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犬の異世界日記  作者: ふわふわ骨
獣国編
8/12

8話 自分に素直に正直に

『』内はウィンドウ表示です。

Side:イセ

魔導士兼ダンジョンマスター    



あぁ〜・・・。

何がどうしてこうなった・・・?


ダンジョンマスターなんて者にされたし、ダンジョンに入って来た人達と争う事になる、とは思っていた。

だけど、早すぎだろう・・・。1日どころか半日もたたずに侵入者って・・・。


しかも侵入者の人達のほぼ全員が、かなりの高レベル。

【ドリームライフ】で僕が知り合った上位プレイヤー達よりは低いレベル。けど僕からしたら、どのみち勝てないレベル差の人達が、出来立てほやほやのダンジョンに来るのは、さすがに予想できんよ。


その上、全員イケメンってどゆこと?

獣人のイケメンって人によるけど、僕から見たら全員イケメン。

さらに体格も良いし、鍛え上げた体から、見せかけの強さではない事が分かる。

というか鑑定でやばさが分かるのが辛い。

何?獣人に転生出来た事を、密かに喜んでた僕が悪いの?


「はぁ〜・・・」


重いため息しか出ねぇ〜・・・。

どうしよう・・・、ほんとにどうしよう・・・。

何も思いつかね〜、やる気も出ね〜・・・。

・・・あ、誰か近づいて来る。

・・・。駄目だ。起き上がる気力も無い。


近づいて来た誰かは、優しく僕の背に触れた。

流石に顔を上げなくては失礼だ。

どうにか気力を捻り出し起きる。


側には大柄の狼獣人さんがいた。

とても優しい笑顔と目で僕を見ていた。

心が傷ついた人を気遣うような、優しい笑顔。


「すまない、俺には君とあの青い板?との関係は分からない。ダンジョンを進んでいる間、君の声だけ聞こえていた。質問だったり、怒鳴っていたり、その様な声が聞こえていた」


え?嘘!?

そんなの聞こえてたの!?

うわっ、ちょっ!?恥ずかしい!?


僕は羞恥心で顔を両手で覆う。

そんな僕を気遣うよう肩に手を置いてくれる狼獣人さん。


「君が何を悩んでいるのか。俺には分からない。だが、顔を伏せていても、何も解決はしない。俺達も理由があってこのダンジョンに入って来た。君がダンジョンマスターだから、今すぐ戦うという気は、少なくとも俺には無いが、いつまでも伏せていても、何も変わらない、進まない。厳しい事を言っているだろうが、君には選んでもらわないといけない」


分かってる。それは、そんな事は。

優しい笑顔だけど、しっかりと僕を見て、厳しい、優しい言葉で言ってくれた。


そうだ、進まないと、選ばないと。

・・・でも、どうすれば・・・。


「すぐに選ぶのは難しいだろう。ならば、自分がどうすれば、でなくどうしたいか。自分の心は何をしたいか。素直に、正直な気持ちでやってみると良い」


・・・・・・。

素直に、正直な、気持ち?


・・・・・・・・・。


それだ、そんな単純な考えでいいんだ。


分からないなら、どうしたらいいか分からないなら、自分の気持ちを、相手に伝える、ぶつける。


ただそれだけで。

その後の事は、その時に決めれば良い。


「・・・・・・ありがとうございます」


僕はお礼を言って、立ち上がる。

ゆっくりと深呼吸。

そして、テーブルの向こうにいる、この状況の犯人であるウィンドウ(アレ)に歩み寄る。


「おい、こら。やらか神。同類呼びにか?それともやらか神呼びに対して、この状況作りやがったのか?」

『どっちもで、主に同類呼びです。改めろコンチクショー。』

「コンチクショーて何だよコンチクショーって!?改めろも何も、少なくとも俺に対してやらかしまくってる奴が、文句言える立場かぁ!」


近くで見てる狼獣人さんが、というかこれを見てるみなさんが、突然の僕の行動言動に、びっくりしているだろう。

だけど、このやらか神がこの状況の犯人。

しっかりと文句と説教を。というか思いっきり叩き込みたい衝動に駆られている。

あ〜。どうしよ?

腕組みして考えてしまう。


『どしたの?何悩んでんの?言ってみ?』

「何で他人事の様に聞いたんだ?言葉で殴るか、物理で殴るか、それとも魔法かで悩んでんだよ」

『後ろの人達を?』

「おめーだよやらか神!んな事したらっつーか、しようとした瞬間首ズバッて斬られるか、粉微塵に弾け飛ぶわ!」


どんだけレベル差があると思ったんだ!

簡単に制圧されるだろうし、その制圧でも良くて骨折、悪くて死のレベルなんだよ!

この状況で静観してくれてるのが奇跡に等しいわ!


