反撃
「ぐっ……お、おおおおお!」
骨の砕けるような衝撃が、ガード越しに脳髄へと響く。
防戦一方。しかし、俺がここで倒れるわけにはいかない。俺の肉体が盾となって時間を稼ぐその一秒一秒が、部下や子供たち、そして近隣の住人たちが爆心地から離れるための血の贖いなのだ。
この化け物相手に、地球上のどこに「安全な場所」なんてあるのかは分からない。それでも、彼らを生かすために、俺の命はある。
「あははは! おじさん、相変わらず懲りないねー!」
ルミナスは歌うように笑いながら、さらに速度を上げた。
「だるいからさっさと死んでよ。世界中のみんなが言ってるもん。『正義は必ず勝つ』んだから、抵抗しても無駄だってば!」
ドカッ!!!
大気を引き裂くような前蹴りが、俺の鳩尾を正確に捉えた。凄まじい衝撃。だが、ここには事前に仕込んでおいた特製の強化チタンプレートが仕込んである。鈍い金属音と共に、衝撃の大半が相殺された。
手応えに違和感を覚えたのだろう。俺を仕留めたと確信していたルミナスの顔に、ほんの一瞬、怪訝な「隙」が生じた。
研究し尽くした奴の悪癖。自分の力を過信し、相手を見下すがゆえに生まれる、刹那の油断。
「……捕まえたぞ、化け物」
俺は痛みを限界まで肉体から遮断し、電光石火の速さで両手を伸ばした。
標的は、蹴り出された奴の足首だ。
「え——」
ルミナスが目を見開く。人工筋肉を最大出力で駆動させ、俺は奴の足首の骨を肉ごと握り潰した。ミシミシと不吉な音が響く。
「な、にすんのよっ! 放し——」
「黙れッ!!」
叫びざま、俺は己の身体を軸にして、ルミナスを空中高くへと放り投げた。そのまま逃がさず、遠心力を乗せてアジトの分厚いコンクリート壁へと叩きつける。
ドガァァァン!!!
壁が蜘蛛の巣状に爆砕し、粉塵が舞う。だが、まだ終わりじゃない。足首を掴んだ手をさらに引き戻し、今度は渾身の力で、頑強な地面へと叩きつけた。
ズガガガガァン!!!
「がはっ……!」
流石のルミナスもこれには耐えかねたのか、その美しい顔を苦痛に歪め、口から大量の鮮血を吐き出した。その血が俺の顔面めがけて飛び散る。
目潰し。咄嗟に顔を背けてそれをかわした。
だが、奴の戦闘本能もまた、異常な領域にあった。
視界が一瞬ブレたその刹那。激痛に耐えかねたはずのルミナスの手が、目にも留まらぬ速さで動き、スカートの奥から引き抜いた対装甲用ナイフを、俺の大腿部に深く突き刺していた。
「っ……あああああ!」
肉を裂き、骨に達する鋭い痛みが、俺の脚を駆け抜けた。




