能力は人それぞれ
「なあ、真照。聞きたい事があるんだが」
「何かしら?あたしが答えられる事なら答えるわよ?」
今日は体育館の掃除をしている。誰もいないし、前々から聞きたかったことを聞くチャンスだ。
「真照が猫又を退治する時に出したあの鏡、あれは何処から取り出したんだ?」
バックから取り出した様にも見えないし、そもそもバックに入る大きさでも無い。明らかに物理法則を無視していた。
「…さあ?分からないわ」
「えぇ…」
本人すら分からないのかよ。
「ただ、出そうと思った場所から出るわよ。ほら」
そう言うと真照は右手から鏡を取り出した。正確には右手の辺りに白い光が集まって鏡が形成されたと言うのが正しいか。
「ちょっと見せてくれないか?」
「良いわよ。はい」
俺が真照から鏡を受け取ろうとすると…。
「!?重い…!!」
「え?そうかしら?」
無茶苦茶重かった。確かに大きな鏡だし、それなりに重いだろうと思っていたが予想をはるかに上回る重さだ。
「うーん。あたしには軽く感じられるわねぇ…」
そう言いながら真照は鏡を片手でひょいと持つ。ゴリラかな?
真照の鏡は花を象っているのか?円形の周囲に花びらを象った出っ張り9つある。後ろには持ち手があり、Sの字を繋げてインフィニティマークに似させた様な形の模様が持ち手の回りをぐるりと囲っている。鏡の部分は…普通だな。俺も真照もしっかりうつっている。
「変わった形だな」
「あたしもそう思うわ」
だが、これはただ変わった鏡じゃ無い。ビームが出るんだ。色々やりたい放題の鏡だな。
「鏡からビームが出るんだよな?」
「うーん、如何なのかしらね?あたしには太陽の光が集まってビームになっている様に感じられるわ」
「如何してそう思うんだ?」
「日が出ている時のビームの威力が1番強くて、次に雲りの時、そして雨の時。1番威力が弱いのは夜ね。だから太陽の光が関係しているんじゃ無いかって思ったのよね」
そんな仕組みがあったのか!
「だったらこの鏡を鑑定してみれば確証が持てるんじゃないか?」
「あたしもそう思って試したわよ。でもね…名前しか分からなかったわ。鑑定も完璧じゃ無いのよ」
またまた新事実!ちなみに鏡の名前は八咫の鏡と言うらしい。変わった名前だな。
「鑑定は、ある程度の軽い事しか分からないわ。あまり詳しくは調べられないわね。それに、対象に触らないと発動しないわ。ここが欠点ね」
「でも、凄いじゃないか。俺みたいに普通の人は真照の言うある程度の軽い事も分からないぞ」
「万は普通なのかしらね?」
「なんだとう!?どう言う意味だ!?」
「そのままの意味よ」
何か真照に貶された気がする。
「あ!そう言えば真照以外にも能力を持った人っているのか?」
「いるわよ。あと、能力は神力とも言うらしいわよ?鑑定に載ってたわ」
やっぱり!能力改め神力を持つ人が真照だけだとは思えない。
「そうねー。あたしが知っている限りだとあたしと、あたしの妹。それに九頭龍に、名前は分からないけれど同じクラスの人ね」
そんなにいるのか!?あと真照に妹っているんだな。それに…。
「九頭龍も神力持ちなのか?」
初耳なんだが…。九頭龍が神力を使っている所や真照みたいに何も無い所から何か取り出したりする所とかは見たことが無い。
「うーん、あたしの予想でしか無いのだけれど、彼、自分が神力持ちだって自覚して無いんじゃないかしら?」
そんな事有るのか?と思ったが、九頭龍なら有りそうで怖い。
「神力は自分の強い願いが能力になってたりするから…。仮に強く願って神力が発動したりしても『ラッキー』で済まされる事も無くはないと思うわ。あたしの鑑定みたいにあからさまに『これは異能です』って感じの神力じゃ無ければ…」
なるほど。確かに有りえなくは無いな。
「神力は強い願いから生まれるのか?」
まるで魔法少女だな。
「そうね。あたしは詳しく知りたいって願ったのがきっかけね。最初鑑定が発動した時は驚いたわ」
「だろうな」
俺だって驚くと思う。
「ありがとうな。色々教えてくれて」
「ええ、力になれたのなら幸いよ」
あ、真照がまたメモに書き込んでいる。何が書いてあーー
「見ないでっ!!!」
凄い形相で真照に睨まれた。
「あ、ご、ごめん…」
つい謝ってしまった。それ程に必死な形相だった。
「…良いのよ…。気にしないで。あたしも悪かったわ…」
体育館の掃除を終えた真照は去って行く。
「…ありがとう。さようなら…」
去り際にポツリと呟いた真照の声が嫌に響いた。
「お、おう…。また明日な」
…何故俺は、あの時真照に怒られてでもメモ帳の中を確認しなかったのだろうか?
…何故俺は、あの時真照の顔を見なかったのだろうか?
後悔先立たず。覆水盆に返らず…。




