孔明「冤罪だ」
「うがああああァッ!!」
「何事でござるか!?」
とある休日の昼下がり。
一年で最も冷え込む時期であり、日本の伝統にのっとり炬燵で丸くなっていたヤヨイさんでしたが、突然野太い男の咆哮が響き渡り飛び起きます。
「ええい! やめだやめ! この調子ではできることもできなくなるわ!」
「何だグライオス殿でござるか」
ズカズカと足音も荒くリビングに現れた絶叫の主は、元皇帝陛下なグライオスさんでした。
何やら疲れた様子で手にした本をポイと投げ捨てながら、小腹でもすいたのか台所へと向かっています。
「一体何を……って教習所のテキストでござるか?」
グライオスさんの投げた本をキャッチしたヤヨイさんでしたが、それが道交法の本だと気付き大体察しました。
「勉強……上手くいってないでござるな」
「おうとも! 大体この量をわしのくたびれた頭で覚えろと言うのが無理があるのだ!」
「確かにこれを全部覚えるのは大変そうでござるな」
そう受け答えしながらも、コーヒーを淹れて砂糖をドバドバ混ぜるグライオスさん。
糖尿病にでもなりそうな量ですが、多分この皇帝陛下は老衰以外では殺せません。
「しかもようやく目処がついて問題集とやらをやってみれば、ひっかけ問題ばかりときた。もうつられてわしの日本語がおかしくなりそうだ!」
免許取得のための筆記試験は、ひっかけ問題が多いことである意味有名です。
注意力を試しているともとれますが、あまりのひっかけ問題の多さにいざ本番が簡単だと「待て、あわてるな、これは孔明の罠だ」状態になる人も居るとか居ないとか。
本末転倒ですね。
「しかし文句を言っている割には努力しまくってるでござるな」
ヤヨイさんがテキストをめくってみれば、何度も読み返したのか所々が汚れへたれており、アンダーラインや注意書きなども書き込まれています。
流石は名君とよばれた人です。大雑把に見えてもやるときはやるのです。
「息抜きに免許を取れたら買いたい車でも選んだらどうでござるか?」
「うむ。やはりこの大型車がいいな」
「こんなでかぶつで狭い路地とか走れるでござるか?」
さすがというべきか即座に気持ちを切り替えるグライオスさんと、選ぶ車の種類につっこみをいれるヤヨイさん。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「うふふ。それで? 何故私はいきなり熟れた桃を顔にぶつけられたのかしら?」
顔が果汁でべたべたになりながら笑顔でぶちギレているイザナミ様。
久方ぶりの作品タイトル回収です。
そして振り返ってみれば、一話目の時点でタイトルを主役(一応)のアマテラス様ではなくイザナミ様が回収しているあたり、この作品のてきとーっぷりが実によく分かります。
「いや姉貴がやれって言うから」
「言ってないよ!?」
さらりとスサノオ様に責任転嫁され半泣きで叫ぶアマテラス様。
どちらも正座です。謝る場合はそのままDOGEZAへと移行します。
「桃が穢れ祓えるならおふくろにも効くんじゃないかって言ったの姉貴だろ!」
「言ったけどやるともやれとも言ってないよ!? というかこうなると分かってて何でやるの!」
「面白そうだったからやった。反省はしてない」
「うにゃー!!」
本当に反省零な様子のスサノオ様の横っ面にグーパン叩きこむアマテラス様。
しかし残念ながら体格差がある上に正座した状態なので、まったくダメージが入っていません。
「どちらもお黙りなさい!」
「ひぃ!?」
そのまま姉弟喧嘩に発展しそうでしたが、イザナミ様が二人の間に雷(物理)を落としたので勃発前に終了しました。
この世の中でオカンの雷ほど恐い雷はないのです。
「スサノオは論外ですがアマテラスもアマテラスです! 貴女も立場があるのですから発言には気を付けるようにと何度も……」
そして始まるお説教。
アマテラス様涙目でスサノオ様はニヤニヤしていましたが、イザナミ様が顔面にヤクザキックを叩き込んだので転がっていきました。
それでもまだ笑っているあたり、さすが永遠の反抗期な息子です。
「止めないんですかツクヨミ様?」
「私に死ねと?」
そしてその様子を襖の隙間からこっそり覗くツクヨミ様とトヨウケヒメ様。
今日も高天原は平和です。




