になるが…。自分から居なくなる理由が分からない。ワシは毎日真照とケンカしておるが、それだとは思えん。嫌だったら無視するはずなんだ」


確かにな。だが、本人の意思じゃなくても居なくなる場合がある。


「…お化け」

「ん?」


お化けの可能性がある。普通、お化けに触れられると命を落とすが、例外がある。お化けに憑依された場合だ。憑依された場合、直ぐには死なないがやがて死んでしまう。死ぬまでの間に様々な事をして人を殺めてしまう。普通にお化けに触れられて死ぬよりもタチが悪い。


「ふむ…。お化けか…」

「真照のお父さんも見えるんですか?」

「いや、ワシは見えん。ただ、真照と穂能(ほの)が言っておったのでな。恐らく居るんじゃないかと言う位だ」


穂能?もしかして真照が言っていた妹か?真照に聞く…いや、居ないんだったな。


…そうだ。こんな風に考えて居るヒマが有るなら探した方が速いんじゃ無いか?


「俺、探しに行きます!時間を掛ければ掛けるだけ真照が危なくなる!」


ガタッと音を立てて椅子から立ち上がる。


「待ちなさい!」


真照のお父さんが俺を止める。


「なんで止めるんですか!?真照が、娘が心配じゃ無いんですか!?」

「勿論心配だ!だが、しらみ潰しに調べて真照が見つかるのか?むしろ、そっちの方が時間がかかるんじゃ無いか!?…心配なのはワシも同じなんだ。だから、今は…落ち着いてくれ」

「……」


…確かにそうなのだ。むやみやたらに探しまわっても時間がかかるだけ。何より、お化けは沢山いる。俺が触られたり憑依されたりしたら元も子もない。せっかく真照に救われた命を棒にふる事になってしまう。


「…分かりました。真照が何処に行ったか心当たりがある所は?」

「…無いな。ああ、我が娘の事ながら何も分からない自分が恨めしい…」

「それは俺もです。付き合いはまだ浅いけれど友達の事なのに…。いえ、悩んで居てもしょうが有りません。真照は今朝学校に行く時何か言ってませんでしたか?」

「いつも通りだったな。『行ってくるわ』って…。いや、ちょっと待てよ?かなり聞き取りにくくて気の所為かと思ったが…『…ありがとう。さよなら』って言って居たような気が…」

「…俺も昨日言われました」


と言うことは真照は自分から居なくなった?なら、何故?


そもそもよく考えたら真照はお化けに対抗する手段を持っている。お化けもわざわざ自分が倒される危険を冒してまで憑依しないだろう。


「他に何か変わった事は?」

「そうだなあ…ここ最近、表情が暗かったな。あと、やりたいようにやっていた様に見えたな」


うーん。あんまりヒントにならないな。他に真照に関係して真照が暗くなる様な事…。やりたい様にやっていた…。


最悪の予想が頭をよぎる。考えたくは無い。考えたくは無いが…。


「まさか真照は、自分が死ぬのが分かっていた…?」


死ぬから、悔いの無い様に過ごす。


死ぬから、自分のやりたい事をやりまくる。


死ぬから、最後のお別れの挨拶をする。


死ぬから、巻き込まない様に皆の前から消える…。


だとしたら何故真照は自分が死ぬのが分かっていたんだ?…あ。鑑定の神力か。真照は『運命も見える』って言っていた。それで自分の運命を見たのか?


それなら何で真照は今日死ぬ運命にあるんだ?交通事故?他殺?いずれにせよお化けが関わっているんじゃないかと思う。この世の死は大体お化けが関わっている。死ある所にお化けあり、だ。


なら何のお化けだ?真照に関係する…かは分からんが、確か血筋に関係するお化けとかはいたはずだ。


「あの、真照のお父さん。この家…血筋に憑いているお化けとかっていますか?」

「ううむ…分からん」


流石に分からないか。お化けは人に見えない分、厄介な存在だ。真照のお父さんがわからなくても仕方ない。


考えを戻そう。真照は何処に行ったか、だが…。多分人気のない所だ。俺達のいる街は中心に俺が通っている学校があって、北に山、東に川、南に海、西に国道があり、北西の方向に川を渡る為の橋、天神橋がある。真照の家は西の国道沿い、俺の家は北北西の方向にあり、山が近い。この中で人気が少なく近いのは…


