甘やかなまねごと
本編読了後推奨番外編。
ある平和な日常。
潮風が鼻先を掠めていく。
ガーデンベンチに腰掛けたローズから、物憂げな吐息が立ちのぼる。異国情緒あふれる庭園から覗く紺碧の海は、午後の陽射しにゆったりとまどろんでいた。
つん、ときつい染料のにおいが潮のにおいに絡む。ローズが思わず顔を顰めると、ローズのすぐ脇に立っていたジャックが苦笑した。
「やっぱり、やめとくか?」
「ううん、ひと思いにやってちょうだい」
躊躇いなくそう言えば、ジャックは何度目かわからない哀しげな微笑を見せた。
「ごめんな、ローズ」
「ジャックが謝ることじゃないわ」
「うん、だけどさ。いつかこの色が忌まれた王家の象徴なんかじゃなくて、皆から祝福される色になるといい――いや、そういうふうにしていきたいって、思うんだ」
「……ありがと」
ジャックの指が惜しむようにローズの赤毛を巻きつけ、そして。かつては大嫌いで――今はほんの少し好きになれてきていた薔薇色のつややかな髪が、ブラウンに色づいた。
***
万国博覧会でのアラン強奪事件から二週間と少しが過ぎた。
ローズたちはリュンドから船に乗り、国外脱出を果たしていた。とはいえ、現在ローズたちが身を潜めているのは、メティオラ帝国と接する国境線沿いの港町だ。真昼間からまるで酒びたりのような澱んだ空気が漂っている、歓楽街である。
ジャックに髪を染めてもらったおかげで、こそこそ髪を隠さなくても良くなった。上機嫌にブラウンの髪をなびかせながら鼻唄まで歌っていたローズだったが、大通りを闊歩していた足が繁華で雑然とした雰囲気に飲まれていくにつれ、次第にその勢いを失っていった。
「なんなの」
ローズは癇癪を起こしたくなるのをすんでのところで堪えて、そう呟く。アランが大げさな溜め息を吐いて応えた。
「だから、宿で坊やと一緒に大人しく待っていろと言ったんだ」
「だって、はじめての外国よ? 色々見ておきたいじゃない!」
「正確には二度目だがな」
ローズはタオ王国出身だ。ほとんど覚えていないが、たしかに外国は初めてじゃない。とはいえ、ローズが聞きたいのはそんな屁理屈じゃなかった。
赤く燃える黄昏の街の大通りには、胸元を大きく広げた肉づきのよい女たちが立っていて、アランが通り過ぎるたびに黄色い声が上がっている。
「お兄さん、寄ってかない?」
「妹さんを送り届けたら、あたしと遊びましょ?」
「特別に安くしてあ・げ・る」
肉厚のぽってりとした唇が魅惑的な金髪美女の投げキッスに、アランは涼しい微笑で応えている。
そう――どうやらこの街は娼婦が公然と大通りで客引きを行っているのだ。
ローズの育ってきた帝都やモルクフォードのような、清廉としたいっそ潔癖なまでの街とはまるで異なる。ローズとて貧民街くらいは見たことがあるが、この開き直りっぷりはいっそ清々しい。
「ローズ」
呼ばわれ、顔を仰向けると、アランの気遣うような、それでいてどこかからかいの滲んだ瞳にかち合った。
節くれだった大きな手を差し出され、ローズはますますわけが分からず眉根を寄せる。
「目を瞑ってろ。この通りを抜けるまで、手を引いて連れていく。……それとも、プリンセスには抱っこの方がふさわしいかな」
まるでお姫様抱っこをするように、アランが両手を広げる。
髪をアランに似たブラウンに染めたせいで、娼婦たちから彼の妹だと思われているらしいことも相まって、なんだかかっと頭に血がのぼった。
「べつに良いわよ! 子どもじゃあるまいしっ。それよりアラン、あなた、一人で行きたがったのはここで遊びたかったからじゃないでしょーね」
