逃走
しばらくして、泣き疲れてしまったヘラちゃんが起きた。またなんか奇行に走るかなって思ったけど今度は大丈夫なようだ。
「お見苦しいところを見せてしまい申し訳ございません。」
そう言ってヘラちゃんは深々と頭を下げた。
「いやいや、気にしなくていいよ別に…それよりヘラちゃん今のこの状況って一体…」
「すいません。その前にどうして私の名前を?見たところ初めて見る顔ですし、教会でも見たことがないのですが…」
「いや、さっき会ってたでしょ?召喚された聖ですよ。」
「アキラ…それよりも召喚って!まさかあなたは勇者様なのですか!?」
「いや、そう言ったのはヘラちゃんでしょ?」
「これは一体どうい事なんでしょうか…まさか、ヌノが召喚を!?」
「ヌノってさっきも言ってたけどいったい誰なの?」
「…ヌノは私の双子の妹です。もしかしたら、アキラ様が出会ったのはヌノなのかもしれません。」
「それはどうしてまたヌノちゃんは自分のことをヘラちゃんと名乗ったんだ?」
「おそらくヌノは何者かによって操られているんだと思います。そうじゃなかったらヌノがあんなことするわけがないんです!!」
そう言うとヘラちゃんはまた冷静さを失ってきた。
「落ち着いてヘラちゃん。事情はよく分からないが、要するにはめられてしまったという事なのか?俺もヘラちゃんも。」
「はい、そう言うことになると思います。なので私にも今の状況がはっきりとはわからないんです…」
「そうかあ、ヘラちゃんなら何か知っていると思ったんだけどなあ…」
「お役に立てず、すいません。」
「いやいや、ヘラちゃんは悪くないよ…それよりこれからどうしようか。」
「取り敢えず今持っているお互いの情報を交換しましょう。」
そして俺たちは情報の交換をし始めた。ヘラちゃん曰く、勇者の召喚は会議にて、本来取りやめになり自分の国でもう少し戦うことが決定されたらしいがその会議の後ヘラちゃんと親しくしていた人たちがヌノちゃんによって殺され、ヘラちゃん自体もヌノちゃんに眠らされ気が付いたら牢の中だったと言う。
なるほど、本来俺は召喚されないはずだったが何者かによって召喚された。その何者かって言うのがヌノちゃんであると。しかし、ヘラちゃんが言うにはヌノちゃんは絶対そんなことはしないからきっと誰かに操られていると思っている。
これはおそらくヘラちゃんの言う通り、ヌノちゃんは何者かに操られているか誰かと協力しているかだな。じゃなければ、巫女の身であるヘラちゃんをこんな牢屋に閉じ込めるなんてしないだろうからなあ。後考えれるのはヌノちゃん自身が自分の意思で動いている可能性か…ま、今は情報が少なすぎて分からないからとりあえず原因を考えるのはやめて目先の問題である牢からの脱出方法を考えるか。
「なるほど、事情は分かったよヘラちゃん。俺がもっている情報としてはまあ、俺自身がここにきてまだちょっとしか経っていないから有益な情報はないが、勇者として召喚されたってぐらいだな。まそれも数分後には偽物の勇者扱いでここにぶち込まれたわけだが。まあ、そんなことよりここから脱出する方法を考えようか。」
「そうですね、その方がいいですね。何かいい案はありますか?」
「そうだな…」
ここから脱出する方法…まあ、普通に考えればここには何もないし脱出はほぼほぼ不可能。完全に八方塞がりだ。しかし、ここは異世界。召喚魔法なんてものがあるくらいだ、なにかいい魔法があるかもしれない。
「ヘラちゃん、魔法を使って脱出する方法って何か思いつかないかい?」
「いえ、魔法ではこの状況を脱することは出来ないでしょう…この狭い空間では魔法で破壊できたとしてもそのせいで上から瓦礫などが落ちてくるかもしれないので危険かと。」
「それじゃあ単純に、この鉄の扉を開けるための魔法とかないの?」
「確かに、そのような魔法はあることにはあります。しかしながら私はそういう魔法が使えません。アキラ様は知らないと思うので説明いたしますと、私は女神テネ様から治癒の魔法を授かっており、その膨大な治癒の知識を扱うために他の魔法を扱うことができないのです。」
「なるほど…強力故にそれしか使えなくなったと。」
「はい。この場では私は無力なのです。申し訳ございません…」
「いや、ヘラちゃんは悪くないよ。」
となるとだ、魔法じゃ無理かあ…お手上げ状態だよなあ。
ならば他の脱出方法を考えるしかあるまいと、腕を組み天井を見上げていると、不意に頭の上に何か冷たいものが落ちてきた。俺はびっくりして天井を見上げると端のほうに違和感を覚えた。天井から雨漏りしているようだが、周りと少しその天井部分の模様が違うのだ。少し気になるなあ。
「ヘラちゃんちょっと確かめたいことがあるんだがそこちょっとどいてくれないか?」
「?いいですよ、どうしたんですか?」
「ちょっと確かめたくてねここの天井を」
そう言って俺は違和感のある天井部分まで行くとジャンプした。俺自身の身長は170cmあるしジャンプで余裕で天井まで届いた。そしてその違和感のある場所を触るとなんとガコと音がしてだいたい45×45くらいの部分が浮いたのだ。
「おお!ヘラちゃんやっぱり変だと思ったんだ、ここからもしかしたら脱出できるかもしれないよ!」
「そうですね!しかし、どうやって上りましょうか。」
「とりあえずヘラちゃんは俺が上げるとして俺自身はそうだな、あの棚みたいなところから頑張って上がるよ穴も大きめだしね。」
そう言って俺はヘラちゃんを肩に乗せて無事上にあげることに成功。後は俺が上がるだけだ。おれは穴から少し離れた棚を穴の近くまで静かに移動させその上に上りジャンプして穴の中に手をかけ懸垂の要領で上へと上がった。しかし、その時足で棚を倒してしまい棚が倒れて大きな音が鳴った。くそ、牢は一般的な鉄格子がある牢屋じゃなくて部屋みたいな感じだったからここまでばれなかったのに最後の最後で!
「おい!お前たちいったい何をしている!?」
そう言って監視役の剣士が入ってきて俺が天井から逃げようとしたのが目撃されてしまう。俺はすぐさまに天井裏に上りヘラちゃんの手を握って中腰の体制で逃げた。
「おい!偽物の勇者が逃げた!天井裏から逃走中だ!」
そうして俺たちの逃走劇が始まった。
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