第755話 クロ殿下とフェイランとチタニール
「んもう・・・っ!
私が一番にチタニールをお兄ちゃんに自慢しようと思ってたのに」
腕を組んで、ユイファがかわいく頬をぷくっと膨らませている。
「ユイファ・・・お前はまた何かやらかして・・・?」
フェイランが嘆息してユイファちゃんを見やる。
「・・・っ!そんな私をトラブルメーカーみたいにっ」
「・・・似たようなものだろう・・・」
「違うもんっ!それにしても・・・」
ユイファは、チタニールさんとフェイランを交互に見やる。
「やっぱりそっくりかもっ!そのたれ耳具合!」
「ふふふ、たれ耳の良さがわかるとは。中々のお嬢さんみたいですね」
チタニールさんが微笑む。
「へっへ~んっ!私はお兄ちゃんのたれ耳ファンクラブの会長だもん!」
「また、わけのわからないことを・・・
それに、この耳は、王家の血筋を逸脱した突然変異・・・」
そ・・・そんな位置づけだったのか・・・?
「そんなことないもんっ!お兄ちゃんのお耳は・・・」
「そうですよ~。昔はたれ耳派でしたもの」
「チタニールさん、それってどういう・・・?」
チタニールさんのその言葉に、俺たち一同はきょとんとしてしまった。
「昔の王族は・・・こういったたれ耳だったんですよ?
いつの日か・・・立耳が多くなりましたけど。
でも、また私と同じたれ耳の子を見つけられて、嬉しいです~!ふにふに」
「てことは・・・お兄ちゃんのお耳は、王家の祖先様の血筋に近いってこと・・・?
それこそ、正統な特徴ってことじゃないっ!こうしちゃいられないわっ!
お兄ちゃんの名誉挽回のためにも、周りに言いふらさなきゃっ!!」
「いや・・・やめろ・・・ユイファ・・・
言うなら、父さん、母さんくらいでやめておけ」
「む~・・・お兄ちゃんのケチ~・・・
でも、お父さんとお母さんにも言ってこよ~っと」
ユイファちゃんがとてとてと嬉しそうに駆けて行く。
「・・・この耳は・・・」
フェイランさんが呟く。
「俺にだけ現れた突然変異・・・王家の恥・・・劣化、ひどいものは、
本当に王家の正統な血を引いているのかと・・・言われた・・・」
「そんな・・・ひどいです~!このたれ耳の良さをわからないなんて・・・
オシオキしちゃいますよ?ぷんぷん」
と言って、どこからか巨大な斧を取り出すチタニールさん。
いや、それで何する気ですか!?
「でも・・・チタニールさんと会えて・・・良かったです・・・
自分と同じたれ耳の犬耳族の精霊さまに会えて・・・嬉しいです」
「まぁっ!いい子ですね~!よしよ~しっ!」
そして、いつの間にか巨大な斧をしまっていたチタニールさんは、
満足そうにフェイランをなでなでし始めるのだった。
「お~い、クロ」
「やぁ、クロ殿下」
ん・・・?また誰か知り合いが・・・って・・・
「スバル!アデスさん!」
「久しぶり」
「元気そうでなにより」
それは、南部連合王国の第4王子スバルと、第5王子のアデスさんだった。
同い年で、何となく似ている風貌の2人だが、双子ではなく異母兄弟だ。
しかし、そのそっくりさから“双星の王子”という愛称を持つ。
「やぁ、何となく、中庭に君の姿が見えた気がしてね。
フェイラン殿と談笑しているとは思わなかった」
と、アデスさんが肩をすくませて苦笑している。
「・・・南部連合王国の・・・アデス殿下、スバル殿下。お久しぶりです・・・」
「えぇ。お久しぶりです。フェイラン殿下」
「先日シュアンさんとお会いして以来ですね」
と、スバル。
ユイファちゃんもシュアンさんと仲がよさそうだし・・・
スバルもシュアンさんと同じSS級冒険者だ。
だから、SS級冒険者との面識もいろいろあるのかな・・・?
「俺は昔、シルヴァリー共和国で多く依頼を請け負ってたから、
その関係で知り合ったんだ」
俺が不思議そうに見ているのに気が付いたのか、
スバルがそう教えてくれた。
「ところで、あの精霊さまにはツッコんだ方がいいのかい?」
と、アデスさんがスバルでは決してしないにやけ顔を向けてくる。
この2人、そっくりだが、表情とかしゃべり方はだいぶ違う。
因みに、アデスさんが言っているのは、
フェイランのお耳を絶賛ふにふに中のチタニールさんのことだろう。
「あ・・・いや・・・フェイランさえよければ、それでいいのでは?」
と、フェイランを見ると、まんざらでもないようだった。




