偽物の勇者
時は戻り現在、聖は剣士に腕を拘束され、牢へと向かっていた。あの逃げ場のない空間だ、逃げようがなかった。
まあ捕まったことはこの際仕方がないことと言える。まあ、理不尽極まりないとは思うのだが。とりあえず、あのヘラちゃんにもう一度話をして身の潔白を訴えよう、そう思っていたのだが…
俺が牢獄へと着いた時、俺が入れられるであろう牢には先着がいた。それはヘラちゃんだった。
「ここに入っておけ偽物の勇者めが」
そう言って剣士は俺を牢の中へと放り込んだ。
乱暴に投げ捨てられた俺はそのまま尻餅をついて、次いで牢のカギが閉められた。
「おい!ちょっと待ってくれよ!!話がなにがなんだか分からねえ!!俺は何も…おいてめえ、無視すんな!!おい、おい!!」
俺の呼び掛けには目もくれずその場を後にする剣士たち。
「くそ、ほんとにこんなことになっちまうとは…ホント最悪。俺巻き込まれただけじゃん、なんでここまでされないといけないんだよ…」
俺はそう思いながらも隣に寝ているヘラちゃんへと目を向ける。どうしてここに?色々考えたが埒があかず、とりあえず起こしてみることにした。
「おい、ヘラ様?起きてください、そして事情をお教えください!ヘラ様!おーい、起きてヘラちゃん起きて!!」
俺が数回ヘラちゃんを揺さぶっているとヘラちゃんは「うっ」といって起き上がった。
「…ここは一体、何が起こったの…!そうだ、ヌノがまさか、ええでもそんな、私そんな信じられない。ヌノが、ヌノが…」
起き上がったヘラちゃんは起き上がってしばらくすると発狂するように泣き叫んで暴れて、俺はこんな状況になるとは思わずその暴れっぷりを見ているしかなかったのだが、しばらくするとヘラちゃんはおとなしくなった、と思って近づくと目が死んでいた、心ここにあらずって感じだった。
「どうすんのよ、これ…」
何もわからず、俺までも発狂しそうになりながら現実逃避のために俺は寝ることにした。もしかしたらこれが夢であることを願って。
俺が起きるとそこには相も変わらず放心状態のヘラちゃんといつの間にか置かれていた、少量の飯が置いてあった。
「夢じゃあなかったのか…」
小さくつぶやいたが、現実が変わることもなく、俺はとりあえずヘラちゃんに飯を食べないかと聞くが返事はなく、俺だけ喰うことにした。
それにしても一度眠って冷静になってみると改めて厄介な状況だと認識した。現状は牢に入れられ、人もおそらく食事のときのみくるだけでしかも俺が話しかけてもガン無視。事情をヘラちゃんから聞こうにも放心状態で何もわからない。そして周りはがっしり閉められた鉄の扉とコンクリートのような壁。マンガみたいにフォークで壁に穴が開かないかもやってみたが十数回やるころにはフォークのほうが折れた。
八方ふさがりでなにもできな状況。ヘラちゃんの回復を待つしか方法がないが、戻ってくる可能性は望み薄…ともっていたら、ヘラちゃんがすっと起き上がった。
「あ!ヘラちゃんやっと戻ってきた、一体どうなってるのか説明を…」
すると、ヘラちゃんが
「貴方誰です?…もしかしたら貴方がヌノをあんなふうにしたんですかっ!!!」
そう言って俺の首を絞めようと襲い掛かってきた!!
「ちょい、タンマ落ち着いてヘラちゃん!!!くっそ、せっかく意識取り戻したと思ったらこれかよ!!」
俺は必死に抵抗するがなぜか力はヘラちゃんの方が上なようなので押され始めている。
なんつう力だよ!!これでもそこそこ鍛えてんのに!!
「あなたが、やったんですね!よくもヌノを!カーリーをディアンヌをレインを!!うっうううううう!!」
力が弱まったと思って俺はヘラちゃんの拘束から逃げ出すと、ヘラちゃんはおいおい泣き始めていた。
なんだこれ、情緒不安定すぎだよ。どうしよう…
「あのヘラちゃん大丈夫?」
俺がやさしく声をかけるとヘラちゃんが泣きながら抱き着いてきた。
「うう!みんながみんながああああ、うわあああああああ」
「よしよし、大丈夫大丈夫。」
よくわからんが、俺はヘラちゃんの頭を撫でヘラちゃんをあやした。そしてそのままヘラちゃんは泣き疲れてしまった。
「なんかよくわからんが、泣いて抱き着かれるのっていいな」
こんな状況なのに、混乱しすぎて馬鹿なことを言う聖だった。
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