「山、か…」


人気が少ないのは海も同じだが、海の方は商店街やビルが沢山ある。真照が自分が死ぬのだと分かっていて、俺達を巻きこまないように離れているのを考えると、山だと思う。


「なるほど。確かに行くとしたら山だな。全メイドに告ぐ!これより真照の捜索に入る!特に山を重点的に探すように!以上、解散!真照を見つけ出せぇええ!!!」

「「「承知致しました、旦那様!!!」」」


大きく響く声がいつの間にか食堂に集まっていた沢山のメイド達に告げる。


「さて、君に頼みたい事がある。真照を見つけ出すのに協力してくれないか?」


それは、信頼の目。俺がこれから言うであろう事を予測しての目。俺が言うのはーー


「勿論」


この一言だ。


急いで真照の家を出る。真照は多分徒歩だからそこまで遠くに行けないはず。自転車で全速力で走ってショートカットの道を通れば山に行けるか?


自転車を取りに行こうとした時、自転車の近くに見慣れないものを見た。…手帳か?あまりにボロボロで紙の束にしか見えない。中をパラパラ見て行くと、そこには誰かがやりたかった事、やった事が記されていた。



あたしのやりたい事リスト


あたしは死期が近いらしい。鑑定がそう鑑定した。ならば、やりたい事をやってから死んでやろうじゃない。


・お菓子が食べたい。怒られるまで沢山! ○

・男の子に下の名前で呼んで貰いたい! ○

・部活を作りたい! ○

・誰かに看病されてみたい! ○

etc…


…これ、全部真照がやった事だな。と言うことはこの手帳は真照のやつだな。このリストが書かれた日付けは一年前位だ。


・■■■■

・■■■■

・■■■■

・■■■■


ここはぐちゃぐちゃに塗りつぶされていて読めない。同じ様なのが沢山書かれている。あと、○印が無い。この願いは達成出来なかったのだろうか?


やりたい事リストはここで終わっているが、ここからは日記になっている様だ。


4月○日

今日は大分前から鑑定していなかった自分を鑑定してみた。鑑定なんてしなければ良かったわ。運命の項目が『死亡 16歳』って…。あたしはまだ15歳よ。すぐそこじゃない!嫌だわ。死にたく無い…。


5月×日

運命と言うものについて調べてみた。運命は『強制力の強い未来の出来事』らしい。どうやったら回避出来るのかしら?


6月☆日

調べても分からないわ。もういっそ開きなおってやりたい様にやるわ。勉強もやらないわ。


3月+日

勉強をサボっていたけれど割と良い学校に合格したわ。…もうそろそろ4月ね。まだやりたい事終わって無いのに…。


4月÷日

今日は万と言う男の子に出会ったわ。何でもしてくれるって言うから部活に入ってほしいって言ったら入ってくれたわ。言ってみるものね。これでやりたい事、1つ解消したわね。


4月*日

今日は万が看病しに来てくれたわ。万のお陰でやりたいことが沢山解消出来たわ。良くあたしのワガママに付き合ってくれるわね…。ありがたいわ。


4月〒日

明日が、あたしの命日。明日が、あたしの死んじゃう日。嫌よ。あたしまだ■■■■わ!死にたく無い!もっと万といたかった。もっとずっと■■■■った!嫌よ嫌。もうずっと、明日が来ないで欲しいわ…。


日記はそこで終わっている。俺は日記をカゴに放り込んで走り出した。夜が近づいていた。


☆☆☆


「おーい!真照!!いたら返事しろ!」


全速力で自転車を漕ぎ、山の近くまで行く。返事は無く、ただただ真っ暗闇に声が消えて行くだけ。ちなみにお化けは居ない。珍しいが、それが逆に不安を掻き立てる。


クソ!山に絞り込めたとしても山自体が大きい。どうしようか?と悩んでいる俺の耳に


「キャァアアア!!!」


と言う声が聞こえる。真照の声だ!俺は急いで声の方向に足を進めた。

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