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ハッピーバレンタイン(ハッピーとは言ってない)

 日曜日に更新しないとは言ってない

 バレンタインデー。

 その起源はローマの女神ユノの祝日であり、その日に処刑されたバレンタイン司祭だとされています。

 西洋では恋人や親しい人に贈り物をする日なのですが、日本では皆さんご存知お菓子会社の陰謀により女性が恋人や気になる異性にチョコレートを贈る日になっています。


 つまりはいつもの日本ですが、クリスマスと言い何故恋人をピックアップしたがるのでしょうか。

 しかし近年の若者は結婚や恋愛に冷めており、義理チョコ撒いたりお返しするの面倒くさいからバレンタインやめようぜという声も上がっていたりします。


 ハハッ、ざまぁ(ひがみ)。


「それではエルテ殿は友人内で配るだけでござるか」


 そんなバレンタインに向けて準備を始めている安達家の一部女性陣。

 お揃いのエプロンを身に着け並んで調理する姿は実に微笑ましいです。


 ……お菓子会社の陰謀? 本人たちが幸せそうならいいじゃない(手のひら大回転)。


「はい。どうせチョコ送りたくなるような男子いないし、だったら友チョコみんなで交換しようよってなったので」

「それは……なんとも」


 笑顔できっついことを言うエルテさんに言葉を濁すヤヨイさん。

 他の女子はともかく、エルテさんのお父さん(仮)は完璧超人な安達くんなので、彼女の中で異性のハードルが果てしなく高くなっている可能性もあります。


「ふふ。そういうヤヨイさんはローマンさんにはお送りするんですか?」

「え? あ、そうでござるな。送らないと拗ねるでござるからな!」


 シーナさんからの不意打ちに、慌てながらもそう返すヤヨイさん。

 仕方ない雰囲気を必死に出そうとしていますが、案外まんざらでもないようです。


 ――次におまえは「ローマン爆発しろ」と言う。


「それで、シーナさんはやっぱりお父さんにあげるんですよね?」

「ええ。安達さんにもあげますよ」

「……にも?」


 微妙なニュアンスの違いに、揃って首を傾げるヤヨイさんとエルテさん。


「だって安達さんにだけあげたら本命だってバレちゃうじゃないですか」

『……』


 笑顔で何か言ってるシーナさんに無言の二人。

 え? 今更? と思う人も多いでしょうが、かなり前のお話しで言及したように、シーナさんは安達くんに全力アタックしたら距離を取られると知っているのです。

 なのでこれは好意を伝えつつ、安達くんに迷惑かけるほど恋にのめり込んでいませんよと表明するための高度な駆け引きなのです。

 もういいから安達くん諦めて結婚しちゃえよとは思っても言ってはいけません。


「……あ、ヤヨイさんチョコはそれくらい刻めば大丈夫ですよ」

「……了解でござる」


 とりあえず流すことに決めた二人。

 今日も日本は平和です。



 一方高天原。


「チョコくらえー!」

「んが!」


 アマテラス様が手のひらサイズのチョコを全力投球しましたが、スサノオ様に口で受け止められました。


「はは、ひゃまいなはねき!」

「うっ!? 止められた!」

「……何やってんですか二人とも」


 チョコをくわえたまま得意げに笑うスサノオ様と悔しがるアマテラス様。

 そしてそんな二人を呆れた様子で見るツクヨミ様。


「おっ、アーモンド入りか。しっかし何でいきなりチョコ投げてくるんだよ」

「前回何やったか忘れたの?」

「おおっ、中々面白いことになったな!」


 メタなことを言い出すアマテラス様に、雷落とされ蹴たぐり倒されたのにまったく懲りてないスサノオ様。

 スサノオ様にとってはあの程度は親子のスキンシップなのです。


「しかし今の姉貴が作ったのか? 毎年チョコ焦がしたり分離したりしてる姉貴が?」

「トヨちゃんに手伝ってもらったらそんな失敗しないもん!」


 憤慨するアマテラス様ですが、一人では失敗すると自供しています。

 しかしアマテラス様は太陽神なので焦がすのは運命であり仕方ないのです。嘘ですが。


「そもそも何故スサノオはここに居るんですか?」


 言外に「帰れよ」と言うツクヨミ様。

 ツクヨミ様も管轄は高天原じゃなくて夜の国だろとつっこんではいけません。


「それが聞いてくれよ兄貴ー!」

「うわあ……」


 でかい図体して情けない顔で迫ってくる弟に嫌そうな顔をするツクヨミ様。

 しかしスサノオ様はツクヨミ様相手には案外普通に慕っているようにも見えます。


「クシナダがチョコくれたからな、わくわくしながらスセリのとこ行ったんだよ。そしたら『え? チョコ? お父さんに? 何で?』って言われてよう……」

「貴方も貴方ですがスセリヒメもまだ反抗期ですか」


 反抗期と言うツクヨミ様ですが、スセリヒメ様の場合は夫であるオオクニヌシ様の扱いが悪いことへの抗議も混じっています。

 しかしこの程度で方針を変えるようなスサノオ様ではありません。


「思い出したら腹が立ってきた。オオクニヌシのチョコ奪ってくる」

「そういうことをするから娘に嫌われるんですよ」


 立ち直って余計なことをしようとするスサノオ様に、冷静につっこむツクヨミ様。

 今日も高天原は平和です。


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