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犬の異世界日記  作者: ふわふわ骨
獣国編
4/12

4話 嫌いな人との仕事でもしっかりやるべき

Side:ゴウ・レオナルド 獅子獣人

リフォルグランの息子 レオナルド国第三王子




ダンジョンが出現した場所。商店区へ行くわしら4人は、朝飯として屋台の肉と野菜の串焼きを食べながら向かっておる。

ダンジョン制圧をするので腹一杯では問題かと思うておったが、わしとダルヤさんは1本なのに、親父とゴドさんは10本食べ尽くしてしもうた。食い過ぎじゃろう。

ダルヤさんもわしと同じように呆れ驚き、困った顔で眉間を揉んでおる。

串をゴミ箱に入れ、満足げな親父とゴドさん。

とりあえず2人は良いとして、そろそろダンジョンが出現した場所に着く頃かの、と思い前を見ると、『闘士の門』のギルドマスターとギルドメンバーが集まっている場所を見つけた。

あそこが『闘士の門』が購入した土地かの。

そう思っていると、親父が『闘士の門』ギルドマスターに声をかける。


「おう、コーダル。色々と災難・・・なのか?いや、良い事か分からんが、なんか大変な事になったな」

「これはこれは、リフォルグラン様。今回のダンジョン出現に関しては、良くも悪くも問題ですが、我々『闘士の門』としては良い事でございます。しかし、この国の民にとっては、悪い事でございましょう。現在、ダンジョンから魔物が出て来てはいませんが、いつこの一帯が魔物で溢れるか分かりません。早急にダンジョンを制圧しなくてはなりませんね」


『闘士の門』現ギルドマスター、緑色の鱗の蜥蜴獣人のコーダル・アルフォンさんが親父にそう返す。

体は細いがそれなりに鍛えている。事務仕事が中心だからギルドメンバーと比べると頼りない体付きなのは仕方ないのう。

蜥蜴獣人は髪が生えておる人と生えておらん人がおり、コーダルさんは銀髪が生えておる。

代々この街の闘技場も運営しており、親父並みに大変かもしれんのう。

いつもは少し豪華な装飾の付いた服を着ているが、ダンジョン付近という事で防御力の高く、着心地の良いヴェノムタランチュラの糸で出来た白い軽装のコートを着ておる。

その隣にはコーダルさんの執事の白獅子獣人、スレイ・アムルさんがおり、コーダルさんに続き親父とわしらに問いかける。

スレイさんは親父ほど大柄ではないが大きく、筋肉質じゃ。

仕事着のスーツでなく、コーダルさんと同じくヴェノムタランチュラの糸と他の魔物の素材で出来た、軽装備じゃのう。

いつもの物凄く仕事の出来る執事とは、全然違う雰囲気じゃ。

レベルはゴドさんとダルヤさんと同格かそれ以上の強さであろう。

親父が昔勧誘したらしいが、その時周りを巻き込むほど殺気を親父に放ち騒動に。

その時すでにコーダルさんに仕えていたのが理由らしく、スレイさんが相当怒った結果だと。


「リフォルグラン様、ゴド様、ダルヤ様、ゴウ様。皆様にもダンジョン攻略を手伝っていただきたいのですが、よろしいでしょうか?すでに準備が出来ているようですが」

「スレイ、勿論そうさせてもらうぜ。というか俺の感が、このダンジョンが良い事だと言ってるからな。攻略でも制圧でもしなくちゃこの国が危ねえし」


親父の発言に、わしとゴドさんとダルヤさんも頷く。


「わしも微力ながら協力します、スレイさん」

「本当なら王は参加させたくはないのですが・・・」

「リフォは最近、書類仕事ばかり。暴れる機会を逃すはずない」


わしとダルヤさんの発言はともかく、ゴドさんの発言にはコーダルさんとスレイさんも苦笑いしておる。

否定できんほど親父の人柄が知られとるからのう。

親父だけじーっとわしらを見ておるが。


ふと、ダンジョン攻略を行う前に確認しないといかんことがある。

この国の冒険者ギルドと魔導士ギルドの事じゃ。

この場を見渡してみたところ、わし含めた親父たちのパーティーと、『闘士の門』のギルドメンバーしかおらんように見える。

この国の冒険者ギルドと魔導士ギルドのギルドマスターは、わしら獣人を嫌っておるのは知っとる。しかしダンジョンが街中で出現したという異常事態に、それを理由におらんなど流石にないじゃろう。

