破壊された街
「ルミナス、本日も激戦の末に悪を撃退! 崩壊した市街地の復興支援へ」
ニュースのテロップは、今日も能天気な文字を踊らせている。
画面の向こうでは、破壊された街並みをバックに、ルミナスが「皆さん、ご無事ですか?」と健気に涙を浮かべていた。
白々しい。反吐が出る。
この10年間の戦いで、街の至るところから絶えず火の手が上がり、何の関係もない大勢の人々が巻き込まれて命を落とした。
ルミナスにとっては、街の崩壊も、巻き込まれる民間人の命も、己の『正義の戦い』を引き立てるための舞台装置に過ぎないのだ。
「……ボス、本日保護した子供たちの名簿です」
部下から差し出されたタブレットに目を落とす。
今日、戦場となった区域から救出された孤児たちの名前が並んでいた。
俺はこの5年間、ルミナスによって親を奪われた子供たちを、可能な限り組織で引き取ってきた。かつて、両親を惨殺されて拠点の血の海に立ち尽くしていた、あの日の俺自身を重ね合わせるように。
今日も、街のあちこちで凄惨な光景を見た。
倒壊した家屋やビルの側で、冷たくなっていく親の亡骸にすがりつき、声を枯らして咽び泣く子供たち。その小さな手を引いてここに連れてくるたび、胸の奥の炎がパチパチと音を立てて燃え盛る。
それなのに。
「やっぱりルミナスちゃんは僕たちのヒーローだ!」
「悪の組織さえいなくなれば、こんな被害もなくなるのに!」
ネットのタイムラインには、無責任な賞賛と、俺たちへの呪詛の言葉が溢れかえっている。
戦いを安全なモニターの向こうからしか見ていない傍観者たち(マジョリティ)にとっては、どれだけ街が壊れようが、ルミナスが『絶対の正義』であり、我々は『排除されるべき悪』なのだ。その歪んだ図式は、どれだけの血が流れようとも決して変わりはしない。
「……泣くのは終わりだ」
俺は名簿を閉じ、静かに、だが組織の全員に響く声で言った。
「彼らに、世界がどれほど狂っているかを教える必要はない。ただ、ここが彼らの家だ。そして、俺たちがその理不尽を叩き潰す盾となる」
向けられる憎悪がどれほど深くとも、この組織は俺の家族そのものだ。それだけは、あいつに奪わせない。




