穢れた血
「そういう、いじめみたいなことは止めよう。ロザリンデだって、何か悪いことをしたわけじゃないじゃないか」
「確かに何も悪いことはしていませんけれど……“穢れた血”ですもの。お情けでここに置いてもらっていることをよく自覚して、もっと小さくなっているべきです」
金髪のコルネリアが吐き捨てるように言う。
紫の髪のガブリエラも同じ気持ちでいるようで、鋭い目でロザリンデを見ていた。
「そんな、ひどいことを言わなくたって……」
「いいんです」
たしなめようとした私を、ロザリンデ本人が止める。
「でも」
「何の騒ぎですの?」
言い募ろうとしたところで、シャルロッテが入ってきた。
「まさか、またロザリンデが何か?」
「いや、そういうわけじゃ」
「それでしたらよかったですわ。魔王様、さあ、お話し合いというのを始めませんか?」
言いながらシャルロッテが私の腕に抱き着いてくる。
身体をぐいぐい押し付けられている。ガブリエラに比べれば肉付きは薄いものの、それでも、十分に肉感的な身体だった。
「う、うん……」
何を言おうとしていたのか、つい頭から抜けていってしまう。
シャルロッテはそんな私を引っ張るようにして、テーブルの一番向こう側の、他よりも飾りがたくさんついた椅子の方につれていく。
きっとこれが私の椅子ということなんだろう。うながされるままに座ると、シャルロッテはまるで当たり前みたいに私の膝に乗ってきた。
「え、そんな、何も上に乗っからなくたって」
「でも、いつもこうですわ」
「そうなの!?」
「はい。魔王様はいつもこうして、わたしを膝にのせて可愛がってくださいました」
シャルロッテが頬を染めながら言ってくる。
性奴隷、って言葉からも察する通り、きっとかわいがるっていうのはソッチの方の意味でのなんだろう。
私、本当にとんでもないやつの身体に入り込んじゃったな……。
「まったく、いつも見せつけようとするんだから」
「身体に自信がない女はこれだから」
コルネリアとガブリエラが怒った顔でシャルロッテを見る。
「やだ、怖い」
シャルロッテはそう言うと、私の胸に顔を押し付けてしまった。
……困る。
「え、ええと……それより、話し合いを始めよう」