とりあえず、スレイさんに聞いてみるかの。


「スレイさん。冒険者ギルドと魔導士ギルドの面々は何処じゃろうか?遅れて来るのでしょうか?」


いつもの口調が出てしもうた。スレイさんなどの尊敬できる人には、しっかり敬語で話そうと思うておるが、つい出てしまうのう。気を付けぬとな。


「ダンジョン出現の報告を受けて直ぐに、皆様王族と冒険者ギルドと魔導士ギルドに使いを出したのですが、まだ何も・・・」


スレイさんはわしの口調には何も言わずに、質問に答えてくれた。

これが大人の対応というものかのう。

ありがたいが、わしはしっかりと反省せんとな。

使いを出してまだ反応が無いとなると、あっちも色々ごたごたしとるのか?

そう思った時、こっちに駆け寄る気配と足音が聞こえてきおる。

わしらとコーダルさんとスレイさんもそちらを見ると、駆け足でこちらに来る2人の人族の姿が見える。

わしには見覚えがないが、おそらくスレイさんが送った使いの人達じゃろう。

コーダルさんが2人に声をかける。


「2人共。両ギルドマスターはどうした?」

「コーダルさん!ぼ、冒険者ギルドマスターは!『そっちのギルドマスターが来るのが礼儀だろう!』と言って門前払いを受けてしまい、冒険者の人達もギルドマスターが行く事を止めました!」

「はぁ!?」


使いの1人が言った内容に、コーダルさんだけでなく、わしらと周りの人達も、「はぁ!?」と言ってしもうた。

えぇ〜・・・。

獣人嫌いだとしても、この非常時にそんな事するかのう・・・。

大人というか、人としてどうなんじゃ?

