第2話 世界の攻略情報は、本当に存在した
目を開けると、そこは真っ白な空間だった。
「……ここは?」
上下も左右もない。
どこまでも続く白。
体はあるような、ないような不思議な感覚だった。
そして、目の前に巨大な本棚が現れる。
無数の本。
見上げても終わりが見えないほどの膨大な書架。
まるで世界中の知識を詰め込んだ図書館だった。
「これが……世界書庫?」
思わず呟く。
すると一冊の本が勝手に飛び出した。
表紙には文字が浮かんでいる。
【ノア・アルト】
「俺の名前……?」
本を開く。
そこには俺の人生が記されていた。
生まれた日。
初めて文字を覚えた日。
冒険者になった日。
勇者パーティに加入した日。
そして昨日――追放された瞬間まで。
「なんだよ、これ……」
鳥肌が立った。
本当に俺の人生そのものだ。
一字一句違わない。
すると次のページに、新たな文字が現れる。
【閲覧権限拡張】
【世界情報検索機能を解放します】
空中に光の文字が浮かぶ。
【検索したい内容を思い浮かべてください】
「検索……?」
半信半疑で考える。
今、一番気になること。
それは――。
「星喰いの指輪」
瞬間。
何千冊もの本が飛び出した。
その中の一冊だけが開く。
【神代級遺物 星喰いの指輪】
【神代文明末期に製造】
【適合率0.003%】
【現在の適合者:ノア・アルト】
【固有能力:魔力吸収】
【成長段階:第一段階】
【次段階解放条件:魔力量1000到達】
「成長……するのか?」
神代級遺物が。
そんな話は聞いたことがない。
さらに読み進める。
【警告】
【適合者を狙う勢力を確認】
【推定接触まで残り17日】
「は?」
思わず声が出た。
誰かが俺を狙う?
なんで?
その疑問を考えた瞬間、ページが勝手にめくられる。
【閲覧権限不足】
【現在閲覧できません】
そこで視界が揺れた。
世界書庫が崩れ始める。
「待て! まだ聞きたいことが――」
その瞬間。
意識が現実へ引き戻された。
◇
「……朝か」
目を覚ます。
そこは迷宮第七層の隠し部屋だった。
昨日の出来事は夢ではない。
指には黒い指輪がはまっている。
そして――。
「なんだこれ」
体が軽い。
異常なほど軽い。
試しに拳を握る。
筋肉が膨れ上がる感覚。
今までとは比べものにならない力が宿っていた。
近くの石を持ち上げてみる。
大人二人分はありそうな岩だ。
以前なら絶対に動かせない。
しかし。
「……軽っ」
片手で持ち上がった。
自分でも驚く。
星喰いの指輪の影響なのか。
それとも昨日流れ込んだ魔力のせいなのか。
どちらにせよ。
俺は確実に強くなっていた。
その時だった。
ガサッ。
通路の奥から物音が聞こえる。
「……!」
反射的に身構える。
現れたのは三匹のゴブリンだった。
初心者冒険者でも倒せる雑魚魔物。
だが俺にとっては違う。
今までは一匹でも危険だった。
逃げるしかなかった。
しかし。
【ゴブリン】
【弱点:顎下】
【次行動:突進】
情報が頭に流れ込む。
「見える……?」
ゴブリンが飛び出す。
だが不思議と遅く感じた。
俺は半歩だけ横へずれる。
空振り。
そのまま拳を振り抜いた。
ゴッ――!!
一匹目が壁まで吹き飛ぶ。
「え?」
俺が驚いた。
ゴブリンはもっと驚いた顔で絶命していた。
「今の……俺が?」
残る二匹が襲いかかる。
【左個体:右腕攻撃】
【右個体:噛み付き】
全部見える。
全部わかる。
まるで攻略本を読んでいるみたいに。
数秒後。
二匹とも床に転がっていた。
戦闘終了。
「……勝った」
人生で初めて。
自力で魔物を倒した。
その瞬間。
【経験値取得】
【魔力吸収発動】
【魔力量+12】
黒い光がゴブリンから吸い込まれる。
指輪が僅かに輝いた。
「強くなってる……?」
確信した。
この指輪は魔物を倒すほど成長する。
そして俺自身も強くなる。
その時だった。
再び世界書庫の情報が流れ込む。
【推奨行動を表示します】
【現在地から北東2.3km】
【未発見の神代保管庫を確認】
【推定価値:A級遺物×7】
「……は?」
俺は固まった。
A級遺物。
一つでも人生が変わる宝だ。
それが七つ。
誰にも発見されていない?
そんな馬鹿な話があるか。
だが昨日の隠し部屋も本当だった。
なら――。
「行ってみるしかないよな」
ノアは苦笑する。
追放されたはずなのに。
人生が終わったはずなのに。
今はむしろ、世界が広がって見えた。
知らない場所。
知らない秘密。
誰も見つけていない財宝。
そして、世界の真実。
その全てが、自分を待っている気がした。
だがこの時のノアはまだ知らない。
王都では既に――
勇者パーティが、異常な魔力反応の発生源を探し始めていることを。
そして。
神代級遺物の覚醒を感知した者が、もう一人存在することを。
遥か北方の雪に閉ざされた塔で。
一人の少女が静かに目を開いていた。
「……見つけた」
金色の瞳が細められる。
「やっと現れたのね――記録者」
少女の微笑みは、どこか嬉しそうで。
そして少しだけ、寂しそうだった。
【続く】
一週間経つのは早いですね、、
一週間でノアの冒険が少し進み始めそうですね?
まだまだ序章ですが少しでも楽しんでもらえたらうれしいです!




