3話 息抜きに暴れたいと王が言う
この世界の獣人は、二足歩行の動物の姿です。
半獣人も出て来ますが、獣耳と尻尾の人間の姿となります。
イメージは個人の想像にお任せします。
Side:リフォルグラン・レオナルド 獅子獣人
獣国レオナルドの第26代目国王
「んぉ〜・・・。朝か・・・」
窓から朝日が差す。
夜遅くまで書類仕事して、すぐ寝た。
だけど寝てすぐ起きた感じがするのは、なんかもったいなく感じるな。
ベッドからとりあえず上半身だけ起こした時、俺の直感が告げる。
今日からいい事が起こる。
俺の幼い頃からの直感と、冒険者時代に鍛えられた直感の両方が、そう言った。
俺はそれを受けて嬉しくなった。
最近、いい事の直感がなかなか無かったからな。
何が起こるかな。ガキみたいにはしゃぎはしないが、早く起こってほしいもんだ。
とりあえず起きて、着替えるか。
寝巻きの服を脱ぎ籠に入れ、クローゼットから国王用のローブを取り出す。
堅苦しいゴテゴテのローブを着るのは趣味じゃねぇが、これでも国王だからな。くだらん我儘言っても仕方ねえ。
寝巻きを脱ぎながらローブを持って鏡の前に行く。2メートル越えの俺の全身を映せる大鏡に、しっかりと鍛えられた肉体の獅子が映る。
俺なんだがな。
古傷が全身にあるが、それは俺が戦った証。修行に鍛錬の証明だ。
最近なかなか城から出る用事がなかったが、筋トレは怠っちゃいない。
茶色の立髪に寝癖がついてるから後で治さねえとな。
・・・自分の姿をずっと見てもなぁ〜。
とっとと着替え終わらせて朝飯を。と思ったら、廊下から駆け足の足音が聞こえてきた。
「リフォルグラン王!大変です!」
俺の護衛兼宰相のダルヤが、大声をだして扉をノックする。
ダルヤが慌ててるな、珍しい。
手早く着替えて扉を開ける。
黄色い毛並みの細身の狐獣人。ダルヤに声をかける。
「大声出さなくても聞こえるっての。どうした?ダルヤ。」
「リフォルグラン王!ダンジョンが出現しました!」
「ダンジョン?それで慌ててんのか?」
ダンジョンが出現するのは珍しい事だが、そんなに慌てる程か?
平民や新米の兵士ならともかく、ダルヤは俺の元冒険者パーティーの1人。
ダンジョン程度でこの慌てようはおかしいな。
「出現した場所が、この国!獣国レオナルドの街中です!商店区内の土地に出現しています!」
「はぁ!?商店区内に!?」
そりゃあ慌てるよな!?ダンジョンが国土のどこかの草原や山中とかならいざ知らず、街中で出来たら一大事だ!
・・・ん?これか?直感のいい事は?
直感が告げる。ダンジョンがいい事だと。
とりあえず・・・、行ってみるか!
「ダルヤ!そのダンジョンに行くぞ!支度しろ!」
「え?あ!はい!?・・・いや待った!言うと思いましたが、待ってください!」
ダルヤが慌てて止めてくる。
何でだ?
ダルヤが俺の顔を見て、少し呆れながら言う。
「ダンジョンに行くのは良いですが、それは王の仕事では・・・!」
「いや、俺とダルヤ、あとゴドが適任だろ?街中で出来たダンジョンが危ねえのは当たり前。早く攻略するってなったら俺たちが行くのが一番いいだろ?後書類仕事ばっかりだったから動きてえ!」
「適任なのは良いとして、本音は暴れたいだけでしょう!?」
「おう!」
「素直なら良い訳ではないです!」
俺とダルヤが言い合ってると、丁度ゴドとゴウがやって来た。
俺以上の体格の犀獣人のゴドはダルヤと同じく俺の専属護衛。いつもの護衛の装備ではなく、冒険者時代のミスリル鎧の姿で、すでにダンジョンに行く準備を終えていた。青白いミスリルの色が目立つ。
ゴウは俺の息子で、第3王子の獅子獣人。立髪が赤茶色以外俺と似ている奴だ。背は俺の胸辺りなぐらいか?まだ16だしな。
ゴウも自分の装備の赤と黒を基調とした半袖のシャドウスネークの鱗服を着てこっちに来る。
シャドウスネークは真っ黒な色の1メートル位の蛇で隠密に秀でてるが、鱗が同ランクの魔物の中でも硬いのが特徴でもある魔物だ。
「リフォ。ダルヤ。準備出来た」
ゴドが俺ら2人にそう短く言う。
ダルヤがゴドとゴウの方を見て言う。
「ゴド・・・。王が行くことに何かないのですか?」
「リフォは行くと言うと思った。俺も行き守る。それだけ」
ゴドは無口だが、はっきり護衛の仕事をしてくれる奴だ。長い付き合いの俺のやる事をわかってくれているから、ありがてえ。
ダルヤが溜め息を吐き、眉間に手をやる。
「・・・わかりました。大臣達に伝えて、準備しますので、勝手に行かないでくださいね!」
ダルヤが諦めて行く事を受け入れた。
俺はそれに頷き、足早に去るダルヤを見送ると、ゴドの隣にいるゴウに問いかける。
「そんで、ゴウはどうした?なんか用か?」
「親父、わしもダンジョンに同行するからのう」
少し年寄りの口調で言うゴウ。幼い頃に俺のじいちゃんに可愛がられてこんな口調になっちまった。
でも似合ってるんだよなぁ〜。ゴウ本人も治す気無えみてえだし、本人の自由だからな。
「親父?どうしたんじゃ?」
