↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/24

第13話 作戦決行

(彩音Side)


 ある日の昼休み。

 私と由奈は例の如く、中庭のベンチで一緒にお弁当を広げていた。


「そういえば、もうすぐ中間テスト始まるね」

 私の言葉に、由奈は箸の手を止めて分かりやすく顔をしかめた。

「うっ……嫌だなぁ」


「あれれ? 由奈、さては自信ない感じ?」


「数学と英語がヤバいかも……」


「ねえ、そしたらさ。今度の土曜日に二人で勉強会しない?」


「勉強会? いいね」


 私の提案に、由奈は何の疑いも抱かず素直に頷いた。


「じゃあ土曜の12時に、学校近くのファミレスで」


「一緒に頑張ろうね、彩音」


 純粋に微笑む親友を見つめながら、私は心の中だけでニヤリと笑った。


(くっくっ……まずは網にかかったわ)



 約束の週末。

 指定したファミレスへ向かうと、既に店の前で佇む由奈の姿があった。

 淡い色のブラウスに、膝丈のフレアスカート。清楚さと可愛らしさが際立つ私服姿に、思わず目を奪われる。


 ふぅん、なかなかカワイイじゃん……。


「由奈、お待たせ」


 由奈がこちらを振り向く。


「彩音! 私も今来たところだよ」


「それじゃ、入ろっか」


 二人で自動ドアをくぐり、店内へと足を踏み入れた。

 ドリンクバーの奥にあるボックス席へ目を向けると、狙い通りの人物たちが座っていた。


「あれれぇ~? あそこにいるのって、もしかして……」


 私は驚いたフリをしながら、スタスタと迷いのない足取りでその席へと近づいていく。


「うっそ~、的場君に里中君じゃない」


 白々しく声をかけると同時に、私は的場と一瞬だけアイコンタクトを交わした。


「よお、三ケ森じゃん! 偶然だな!」


 大袈裟なリアクションで乗っかってくる的場。その隣では急な展開に驚いた様子の里中君が、気まずそうにぺこりと頭を下げる。


「ど、どうも」


「もしかして、二人も勉強?」


 机の上に広げられたノートと参考書に視線を落としながら尋ねると、的場が答えた。


「おう。学人に数学教えて貰ってたんだよ」


「そうなんだぁ。ねえ、よかったら私達も一緒していい?」


「もちろんいいぜ! 学人も問題ないよな?」


 一瞬だけ戸惑ったように目を泳がせた里中君だったが、私と的場の圧に負けた彼は簡単に首を縦に振った。

「あ、ああ。俺は大丈夫……」


「やったぁ、お邪魔しま~す!」


 私は入り口付近で立ち尽くしたままの由奈に声をかけた。

「ほら由奈、何してるの? 早くおいで!」


「えっ、由奈も……!?」

 その名を耳にした瞬間、里中君は分かりやすく動揺した。

 由奈がこちらへたどり着く前に、私はわざと彼の隣を陣取った。


「が、学人!? 偶然だね、こんなとこで……」

 こちらも分かりやすい動揺を見せる由奈。似た者同士な幼馴染だこと。

 しぶしぶといった様子で、彼女は的場の隣に腰を下ろした。



 こうして私の用意した作戦はカッチリとはまり、奥手な二人の仲を深めるための勉強会が開幕した。

「ねえ由奈、私達も何か注文しよっか」


「あっ、そうだね」


 私の言葉にうなずき、由奈は卓上のメニューを開いた。ちなみに、私の注文はもう既に決まっている。

 メニューを畳みながら彼女が言う。

「じゃあ、私は和風パスタにしようかな」


「おっけー、私のと一緒に注文しとくね」


 自分のスマホを取り出し、卓上のQRコードを読み取って手際よく注文を済ませる。


 ほどなくして料理が運ばれてきた。

 湯気を立てる和風パスタが由奈の前に置かれる。私の前にはあつあつのドリア、そしてきつね色に揚がった小エビのフライが運ばれてきた。


「里中君、エビは好き?」


「えっ、好きだけど……」


「よかったら一つどうぞ」


 私は箸で小エビのフライを持ち上げると、彼に向けて差し出した。


「はい、あ~ん」


 わざわざ大して好きでもない小エビを頼んだのは、まさにこのパフォーマンスをするためだ。


「え、えっ!?」


 目の前に差し出されたフライと、私の顔を交互に見比べる里中君。

 もしも私が辞書の編纂者なら、「しどろもどろ」の項目の挿絵に今の里中君の写真を採用するだろう。

 ふと向かいに視線を遣れば、案の定、由奈の顔が分かりやすく曇っていくのが見えた。


「あ、あ~ん……」


 私の圧に耐えかねた里中君が、覚悟を決めたように小さく口を開け、ぱくりと小エビを口にした。

 その一部始終のさ中、由奈の皿の上では、パスタを巻き取ろうとするフォークが空中で虚しく空回りしていた。

 こちらを見る目が完全に死んでいる。狙い通りだ。


(ほらほら由奈、もっと焦らないと。大事な幼馴染君がポッと出の泥棒猫に取られちゃうよ~?)

 口元に浮かびそうになるニヤニヤを必死に噛み殺しながら、私は心の中で親友に語りかけた。


 さあ、わが友・八枝由奈よ。

 お前の反撃を見せてみろ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。