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魔法少女ルミナス  作者: けろ
第2章 魔法少女と新政府

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正義の代償

新政府の発足から数週間。

激務の合間を縫って、俺は最深部の地下監獄へと足を運んだ。

重厚な爆破耐性扉の向こうに、彼女はいた。

かつての華やかなドレスではなく、特殊繊維の囚人服を着せられたルミナス。両手両足の強固な拘束に加え、その視界は完全に遮断されている。

「だ、誰……?」

暗闇の恐怖からか、その声は以前の傲慢さが嘘のように震えていた。

「俺だよ」

俺の声を聞いた瞬間、彼女の身体がびくりと跳ねる。

「……私を殺しに来たの? ねえ、早く殺してよ。こんなの、だるい。真っ暗で、何もなくて……もう嫌」

縋るようなその言葉に、俺は冷徹な現実を突きつける。

「それはな……無理なんだ」

組織の科学班が調べた結果、彼女の身体の異常性がすべて明らかになった。国の科学力の結晶である彼女は、すでに食事も睡眠も必要としない。それどころか、細胞の超高速再生により、実質的に『不死』の存在であることが判明したのだ。首を撥ねようが、心臓を撃ち抜こうが、彼女は死ねない。

「死によってラクになることは許されない。そういうわけなんで、お前には違う方法で断罪させてもらう」

「断罪? ……正義の魔法少女の、私が?」

視界を奪われたマスクの奥から、ルミナスは困惑した声を漏らした。信じられない、とでも言うように。

驚いたことに、彼女は今この状況になってもなお、自分自身を「正義の象徴」だと盲信しているようだった。

俺は静かに、しかし一言一言を刻みつけるように語り始めた。

「お前は正義などではない。お前がその手で、どれほどの命を蹂躙してきたか、教えてやる。

俺の両親を、そして幼い俺を育ててくれた大切な仲間たちを、お前がどれほど凄惨な方法で惨殺したか。

組織だけではない、お前の『正義の戦い』とやらに巻き込まれ、何の関係もない街の人々がどれほど多く犠牲になり、子供たちが親を失って泣いたか。

それだけじゃない。お前という化け物を維持し、動かすための高出力エネルギーを確保するため、この国のインフラはたびたび機能不全に陥っていた。人々は暗闇と寒さに震え、政府からお前のための法外な重税を課され、日々の生活を搾取されていたんだ」

最初は、「……うるさい。正義の戦いに、犠牲はつきものなんだから……!」と強がっていたルミナスだった。

だが、俺が具体的な街の名前、奪われた命の数、そして彼女の輝かしい舞台の裏で餓えていた人々の現実を、淡々と、滾々と突きつけ続けるうちに、彼女の言葉は力を失っていった。

「私が……みんなを守るための、正義だったのに……」

自分が「守っている」と信じ込んでいた無関係の人々。彼らこそが、自分という存在によって最も苦しめられ、傷つけられていたという動かしがたい事実。

全肯定の檻の中で育った彼女の幼い心に、生まれて初めて、本物の「罪の意識」が刃となって突き刺さる。

「……う、あ……」

やがて、ルミナスの小さな肩が激しく震え始めた。

遮断マスクの隙間から、止めどなく溢れた涙が床に滴り落ちる。

「ちがう……私は、褒めて、ほしかった、だけ……。みんなが、がんばれって……っ、う、うああああああん!」

地下室に、大人の身体をした少女の、子供のような嗚咽が響き渡る。

泣き叫ぶ彼女を見つめながら、俺の胸中にあったのは激しい憎悪だけではなかった。

この女もまた、治安悪化に怯えた国と、ヒーローを求めた大衆の都合によって都合よく踊らされ、化け物に仕立て上げられた『傀儡』に過ぎなかったのだ。

しかし、たとえ操り人形であったとしても、彼女が犯した罪が消えるわけではない。

「泣いても、何も変わらない。お前の『本当の断罪』は、これからだ」

俺は涙に暮れるルミナスを見下ろし、冷酷に告げた。

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