なんだか、こんな言い方ではアランが他の女と遊ぶのを咎めているみたいだ。それは主従としての枠を逸脱した行為なような気がする。
王候補と王杖としてふさわしい距離感が、いまだローズには分からずにいた。
いつの間にか足を止めていたローズの横で、アランは呆気に取られた様子で両手を広げた間抜けなポーズのまま、目を瞬いている。
「も、もちろん、アランにふさわしい伴侶が現れたら、主として歓迎するわよ? で、でも安易にこういう不純なことはしないでほしいの。あ、でも、これもあなたのプライベートよね……」
弁解するように支離滅裂な言葉を吐き出したローズの手を引いて、アランがゆっくりと歩き出す。
「普通、王杖に私生活なんて存在しない。己が主がすべて――そのあたりは織り込みずみだ」
「でも、わたしはアランにすべてを捧げてほしいとまでは思っていないわ」
「大丈夫、女が欲しけりゃ適当に見繕うさ。あんたは自分のことだけ考えていればいい」
「……そうね、あなたはわたしより八歳も年上だし? わたしがちょっかい出すようなことなんてないわよね」
べつに不満なことなどないはずなのに、拗ねたような口調になってしまう。
たぶん、忠誠を誓ってくれた王杖を盗られたようなそんな気がして、ちょっと寂しい気持ちになってしまっているのだ。
アランと無事、王候補と王杖という関係になったローズだが、彼はローズに対して踏み込ませないところがある。そもそも、八歳も差があればアランがローズの面倒を見るという構図になってしまうのはいたしかたないのかもしれない。
とはいえ、《原石》の塔で思い知ったあの無力感を味わうのは、もう沢山なのだ。
「アラン。わたしに言いたいことがあったら、ちゃんと言ってね。あなたがわたしを助けてくれるのと同じように、わたしもあなたを助けたいのよ」
もちろん、彼の方が年の功もあるし、才能ある魔術師だし、ローズなんかの浅知恵を借りなくたって彼一人でできることの方がずっと多いだろう。分かっていたけれど、そう言わずにはいられなかった。
そもそも、王杖としての生を否定していたアランがどうしてローズの王杖になるなどという誓いを立てたのか、まるで分からないのだ。
ローズの手を握りしめていたアランの手が弛緩する。
「アラン?」
「……末恐ろしいな」
わけが分からずアランを見上げると、彼は眩しげに目を細めた。冬枯れの瞳が夕日を孕んで、どんな宝石よりも艶めいて輝く。
「王杖になると言ったのは、気まぐれでもなんでもない。あんたにぞっこんになったからだ。俺はちゃんと、ローズに助けられている」
「――ッ。アランってそういうこと素面で言っちゃうところがキライだわっ」
「それを言うなら、ローズもたいがいだがな」
肩を竦めたアランが歩調を速める。
いつの間にか、路肩にいた娼婦たちが消えていた。この街を治める領主の屋敷が程近いからだろう。目当ての店は瓦斯灯に照らされた路地の一角にあった。ローズもアランも外国の地理に疎いので、地図を求めにきたのだ。
ローズはその向こうの通りに観光ガイドらしき書物を店先に並べた書店を認めて、そちらに向かって歩き出した。
「ローズ?」
「観光ガイドを捲ってるわ。地図だけじゃ分からないこともあるでしょ?」
「……俺たちはお尋ね人だということを忘れるな。すぐ戻るが、なにかあったら、ちゃんと俺を呼べ」
「アランはちょっと過保護すぎるわ」
「これでも、手綱を緩めている方だと思っているんだがな」
「手綱って、わたしは馬や犬じゃないわよ!」
眉を吊り上げたローズを笑って、アランはひらひらと手を振った。
アランを見送り、ローズは書店で観光ガイドのページを繰った。
