軋轢
4/6一部改訂、加筆しました。
時間は聖が召喚される少し前まで遡る…
デル王国にて
「皆様、本日はお集まりいただき、ありがとうございます。それでは早速現状の報告と対処法について…」
王の側近であるカミュの話を聞きながらヘラはこれから出てくるであろう議題…勇者の召喚について考えていた。
まずこの国は端的に言えば魔王軍の侵攻によって、もうすぐ滅びる。実際に近隣の国々はほぼ壊滅し、ここに集まっているデル王国を含めたった2ヵ国しか残されていない。
デル王国は標高の高い山々に囲まれており、さらにその山々には我らが女神であるテネ様の加護によって守られている聖域が広がっている。破壊をもたらす魔王軍でもここを超えることは至難の業だ。
しかし現状はそう甘くなく、残りの細々と生き延びてきた他国の民たちが山を越え---というのも、山を超える危険性よりも我が国に救いを求める方が賢い選択と思えるくらいには窮地に追いやられていた---救いをと集まり始めたのである。
このことによりデル王国は、女神の国として救いを求める民たちにを助けざるを終えずにその結果として、今多大なる食料不足に悩まされている。
なにせ元々この国は周りを山々に囲まれてさほど土地も広くない。よって急激に増えた難民たちの食料を過不足なく用意するのは少し厳しい状況だった。
ならば、見捨てるかといわれればそんな事を女神さまの御前で出来るはずもなく我が国の民たちにも、そして難民たちにも多大なる負担がかかることとなってしまった。
そんなとき、カミュがこう言ったのだ
「勇者を召喚しよう」と。
「…と、今の現状を考えるとこの国はすでに危機的状況であり、さらには魔王軍も次々と聖域に進行してきているという報告も上がっております。ですから皆さん、この状況を打破するためにもやはり女神さまのご加護を頂いた勇者を召喚すべきではないでしょうか?」
カミュ様はそう言って皆に同意を求めた。しかし、私はこれだけは言わねばならないと思いカミュ様にこう告げた。
「カミュ様、一つお聞きしてもらいたいことがあります。私自身この勇者様の召喚には反対です。」
「なんと…」 「何を言っている?」 「うむ…」 ざわざわざわ…
部屋には戸惑いの声、理由を尋ねてくる声、賛同する声、そして…批判する声、様々な声が上がった。
「皆の者静粛にせよ…して、ヘラよ一体なぜ勇者の召喚に反対なのだ?」
事態を見ていた王様が私に質問を投げかけた。
「はい、王様。私がなぜ反対するのかというと、我が国のことを果たしてほかの世界の者に託していいのか、そして託された者は果たして受け入れてくれるのか、私は疑問です。そしてなにより、私は巫女です。私が女神さまの加護の元、先頭に立ち民を救うのが私に課せられた義務だと思っております。」
「なるほどな、確かにヘラが思うようにこの国のことを他人に任せてしまうのは危険なことであろうし、其方が先頭に立ち、民を救うというのも確かに分かる。
分かっておるのだが、悲しきかな今のこの国は其方の巫女としての力、女神さまから賜りし其方しか使えぬ治癒魔法の力をもってしても、ただ癒すだけではこの国はいずれ滅びる。
それは単に破滅への時間を延ばすだけであり、そうなってしまえば民への負担もその時間分、かけてしまうことになる…貧困の苦しみを知る其方ならそれがどれほどの苦痛を伴うかは分かっておるであろう?
だからよ、ヘラ。ここは勇者を召喚しようぞ。女神さまの力を与えられた勇者ならば、必ずや救ってくれるだろう。」
「…確かに私の与えられた力では癒すことは出来ても邪悪な魔王軍に打撃を与えるような力はございません。ですが、私はあくまで我々の力でこの状況を打破すべきだと今でも思います。でないと、我が国は自分の力で立ち上がることもできない、赤ん坊のような弱い国になってしまうでしょう。
それは、間違っていると思うのです。我が国は女神さまの国。女神さまに愛される国。そんな国がいつまでたっても独り立ちできないのは間違っていると思うんです。」
「少し言葉を慎みたまえよヘラ、我が国が赤ん坊のごとき弱い国だと?そんなわけなかろう!!やはり所詮は貴族でもない馬小屋育ちの庶民か。」
「お前こそ口を慎めカミュ!!ヘラは我が国のことを思ってこういっておるのだ。それを今さら庶民などと、お前こそ無礼ぞ!」
「申し訳ありません王よ。私も少し冷静ではありませんでした。」
「もうよい、追って処分を下そう。してヘラ。お前の心意気私は理解した。もう少しだけ我々だけでこの困難に立ち向かおうぞ!!」
王が勇者を召喚することをやめたことが正式に発表された後の会議室にて
「そこに居るのだろう?ヌノよ…ヘラの代わりに召喚をしてこい。」
カミュが物陰に潜んでいた女、ヌノに言う。
「分かってるさ、勇者は私が召喚して、この国をめちゃくちゃにしてやる。」
そう言ってヌノは祭壇へと向かう。
ヘラが勇者を召喚をやめさせて、その報告をヘラが使える女神に報告しようと祭壇へと向かったが、そこにはいつもいるはずの皆がいなかった。
ヘラは不思議に思いながらも、祭壇の奥へと進むとそこには悲惨な光景が広がっていた。いつもやさしくしてくれたディアンヌ、ヘラを妹のように思い親しくしてくれたカーリー、小さい時から一緒にいた幼馴染みのレイン、皆が血の海に沈んでいた。そして、その中心にいる人物は
「どうして、どうして貴方が!!」
ヘラの双子の妹、ヌノの姿だった。
「おかえり、お姉ちゃん。そして、お休み。」
その声を聞いた瞬間ヘラは意識を失った。
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