わしらの困惑顔に、魔導士ギルドに行ったもう1人が言いづらそうに口を開く。


「あ、あの〜。魔導士ギルドの方も、『野蛮な獣達に合わせられる訳がない!』と言い、追い返されました・・・」

「・・・・・・」


わしら全員呆れて怒る気も起きぬほどぽかーんとしてしもうた。

親父がなんとか口を開く。


「・・・待つ必要が無くなった。って事でいいか?」

「・・・そうですね」

「・・・ええ。気にするだけ無駄だと分かりましたし」


親父の言葉に、コーダルさんとスレイさんが返す。

冒険者ギルドと魔導士ギルドのギルドマスターが阿保な事をするなど・・・。

しかも非常時に・・・。

まあ、多分こうなると思っとったが。


このレオナルド国支部の冒険者ギルドマスターは、人族以外が大嫌いだと有名じゃ。

冒険者には人族以外も当然おるわけじゃが。

レオナルド国支部魔導士ギルドでは、人族以外の登録は禁止だと公言しておる。

特に獣人は名指しで、『魔法を扱う才能が欠落している獣に、気高い魔導士ギルドへ入るなど許されぬ!』とふざけた事を言いおった。


ダルヤさんは魔導士じゃし、スレイさんも基礎魔法に加え、血統魔法をも使える。獣人じゃからと魔法が使えん訳じゃないのじゃがのう。

わしは使えんが。

わしが呆れから頭の中で悪口を叩いておる時、こっちの騒ぎに紫色の毛色の犬獣人が来るのが見えた。


「ん〜と?何の騒ぎ?ダンジョン関連?それとも別問題?変な感じのダンジョンが街中で出たってのに、問題増えないで欲しいな〜、オレっち」


軽い口調でこっちに来て問う者。『闘士の門』ギルドメンバー、ビシャルさんが来た。

毛の長い紫色の毛の長身の犬獣人で、軽装というより肌着に見える装備しか着ていない。筋肉質の身体が目立つ。

最低限急所を守るように動きやすさ重視の格好で、腰に双剣を装備しておる。

わしはよく分からんが、オシャレに決めておるらしく、装飾品のような魔道具もしっかり身に着けており、目立ちたがり屋ではあるが、しっかり守れる用意をしておる人じゃ。


「ビシャル。ダンジョン関連の別問題だ。冒険者ギルドと魔導士ギルドが職務放棄すると言って来た」

「・・・えぇ〜・・・?マジで?」

「本当だ」


コーダルさんが呆れと怒りの混ざる声色でビシャルさんに答える。

ビシャルさんも呆れ顔となり、ダンジョン入り口に目を向ける。


「えぇ〜・・・。すっごい困るね〜。ただでさえマハガルとハウロウが『変なダンジョン』だって言うのに、職務放棄ってどういう事〜?」


ビシャルさんの言葉に、コーダルさんだけでなく、わしらも皆不思議に思った。

変なダンジョン?マハガルさんとハウロウさんがそう言ったのか?

わしの疑問に親父がビシャルさんに問いかける。


「ビシャル、マハガル達が『変なダンジョン』だって言ったのか?どういう事だ?」

「んー、あー・・・。オレっちが感じた違和感を、マハガルとハウロウも感じたらしくて。マハガル達が気配を探ってみたら、『変なダンジョンだなぁ』て言ったのよ。そんだけ」

「そんだけって・・・。もうちょいなんか無えのか?」

「いや〜。続きをマハガルに聞こうと思ったら、みんな『はぁ!?』って言ったから、こっちに来たの」


にっこり笑いそう言うビシャルさん。

そりゃあ気になるのう。わしら全員が『はぁ!?』って言うとったら。


親父がマハガルさんに続きを聞くため、ダンジョン入り口に歩き始めたので、わしらも後に続く。

ダンジョン入り口は、幅5メートルほどに高さも5メートルほど。奥行きは外からでは6メートルくらいあるように見える、継ぎ目のない石のような物で出来たものじゃった。


その入り口に巨体の2人の獣人。マハガルさんとハウロウさんが見える。

マハガルさんは親父並みの体格で筋骨隆々の虎獣人。

黄緑色と金髪の混ざった短髪で、部分的に伸びておる所があるのう。

魂魄武器(ソウル)の再生力の副作用らしく、髪が伸びるらしい。バラバラに伸びておる。

『闘士の門』ギルドメンバーで、闘技場の闘士としても一番の強者じゃ。

基本上半身に何も着ておらん。下は半ズボン履いとるが、靴でなく素足で草紐で出来たフットラップを履いとる。

今夏じゃからのう。冬はさすがに着ておるが、ダンジョン攻略の時も着ないのかの。

親父とマハガルさんは体格だけでなく、強さも同レベルで、400を超えておる。戦ったらどっちが勝つかより、周りの被害を考えなくてはならんから、互いに制限付きで戦う事はあるが、本気でやり合う機会がない事が2人共不満らしいのう。

