第756話 クロ殿下とシルヴァリー共和国の夜会
夜会では、双子の弟であるヨルと一緒に、
シルヴァリー共和国のお偉いさんや、
エリック父さん直伝の挨拶リストに載っているひとたちに挨拶回りをした。
その後、ヨルはご令嬢たちに大人気で、
俺は会場のフードコーナーで時間をつぶしていた。
因みに、黙っていれば天使のごとき美少年のロザリア帝国第4皇子・ディートや
デキる爽やか系オーラを醸し出す南部連合王国の第5王子・アデスさんも不動の人気である。
「スバルは行かないの?」
俺は、人気者の双星の片割れをよそに、
しれっとこちらにやって来たスバルに目を向ける。
「こういう場でモテるのはアデスの役目」
スバルがシルヴァリー共和国特産南国フルーツをつまみながら答える。
てか、それって役目なのか!?
た・・・確かに・・・俺とヨルも、そういう感じだっ!!
スバルとアデスさんは双子ではないが、俺も何となくわかるっ!!
「SS級冒険者ってことで、注目も集めてるだろうに。
目が光ってるひともいるみたいだよ?」
と、俺の隣に控えていたヴェイセルが、面白そうにスバルに告げる。
ご令嬢方にとどまらず、ご婦人方にもきゃーきゃー言われているアデスさんとは違い、
スバルはモテモテ・・・と言う感じではないのだが・・・。
しかし、SS級冒険者ということで、注目するひとたちもいるのか・・・
因みに、ヴェイセルもスバルと同じSS級冒険者。
それはヴェイセルもではないのだろうか・・・?
やはり、“王子”の方が注目を集めるのかな・・・?
「よしてくださいよ・・・そういうの、苦手なんですから。
・・・あ、このマンゴーおいしい」
「スバルなら、そつなくこなしそうだけど」
本格派異世界転生チート主人公風だもん。
そして、俺もスバルからマンゴーを受け取ってもぐもぐ・・・
んん・・・おいひぃ・・・
次はマンゴープリンにいってみよっかなぁ・・・
「貴族や王族の駆け引きなんかは、そんなには・・・それはアデスの役目だからね」
アデスさん・・・有能だな・・・
まるで俺にとってのヨル。
双星の王子って言われるだけのことある。
「それにしても・・・シルヴァリー共和国の料理もおいひぃっ!
このマンゴープリンもだけど・・・」
カレー味の鶏肉炒めとか・・・
スパイスの聞いたステーキ・・・
南国特有のフルーツスイーツの数々や魚料理。
あ・・・このお寿司おいひぃっ!
シルヴァリー共和国は和風調味料や和風料理の宝庫である
小国連合へと向かう港があるからか、
シルヴァリー共和国でとれた魚を使ったお寿司も並んでいた!
はむはむ・・・マグロやサーモンもあるし・・・
わぁ・・・これは嬉しい・・・っ!
元日本人のスバルもお寿司に舌鼓をうっている。
「ちょっと、クロ」
そこに、不意にユイファちゃんが横にやって来る。
「ちょっと・・・私よりもお寿司なの?」
「ご・・・ゴメン・・・ついこういう場では食い意地が張っちゃって・・・」
自身のお菓子作りにも活かしたいし・・・
これも勉強、勉強・・・
決してさぼっているわけではないのだ。
・・・うん、決して。
「その・・・待ってたんだから・・・」
「へ・・・?」
「いつまでたっても来ないから・・・せっかく私の方から来てあげたのに」
と、ユイファちゃんが俺に手を差し出してくる。
「クロ、夜会と言ったら、踊らなきゃ」
とヴェイセル。
「はぅっ!」
それは、今回は監視が無いので、スルーかと思っていた。
「一応、エリック様には報告を求められております」
と、いつの間にかそこに待機していた近衛騎士隊副隊長のたんたんが告げる。
人知れず、他の近衛騎士隊員も俺たちの傍に待機してくれている。
・・・それは・・・その報告の役目もあったのか・・・っ!!
でも、さすがにここまで来てくれた、
かわいらしいプリンセスを無下にはできないし・・・
「お姫様、私と踊ってくださいますか?」
俺は跪いてユイファちゃんの手を取る。
「えぇ!もちろんよっ!わかってるじゃない!」
と、ちょっぴり大胆なユイファちゃんのダンスのお誘いに助けられ、
無事、踊りを一曲終えた俺は、課題を一つクリアしたのだった。
―――
そして、その後・・・
無事シルヴァリー共和国を後にした俺は、フェイランから連絡をもらった。
「それじゃぁ、チタンの精霊のチタニールさん。
最近はすっかりシルヴァリー共和国にいついてるの?」
「そうそう」
いつものように俺の部屋にやってきたヨルに、早速その話をした。
「それでね、チタニールさんがフェイランを気に入って、
加護の力をあげたんだって」
「わぁ・・・っ!おめでたいね」
「うん、それでね、精霊さまと同じたれ耳だってことで
フェイランが、シルヴァリー共和国で大人気になったらしいよ?」
「さすがは精霊さまだね。クロの時みたい」
「へ・・・?俺・・・?」
「うん、精霊さまたちにたくさんかわいがられて、皆の人気者になっちゃって・・・
・・・ぼくのことも忘れちゃダメだよ?」
と言うヨルは、いつもの凛とした王子の顔ではなく、
かわいらしく頬をぷくっと膨らませている。
「ヨルのことを忘れたりなんてしないよ?だって、俺の片割れなんだから」
「なら、よし!」
そう言って微笑むヨルを、いつものように優しくなでなでしてやる俺だった。




