復讐の訳
昔の話をしよう。あれは今から16年前の話、ある貧しい家庭に2の双子の女の子が生まれた。名前はヘラそしてヌノ、と名付けられた。
彼女達は貧しいながらも両親の愛をしっかりと受け大きく優しい子供たちへと育っていました。
ヘラはいつも近所の女の子の友達とままごとをして遊んで、幼いながらも人に優しく面倒見の良いお姉さんになっていました。一方ヌノは近所の男友達の悪ガキ達とつるんで大人に迷惑をかけるやんちゃな子になっていた。
そんな2人が7歳になる頃、両親が家に押し入ってきた盗賊に無残にも殺されてしまう。その時のショックでヘラは心に深い傷を負い、ヌノは何も出来なかった自分を責めて何度も自殺をしようとした。しかし、そんな2人を引き取ったものがいた。女神テネだ。
ヘラとヌノは知らないが、ヘラとヌノの両親は大変熱心な教徒であったため魂となったその2人の最期に望みを聞くとヘラとヌノをよろしく頼みますと言って成仏した。
そこでテネは2人の望みを受け入れヘラとヌノをわざわざ現世に降り立ち引き取ったのだ。テネは引き取った2人の心のケアをしっかりとし、テネとヘラとヌノの3人で幸せに暮らしていた。
そうして2人は成長し5年後の12歳になったとき、ヌノが巫女の力に目覚めた。巫女の力というものは女神さまから愛された人間が手に入れる力で、死以外のすべての傷を癒すことのできる力のことだ。この力を手に入れてからヌノは自分にしか使えない癒しの力を様々な人々に使うようになった。特に貧しい人には無償で治癒を行っていた。それは過去に自分が守れなかった両親のためだったのかもしれないが、それでもヌノは人々を癒し続けていた。
ところが、ある日ヌノはその力を突然失う。当時ヌノは巫女の力は自分だけの物、人々を救うと同時に自分をも救ってくれる絶対的な力だと思っていた。
しかし、その力が消えてしまった。ヌノは両親が殺されたときと同じくらいの喪失感を感じた。
ヌノは無意識にヘラの元へと向かった。姉なら、最後に残った肉親が助けてくれるかもしれない。そんな希望を持ってヘラの元へ行くと、そこには信じられないものが見えていた。
ヘラの手に集まる緑色の光。紛れもない治癒の光。女神から与えられ、巫女のみが使える能力。それが失われて、姉の元へと行くとその力を手に入れた姉の姿。この時ヌノの胸にあったどす黒い感情が現れた…奪われた、自分の力が奪われた。他でもない自分の姉に奪われた。そんな感情がヌノの胸の中にはびこり始めるともう止まらなかった。そんなことはないとも考えたが心の中に空いた穴をそのどす黒い感情が埋めていく感覚。そして、その声が聞こえた。
奪われてばかりの哀れな少女よ。我に協力すれば、奪え返してやるぞ。
頭の中に響く声。彼女の冷静な部分がこれは悪魔のささやきだと判断する。しかし、そんな思考もどす黒い感情に飲み込まれていく。
すべてを任せよ。お前はただ我にその甘美な悪感情を抱き続けてくれれば、我がお前の失ったものを奪い返した時にその悪感情と引き換えにそれを渡してやろう。
…本当に?
ああ、約束しようぞ。この我、女神ウルがの…
女神?女神が2人?
そうじゃ、お前からお前の姉に心変わりした悪神テネはお前の心を弄んで遊んでおったのじゃよ。可愛そうにの…
そんな!信じられない、私は弄ばれていた…?
そう、お前の絶望した顔がみたかったらしいぞ?私はあまりにも不憫だと思ったからこうして話しかけたのだ。
そんな、絶対に許さない…!悪神テネめ!!
そうじゃ、これからもその調子だぞヌノよ。そうだ、お前には代わりに私の加護をやろう。必ずお前の力になるだろう。
そう頭の中で声がするとヌノの中に物凄く真っ黒で底のしれないような力が流れ込む。この力なら、私は復讐を果たせると確信したヌノは心の中で深くウルに感謝した。
我の力を気に入ったようでなによりだ。さて、私の目的も聞いてもらおうかの?
は、私には何なりと。
そうかそうか、では伝えるぞ。 4年後、其方の国は魔族の侵攻によって滅びる。そして、魔族を率いる神こそがテネじゃ。我は奴に復讐したいのだよ、我が民を傷つけるあの悪神に。
そこで我は勇者を召喚したいと思っておる。
勇者?
そう勇者。我自身は悪神テネの力のせいで其方の地に降り立つことができないんじゃ。だから我が勇者に力を与えそちらに送る。
そんな事せずにこちらの世界の人間に力を与えることは出来ないのですか?
先ほども言ったように我がそちらの世界に干渉することはテネのせいで制限されておる。人1人をそちらに送るのでやっと。ましてやそちらの人間に力を与えるのは無理なのじゃ。だからこちらの世界で力を与えた後に其方らの世界に送りこむ、これが最適じゃ。
なるほど、無知をお許しください。
構わん構わん。それよりも其方には勇者が召喚されたとのことを頼みたい。
天命必ず果たしましょう。
それでは、互いの復讐を成し遂げようぞヌノ。
ありがたきお言葉ですウル様。
そうして、ウルの声が聞こえなくなる。
必ず、この復讐成し遂げてみますウル様。ここからヌノの人生は大きく変わっていった。
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