『殴るも蹴るも良いけど、同類呼びとやらか神呼びはやめて!本当に嫌だ!』

「・・・嫌だも何も、まず俺はお前の名前を知らないんだが?」


そもそも名前も名乗ってない奴をどう呼ぼうと、こっちの自由。名乗ってない奴に文句言われたくない。

嫌なら最初に名乗れ。


『しまった〜!?名乗ってないなら、どう呼ばれても文句いえね〜!?いや、そもそも、僕の名前名乗っても、ストアラルじゃ僕神として知られてないし!イセ君こっちの人じゃないにしても、まず礼儀として名乗るべきだったのに、何故僕は名前言わなかったんだ〜!?』

「やらか神だから」

『ちくしょ〜!?否定出来なくなった〜!?』

「じゃ、いいじゃん。やらか神で」

『良くないよ!?』


えぇ〜?

いいじゃん、やらか神呼びで。

今更やだやだ言えないほどやらかしてるし。


『第一、やらか神に当てはまる神が沢山いるじゃん!?僕=やらか神=ストアラルの馬鹿神達ってことになるよ!?ややこしいでしょ!?』

「全部一纏めでいいよ。やらかしたのは事実だろ?お前も、ストアラルの自称神達も。全員やらか神でいいんだよ。それで解決なんだよ」

『何も解決してないよ!?僕アレらと一緒なんてやだ!お願いだからやめて〜!何でもは出来ませんが、出来る範囲であれば何かします!』

「しれっと保険かけるなや」

『呼び名変えないなら、イセ君!君の職業(クラス)魔導士から大賢者にするぞ!脅しでなく本当に出来るぞ!というか今からしてやる!』

「いやふざけんな!?人の苦労なんだと思ってる!?俺も頑張って魔導士から大賢者目指してるんだぞ!?」


この野郎!?人の職業(クラス)まで弄れるのか!?

ふざけんなよ!?僕も一応自分のペースで魔導士から魔導士職としての最上位の職業(クラス)である大賢者目指してるんだ!

ポンッと人の苦労の積み重ね崩さないで!?


「分かったよ!?というかとっとと名乗れよ!?名前分かればそれで呼ぶから、それで良いだろ」

『名乗りたいのは山々だけど、僕の名前教えるのはイセ君だけならいいんだよ。他の人達には教えたら違反してしまうの。と、いう訳で他の人達は一旦、ダンジョン外に出てもらって宜しいでしょうか?』

「宜しくねーよ」


後ろにいる茶色の立髪の、筋骨隆々の獅子獣人さんが、僕の方に来ながらやらか神のウィンドウに返す。

狐獣人さんと犀獣人さんが慌てて、獅子獣人さんに駆け足で続き、他の人達も僕とやらか神を警戒しながらも来た。


「お前とそこのガキの会話?の内容、俺らにも関係あるだろ。俺らがダンジョン外に行く理由が、お前のやらかし以外ねえし、俺らは出て行かねえよ。とっとと名乗れ」

『だから皆さんに教える事になるから、駄目なの。これ以上やらかす訳にはいけない。やらか神が確定してしまう。』

「手遅れだろ」(茶色獅子獣人さん)

「手遅れだっての」(僕)


茶色獅子獣人さんと僕がやらか神にツッコミを入れる。

はぁ〜。話が進まないし、僕が名前を勝手に付けるか。


「おいやらか神。僕が名前付ければいいだろ?それでいこうぜ」

『ふざけた名前付けたら、大賢者ルート直行だからね?」


やらか神を無視して、考える。

青いウィンドウを見た時、ゲームのメニュー表示やシステム画面とか、それの様に見えた。

だから、とりあえず分かりやすい名前を付けるか。


「じゃ、【ブルウィ】で」

『・・・何故?』

青い(ブルー)ウィンドウだから」

『わかりやすくて簡潔だねぇ。それでお願いします。』

「そんじゃあ・・・」


もういいよね。我慢は。

僕は発動待機させていた強化魔法と補助魔法をパチッと指を鳴らし発動させる。

全部の能力を一度に上げる魔法だと、消費魔力が多くなり、上がり幅も減る。

だから一つ一つ、別の強化魔法と補助魔法を重ねがけした方が効果的だ。

僕は、一つの強化魔法をトリガーに、予め設定している魔法を連鎖発動するように組んだ。

中々面倒で難しかったが、上位プレイヤー達と協力して、その仕組みを作った。

短時間しか出来なくなってるけど、一発叩き込むには十分な時間。

この(イセ)になって初めての魔法発動だけど、【ドリームライフ】の時と同じ様な感覚で使えるな。


『え、あの。何で戦闘準備してるの!?後ろの人達とやる気!?』

「いや、お前に対して、けじめと言うか、やらなきゃいけない仕置きの準備」

『何で!?』

「何でって、お前俺に対してのやらかしの中で、流石にごめんで済まない奴があるだろ?」

『え!?何!?やらかしにはオプション付ける事で許してって言ったじゃん!?何!?僕何について怒られるの!?』

「この人達の事だけど?いや〜。流石にこの人達の事黙ってたのは、オプション付ける事になってるにしても、わかった許すで済ませられんよ。だって普通に命の危機だし。戦力差が10倍どころか何万倍ってレベルの差。接敵した瞬間死んでもおかしくない状況を作ったのはだ〜れだ?」