「へえええ、この街の動力源って、歯車工学を基にしたものなのね」
異国とはいえ、この辺りの地域は帝国の影響下にある。人々が話す言葉も書物に用いられる言語も、メティオラ語だった。
観光ガイドを読みにきたはずなのに、頭のなかを占めるのはアランのことだった。
アランは、女が欲しけりゃ適当に見繕うなどとのたまっていた。
(まあ、当然よね。性格はちょっとアレだけど、なんたってあの顔だもの。なんにもしなくても女の人が寄ってくるくらいだし、恋人がいてもおかしくない――ていうか、いるのかしら。……わたしって、本当にアランのことなにも知らないのね)
とはいえ、彼が示してくれた誓いは本物だと思う。
王女だとか契約だとか王杖だとか、いまだ現実感が伴わない言葉ではあるのだけれど、これが今のローズを取り巻くまぎれもない現実なのだ。
(アランはアランの意志で王杖としての生き方を選んだって、言ってくれた。だけど、わたしの生きる道に彼を縛りつけているのも事実だわ)
彼にふさわしい主にならなければならない。手始めに春の力を使いこなせるようになること――は難しくても、ある程度制御できるようにならなければならない。この力がまた大量殺戮を招くようなことがあればローズはアランやジャックに顔向けできないし、タオ人の未来を根こそぎ奪うことになりうる。
「カーノジョ」
思考に沈んでいたせいで、周囲に気を配ることを忘れていた。気安く背後からかけられた声に、ローズは少し警戒気味に振り向く。
見ると、海の男風の若者が二人、爽やかな笑みを浮かべていた。
「一人? 君、すっごいかわいいね」
「良かったらそこでご飯食べない? おごるよ」
男が示した先には、海の見えるパブが構えていた。
(こ、これってナンパってやつ!?)
赤毛緑目時代には考えられなかった珍事だ。ローズの容姿を褒めてくれるのはせいぜい、腹に黒いものを抱えていたブラッドくらいで、皆氷よりも冷たい視線をローズに投げかけるだけだった。
「え……えっと、ありがとう。だけど、連れがいるの」
「そんな硬いこと言わないでよ。退屈はさせないからさ」
なかなか押しが強い。
ナンパなんて初めてなので、どう断っていいか分からない。なにしろ、かわいいなんて言ってくれる人はほぼ皆無だったので、内心の喜びを隠しきれないというありさまだった。
男たちがとてつもなく紳士的でいい人に見えて、強く出るのを躊躇ってしまう。
「その様子じゃ、ラカムの街ははじめてでしょ? ね、俺たちに任せてくれれば、おすすめどころぜんぶ案内してあげるよ」
半ば強引に腕を取られる。万博で負った治りかけの切り傷が痛んで、ローズは思わず小さな悲鳴を上げかけた、そのとき。
「――俺の女になにかご用かな」
地の底を這うような声に、男たちばかりか、ローズまでもが飛び上がった。
アランが、超不機嫌ですとでかでかとした文字で書かれた顔を隠しもしないで男たちを睨み据えている。なまじ超絶美形なだけに迫力がすさまじい。
ローズの腕はいつの間にか取り返されていて、おまけにアランの腕のなかに閉じ込められていた。というか、馴れ馴れしくも腰に手が回されている。
「ローラ。俺というものがありながら、こんな下品で低俗な不細工どもと言葉を交わしたりするだなんて。昨夜、あれほど愛を囁いたのに……まだ足りなかったかな」
ひどく艶めいた、睦言を囁くような声音だ。
ぞくりと背筋が震える。耳たぶに熱い吐息がかかっていた。
「はあ!?」
素っ頓狂な声を上げると、アランの唇がますます近づいた。
たぶん、男たちからは恋人同士がいちゃついているようにしか見えないだろう。
「調子を合わせろ」
(そ、そんなこと言われたって!)