「いや、ダンジョンに同行するって、どうした急に?あの事気にしてんのか?」
ゴウの事を考えてて、少し固まった俺にゴウが疑問顔で問うが、すぐにダンジョン同行について聞いた。
ゴウがダンジョンに同行すんのは良いが、後から俺達が攻略した後でも、鍛錬場にする事ができるから、別に同行しなくてもいいはず。
だとしたらレベルの事だろうな。
ゴウは今45レベル。16才という若さでこれはかなりの高レベルだが、ゴウ本人は今のレベルに納得していない。
ゴウが通うアドリム国の魔闘学園ガーディアンは、魔法と近接戦闘に各種の技能スキルを鍛える為の学園。
格闘関連のスキルに秀でているゴウだが、魔法関連のスキルは全く使えない。
今第6位生のゴウだが、格闘関連だけでも第9位生の全員に勝っている。
ガーディアンでは第9位生まであり、第7〜9位生になると卒業資格が得られる。
しかし、ゴウみたいに格闘関連だけや、魔法関連だけ高い学生は第6位生までしか上がらねえ。
それだけしか出来ないとだめだという理由があるが、そもそも両方上げるのは中々難しい。どうしてもどちらかに偏ってしまう。
ひとつの事に特化することも努力の証だと思うが、こればかりは学園の方針だから何とも言えねえ。
そんな事を考えてたら、ゴウがダンジョンに同行する理由を答えてくれる。
ゴウはアレを使えない事も気にしてる様だし、その事かもな。
「親父の考え通り、レベル上げという訳じゃ。実戦訓練で魔法スキルを少しでも鍛えられるかも、と思っての。良いじゃろ?親父」
「ま、構わねえが、全部自己責任だからな?大怪我して泣くなよ?」
「泣かんわい。わしが選んだんじゃ。覚悟しとる」
「ならいい。俺も支度しねえとな」
俺は部屋に戻って、戦闘準備を。冒険者時代の物だが手入れと強化をしっかりしてる装備を着込む。
久しぶりに着込む装備を鏡前で軽く見直す。
ゴウの様な軽装の服。ブレイズウルフという火山など高温の土地に住む高レベルのウルフ種で、名前の通り炎を吐いたり纏ったりして攻撃してくるAクラスの魔物の毛皮に、同じく火山帯に住むボルケーノスパイダーの糸で編んだ物。ブーツもブレイズウルフの素材で出来てる。
火属性に対して強固な耐性を持つ装備品じゃねえと、色々困るからな。特注品だからかなり高かったがな。冒険者時代じゃケチったら死ぬかも知れないからな。後街中とかで全裸はまずいからな。
後はフレイムドラゴンの皮で出来た外套を羽織る。
しっかり着込んだ後軽く動き、アレを出す。
「【ブレイジングクロー】」
そう唱え、意識を強める。
すると俺の両手首と両足首に炎の輪が現れ、赤と金色のブレスレットとアンクレットの形となった
魂魄武器。こいつはそう呼ばれる能力だ。
一人一つの魂が具現化した力。俺だけの特別という訳では無え。こいつは冒険者時代に会得した物だ。
俺の『ブレイジングクロー』はブレスレットとアンクレットの形だが、剣や槍といった武器の形だったり、ローブや冠の形だったりする。
ゴウはこれを使えない事に負い目を感じてる様だが、そもそも魂魄武器を使える奴は少ない。
この国では10万人に1人使えれば良い方らしい。魂魄武器を調べ研究してる学者達によるとだが、俺はあんまり分からねえ。
家族、親が使えるからと子供が使えるという訳では無え。子供だけ使えるという場合もある。
獣国レオナルドで今魂魄武器を使えるのは、俺含め4人だけ。
【ブレイジングクロー】は炎の爪を造り出す事ができ、手からだけでなく足からも出せて、攻撃と防御に使える。
ただ、俺本人に炎の影響は無えが、服とかは燃えちまうから、火耐性の高いやつじゃないとえらい事になる。
っと、とっとと支度を終えないとな。
部屋から出ると、ダルヤも支度を終えて来ていた。
青色のローブに所々緑と金色の装飾が付いている物に両手杖を持っている。
「王。準備完了しました。」
「おう、んじゃ行こうぜ。」
歩き出そうとしたが、大事な事を聞きそびれていた。
商店区内のどこにダンジョンがあるのか聞いてねえ。
ダルヤに確認しねえと。
「そういや、商店区内の何処にあるんだ?詳しく教えてくれ」
「あっ!そうでした!えっと、商店区内でバトルギルド『闘士の門』が購入した土地です。中央広場から繋がる大通りの中間辺りの所です。」
「『闘士の門』が買ったあそこか?やっと買えたってのに、運が・・・悪いのか?良いのか?」
バトルギルド『闘士の門』はここレオナルド国で一番大きなギルドで、一番古くあるギルドでもある。
国内外問わず強者を、強者となろうとする奴の受け入れと勧誘をしているギルドだ。
そんなギルドが購入した土地にダンジョンが出来たのは良い事でもあり、悪い事でもある。
まずは『闘士の門』のギルドマスターに会わないとかもな。
ダルヤの話では『闘士の門』ギルドマスターはダンジョンのある土地にいるらしい。
俺たちは足早にダンジョンのある場所に行った。
この物語はフィクションです。
同姓同名でもフィクションです。
非難をしないでください。