色んなやらかしの中でこれは流石にレベルが違う。

あの人達の良心か策略か分からないが、僕を始末しようとすればさっくり終わってしまう程、レベル差がある。

これはブルウィだけが悪い訳でなく、僕自身気付かなかったのも悪い。だが、ブルウィは気付いてたのに、僕に対する嫌がらせで黙っていた。


殺されかけて、謝れば許す。

それが出来る程大人でない僕がいる。


「残念ながら、殺されかけた事実があるので、お前に一撃叩き込みます。拒否権も譲歩も加減も無い」

『まっ、待って!?』

「断る」

『いやいや、後ろの人達の前で魔力減らすのは悪手たよ!?僕が悪いけど、冷静になって!?』

「お前に一撃入れれば冷静になれるんだと思うなぁ〜。あなたに対する私の素直な気持ち(殺意)を受け取って」

『気持ちと書いて殺意と読まないで!?皆さん止めて〜!?』


後ろの人達に助けを求めるやらか神ことブルウィ。

皆さん止めないよね?

ちらりと見てみる。


「断る」(狼獣人さん)

「おめーが悪い」(茶色獅子獣人さん)

「以下同文」(犀獣人さん)

「あっ、取られた!」(紫色の犬獣人さん)


良かった。誰も同情や止める気配はない。


「皆さんの同意を得られたし、俺の殺意を召し上がれ」

『ちょっ、まっ!?』

「くらいやがれえぇ〜ッ!」


右手に、雷で出来た槍を作り、それを掴み大きく振りかぶって思いっきりウィンドウに投げつける。


【雷槍】

【サンダーランス】という雷の槍を作り、放ち操る魔法に、僕なりの改造をして作った魔法。

【魔力操作】によって操る事を放棄して、頑丈さを高めて掴めるよう改造。真っ直ぐ飛ばすのは掴んだ本人の技量次第ではあるが、強化や補助を受けた人なら【サンダーランス】に魔力を込めて放つより、貫通力や破壊力、飛距離が出せる。

魔導士の僕より近接職の人の方が高い効果を発揮できる魔法だが、それでも【サンダーランス】より【雷槍】の方がこう、気持ちを込められる。


【雷槍】がウィンドウにぶつかり、雷の爆発を起こす。


『ギャアアァァ〜!?』


というか文字を浮かべたウィンドウがバラバラになって散り、消えてゆく。

やらか神、ブルウィにダメージ入って無いだろうけど、僕は清々しい気分にはなれた。


「ふぅ〜」


ゆっくり息を吐く。スッキリとした気分だ。

自分に素直に、正直に。

そうだな、もう犬井晴朗とは名乗れない。

【ドリームライフ】時代のイセとして、生きていくしか出来なくなっているんだ。

なら、本当の自分としてやっていた、【ドリームライフ】のイセとして正直に。

ケモナーで同性好きの犬獣人として、ネットでしか言わなかった素直な自分で生きていこう。


そう決意してたら、後ろからぱちぱちと拍手と「おぉ〜」と言う声が聞こえる。

ちょっと恥ずかしいな。

一応は野蛮な方法だから、褒められたり讃えられるものじゃないと思うから。


とか思ってたら、のしのし近づく足音と気配が。

振り返ると、茶色獅子獣人さんに負けず劣らずの筋骨隆々の虎獣人さんが既に僕の近くに、というか胸の下辺りに僕の鼻が当たりそうなくらい密着してた。


「おいぃ、今の強化魔法と雷魔法ぅ。もう一回見せてくれねえかぁ。というか教えてくれねえかぁ?」

「いや、あの、ちょっと・・・!?」

「ちゃんと金とか物とか対価はしっかり支払うからよぉ、いいだろぉ?」


がっしり両肩を掴まれてそう言われ、ギラリとした目で、鼻先が密着間近で言われても!?

ちょっ、怖いんですけど!?あと恥ずかしいんですけど!?


「あの、ちょ!?たぁすけてぇ〜!?」


他の人に助けを求める事しかできねぇ〜!?

誰か〜!?



現在のレベル


・イセ=50

・リフォルグラン=495

・ゴド=435

・ダルヤ=414

・ゴウ=45

・コーダル=40

・スレイ=455

・ハウロウ=418

・マハガル=496

・ビシャル=392

・上位プレイヤー達=800くらい


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