どうやら、アランなりにナンパを追い払おうとしてくれているらしい。
先ほど、アランにふさわしい主にならなければならないと決意を新たにしたところだ。ここは腕の見せどころにちがいない。
「あ……あーら、だ、だだだダーリン。わ……わわわたくし、昨日の夜のことを思い出すと、もう胸焼けを起こしそうなくらいよ。で……ででででもあなたがそんなに言うなら、まだ付き合ってあげないこともなくてよ?」
なんとかそこまで言って、男たちの方をちらっと見ると、二人ともぽかーんとした阿呆面でローズを見つめていた。隣では、アランがローズの決死の覚悟に反して口元を覆って小刻みに肩を震わせている。
なんだか締まりがなくなってしまった場の雰囲気を取り戻すために、ローズはまたもや覚悟を決めてアランの腕に絡みついた。
「というわけで、わたくしとアルバートはラ……ララララララブラブなの! ナンパなら、他を当たってちょうだい」
これ以上この場にいると顔から火を噴いて卒倒しそうだったので、ローズはアランを無理やり引っ張って、路地裏に逃げ込んだ。
なぜか、とっても身体が熱い。激しい運動をしたわけでもないのに、脈が早くなっていて、うっすらと汗が浮かんでいる。
元凶であるアランを見上げると、まだ口元に手をあてて押し殺した声を漏らしていた。これはどうやら――笑っているらしい。それも、爆笑だ。ローズの懸命の奮闘を、この忠実なはずの従者はげらげら笑って見ていたらしい。
途端に自分が口走ったわけの分からない口上が思い起こされて、ローズは穴を掘って頭から勢いよく埋まりたくなった。
「アラン!?」
「や……まさか、あんな下手な芝居がこの世に存在するとは――ブッ、思わなくてな。痛ッ――おいローズ、むやみに王杖を殴るもんじゃない」
「アランが無理難題を押しつけるからじゃないっ」
「あれくらいの嘘、簡単に吐けるようになってくれなきゃ困る」
正論を言われ、ローズはぐっと押し黙る。
「……ていうか、恋人設定じゃなくて、兄妹で良かったじゃない」
はたと思いいたって、ローズは無駄にハードルの高い設定を持ち出したアランを睨みつけた。
「それじゃ、強い牽制にはならないだろう。なにより、つまらん」
ぼそっと付け足された言葉をローズの耳は拾いあげた。
「つまらないってどういうことよ!」
「我が王がこうして取り乱す姿が見られないってことさ」
アランはそう言って、ローズを抱きあげた。
「ちょ、ちょっと、なにするのよ!」
「また娼婦たちのいる通りを通って帰らなければならないからな。今度はローズが俺を助けてくれる番だろう?」
恋人を演じて、娼婦たちを近づけるなということらしい。
さっきので懲りたかと思えば、俄然やる気になっている。
「ローズ?」
「――分かったわよ。焦らないで。まずは、ええと……さっきは助けてくれて、ありがとう」
アランを見下ろす格好で礼を言うのもなんだか心がこもっていないような気がしたが、仕方ない。
アランはと言えば、少し驚いた様子で目を見開いていた。
「殴られるとは思っていたが、まさか礼を言われるとは思わなかったな」
「なっ! もしかして、あれぜんぶ嫌がらせ!?」
「どう思う?」
微笑を浮かべたお綺麗な顔を、思いきりぶん殴ってやりたい。
だが、ローズの怒りが爆発する寸前で、彼の表情が真摯なそれに転じた。
「……俺は、あんたの杖だ。王を助けるのがお仕事さ。いちいち礼を言われてりゃ、きりがない」
「…………わたしは、王杖にもいちいちお礼を言う人間でいたいの。わたしができることは少ないから。ちゃんと、いつもあなたの存在を確かめていたいわ。あなたがそばにいてくれて、本当にうれしいこと、心から感謝してるってこと、言葉にして伝えたいもの」
今、ローズの隣にアランがいること。奇跡みたいな時を重ねて、たくさんの想いと決意を抱えて行きついた今を、大事にしたい。