強い相手・面白い相手と戦うのが好きらしいのじゃが、最近挑戦者がいないと言うもイラついておる理由らしい。

魂魄武器(ソウル)を使う機会も中々ない事でもイラついていると言う。贅沢な悩みじゃと思うのう。


ハウロウさんは親父とマハガルさんに次いで体格のある狼獣人。

灰色と白色の毛並みじゃ。

少しおせっかいな性格じゃが、どんな人にも丁寧な対応をしてくれる紳士じゃ。訓練等を指導してくれる時は厳しい口調になるがのう。

上下半袖の黒ベースの服であるハウロウさん。軽装でもない姿じゃが、マハガルさんの次に強い人じゃ。

冒険者と魔導士ギルドマスターには塩対応じゃが。

両ギルドマスターは、ハウロウさんも魂魄武器(ソウル)を使える事が気に入らんのもあるじゃろうが。


・・・親父含め魂魄武器(ソウル)の使い手がこれで3人。後1人は今仕事で遠出しとるらしいので、一応全員揃うたと言う訳じゃな。

全員獣人な事に対しても両ギルドマスター達が文句を言ってくるのもどうなんじゃろうか。

そんな事を考えておると、親父がマハガルさんとハウロウさんの2人に声をかける。


「マハガル!ハウロウ!ダンジョンが変な感じってどういうこった!?」

「おぅ!リフォぉ!どういうこったも変な感じなんだよぉ!魔物の気配がちっともしねぇんだぁ!一番下に1人居るだけでよぉ!」


マハガルさんが親父にそう答える。

ビシャルさんから聞いた通りの答えに、一つ追加されておるのう。

一番下に1人?人が居る?

どういう事じゃ?誰かダンジョンに入った、訳じゃないよな?

『闘士の門』のメンバーが来る前に入るのは出来なくは無いじゃろう。街中に出来とるわけじゃから、誰か入る事は出来る。

別に入ったらダメだという決まりは無いからのう。


「一番下に?・・・確かに魔物の気配が全くしねえな。というか下にいる奴もなんか変だな?」

「だろぉ?ダンジョン攻略に1人なのはかまわねぇが、一番下で寝転んでるんだぜぇ?さっき起きて胡座になったがよぉ」

「50ぐれぇか?何つーか、ゴウより強えが、ゴウほど戦えるのか分かんねえな」


わしより強いが、戦えるか分からない?

どういう事じゃ?

・・・親父に聞くのが早いか。


「親父、わしより強いが戦えるか分からないって、どういう意味じゃ?」

「あ〜・・・。レベルはあるが、何つーかな。魔力がレベルと比べて高い感じなんだが、それ以外が低く感じるんだよな。戦い慣れてねー感じだな」

「レベルだけ高い、という事かの」

「あぁ、けどそれだけじゃないって感じるんだよな」


親父が感じる違和感は、おそらくマハガルさん達も同じじゃろう。

経験と直感で測った結果、違和感を感じている。

2人はそういう答えなのじゃな。

ハウロウさんはどうなんじゃろ?

聞いてみるかの。


ハウロウさんを見ると、難しい問題を前にしたわしの様な顔をしておった。

どうしたのかの?


「ハウロウさん?どうしました?」

「・・・ん?あぁ、失礼した。ゴウ。来ていたのか」

「いいえ、『変なダンジョン』と感じて深く考えていたと分かっております。ハウロウさんはどんな風に感じていますか?」


今度はしっかり敬語を使えておるかの?

・・・今そんな事はいいかの。

ハウロウさんが感じる違和感を教えてほしいのう。

ダンジョン攻略に影響が出てしまうかも知れぬ。


「・・・。言っても良いが、予感だけの事だから、変な先入観で支障が出るかも知れない。警戒を強めて攻略に行き、実際に確かめるべきだろう」


ハウロウさんの意見を聞き、わしは考える。

確かに今の所親父とマハガルさん、ハウロウさんにビシャルさんの4人が感じた違和感しか無い。

それだけじゃ分からぬ事ばかりじゃ。

4人の経験と直感だけでわしら全員その先入観で攻略を始めるのは危険じゃろう。

実際に確かめるのが良いのじゃろうか。


わしが考えていると、親父とマハガルさんがダンジョン入り口に入りながら、


「よーし。体で確認するか」

「そうだなぁ。ここで考えても分からねーし、行けば分かるだろぉ」


と言って2人がダンジョンに入った時、ゴドさんとダルヤさんが慌てて引き留めた。

隊列を話し合い、ゴドさんが先頭で入る事に。

親父もマハガルさんも、わしらがおる事を考えてほしいものじゃ。

呆れながらも、わしらはダンジョン攻略を始めた。


・・・わし、もうすでに疲れた。

短時間で色々呆れて疲れてもうた。

親父とギルドマスター達とマハガルさんに。

わし、あんな大人達にはならない。

なりたくない。





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