脱出
「予定通り勇者は逃げ出したようです。」
監視役だった者がヌノへとそう伝えた。
「そうか、やっとか。分かったお前はもいいさがれ、あとはこちらで済ませる。」
「はっ!」
敬礼して去る監視役の者と入れ替わるようにしてカミュが部屋へと入ってくる。
「カミュ、きたか。お前の作戦通りあの勇者は罠にはまってくれたらしいぞ?」
「そのようですね。では手筈通り王の元へ行き奴らの元へ行きなさい。念のためにモーラスの伏兵も連れて。計画通りならあのナイフを持っている筈です、念には念を入れておくべきでしょう。」
「そうだな、分かった。では私は行ってくる、お前は儀式の準備を。あの勇者の首を贄として我らが神の再誕の儀式を始めるぞ。」
「承知いたしました。」
一方その頃、逃げ出した2人は天井裏を這いずっていた。
「ヘラちゃん大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫ですよアキラ様、アキラ様こそこんな狭い場所を移動しているので大丈夫ですか?」
「ああ、ちょっと腰と足が痛いけどまだ我慢できる範囲だ。」
「辛かったら少し休憩した方が…」
「いや、早くここから出たほうがいい。最悪煙でも焚かれてしまったら俺たちはそのまま捕まってしまう。なんとしても追手が来る前に…お、あそこに何か光るものが。」
俺たちの進む先に何か落ちていた。俺はそれに近づき拾い上げると、ヘラちゃんに見せた。
「あ、それは儀式用のナイフですね。どうしてこんな所に?」
「儀式用のナイフ?どうする?ヘラちゃん持っとく?」
「いえ、今それを持つ場所が…」
「そうか、じゃあ俺がいったん預かっとくね。」
そう言って俺はナイフをポケットにしまった。そしてその後暗い天井裏を這いずっていくと光が差す場所があった。
「ヘラちゃん!明かりが見えた、もう少しで出られるよ。」
「本当ですね。早く降りましょうか。」
俺たちはすぐさまその光の下へ行くと格子がありそれを外すと下へと降りた。降りた場所を見渡すとそこには高そうな調度品や大きなベットが置いてあった。
「ここは…どうやら王様の寝室に出たようですね。見つかってしまうと少し危ないですね早くこの場を…」
ヘラちゃんが言い終わる前に扉がバンと大きな音を立てて開いた。そこには王様と兵士6,7人とまさに悪代官といったような風貌の太った男とヘラちゃん、いやヌノちゃんが居た。
「やはり、ここに来ましたねお姉さま、いえ巫女の名を穢した売女めが。」
ヌノちゃんがヘラちゃんに辛辣に当たった。
「ヌノ!これはいったいどういうことなの!!」
「王様先ほどもお話した通りになりましたでしょ?それにあの偽物の勇者を見てください、ポケットに刃物を隠し持っている様子。きっと捕まったふりをしてここで王を殺そうとしていたのですよ。」
「確かにヌノよ、其方の言う通りのようだな。残念ではあるが致し方ない…兵の者たちよ2人を国家転覆罪および聖女の名を穢したという罪のためにこの場で断罪せよ。」
王が兵士にそういうと、兵は一斉に抜刀しこちらに襲い掛かってきた。
「くそ、また嵌められたのか?!ヘラちゃんどうする?!!!」
ヘラちゃんに呼びかけるがショックによって放心状態になってしまった。くそ、こんな時に!俺はヘラちゃんを連れていこうと思ったが兵士がこちらに詰め寄ってきたのでそんな余裕はなかった。
どうしようかテンパり始めた俺は周りを見渡すと、近くに窓があった。ここから飛び降りるか?でも助かる保証はない。けど、また捕まったら今度は確実に殺される。刹那の思考、俺は飛び降りることを決心して窓を開けた!
「…!おい、誰か早く捕まえろ!こいつ飛び降りる気だぞ!」
ヌノちゃんが俺の意図を察して兵士たちに命令するが、もう遅い。
「じゃあな、くそったれ共!」
「やめろ!まだお前に死なれるわけには…!」
ヌノちゃんが叫ぶのをお構いなしに俺は窓から飛び降りた!
「お前ら!絶対に捕まえろ!!何ちんたらしてる早く捕まえてこい!!」
随分とまあ、最初のころとは違う性格のことで、女の子って怖い。そんな事を考えたが、とりあえず俺は脱出することに成功した。
感じたことのない浮遊感を感じながら俺は落下していった。わずかに開ける視界で目下を確認すると川が流れていた。よし、とりあえず助かるかもしれないな。
それが最後の思考だった。
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