アランの頬に触れてその輪郭をたどると、彼は眉根を寄せて、そっとローズを地面に下ろした。それから仰向いて深呼吸をする。
「アラン?」
沈黙に耐えきれず、彼の名を呼ぶと、軽く睨みつけられた。
「あんたはやっぱり、たちが悪い」
「な――アランに言われたくないわ! あなたなんて、あなたなんて、ああいうこと恋人でもないのにできちゃう爛れた大人のくせにっ」
「爛れているかもしれないが、誰にでもああいう態度を取ると思われるのは心外だな」
「あら、それじゃあ、どうしてあんな態度を取ったか、そのご高説を拝聴したいところね。おほほほほ!」
言うと、アランは相好を崩した。首筋に手が差し込まれ、そのまま髪に指が絡んでいく。
「あんたがとびきりいい女だからだ」
硬直したローズを嘲笑うように、親指が頬骨をたどり、下唇に触れる。
ゆるりと細められた瞳に、釘づけになってしまう。この不敬を絵に描いたような従者の笑みはいつも軽薄で不快なものだが、ときたまこうしてやさしい顔を見せる。
全身が心臓になったみたいに、どくどくと脈打っていた。
(顔がいいって罪だわ! そう、これはこいつの顔がいいから、ちょっと動揺しているだけで、深い意味はないのっ)
「あんな輩の、安い言葉に惑わされるな。あんたはゴルドンの王女の血を引いてる。あんな台詞、これから耳が腐るほど聞くことになるんだ」
どうやらアランは、ローズがナンパ男たちの口説き文句にうっかり乗せられたのを目撃していたらしかった。なんだか人生経験の差を思い知らされているようで、喧嘩腰になってしまう。
「こ、今度は下手を打たないようにするわよっ。で、でもあなただって、わたしのプライベートは尊重すべきよ! あんまり踏み込んでくるのは、いくら王杖だって許さないんだから!」
「さっき言われた言葉をそっくり返す。しかるべき相手が現れたなら、王杖として祝福する。だが、それまでは俺のただ一人の王だ。そこらの有象無象に横から掻っ攫われてたまるか」
「また、あなたからかって――」
「からかってなんかない。自覚しろ。あんたがあんたじゃなかったら、俺は跪いたりしなかった」
もう日はとっぷりと暮れているのに、身体が火照る。なんて、この人は情熱的なんだろうと思う。普段は飄々として掴みどころがないのに、時たまひどく暴力的なまでにまっすぐな言葉をぶつけてくる。冬枯れの瞳が、火竜の炎を秘めたように揺らめいていた。
王と王杖の結びつきは、意志や理性なんて次元を超越したものだという。王杖は、どれだけ自身の心がそれを拒んでいたとしても、否応なしに己の王に跪いてしまうのだ。でも彼は、運命を従えて、彼の心がためにローズに膝を屈したと言った。
彼の心を映したのが、この炎の瞳であるというのなら、どうしたらローズはこの身を焼かれずにいられるだろう。
ローズは恋を知らない。だけど、王と王杖の関係は、ローズとアランの関係は、恋よりももっと、濃くて熱くて厄介かもしれないと思った。
アランがきつく瞼を下ろした。次の瞬間には、炎の気配が嘘のようにすっかり消えていた。
「それで?」
いつものどこか人を食ったような口調に、呪縛を解かれたようにローズは大きく息を吐いた。
「な、なによ」
「我が王。私のことは、助けてくださいませんか?」
たまにこうして敬語になるのが、憎らしい。
これがアランの策略だと分かっていても、こう出られるとローズは強く出れなくなってしまうのだ。
「…………あ、愛してるわ、ダーリン」
引きつりまくった顔でローズはアランの首にかじりついて、お姫様抱っこに甘んじる。
また噴き出したアランにチョップを入れるのをこらえて、ローズは彼の上機嫌な横顔を眺める。
アランがわざとらしい愛の言葉を囁くせいで、帰り道、娼婦たちの甘い声が彼を呼ぶことは、ついぞなかった。




