13話 悪口言う奴にはこんな扱いで
モノタケの喋り方に違和感を感じてしまうと思いますが、それっぽくしてるだけだと受け入れてください。
Side:モノタケ・イヌタカ 犬獣人(黒毛の柴犬)
【闘士の門】所属 魔闘学園ガーディアン第4位生
ゴウの後輩
獣王様達がダンジョン攻略に入って半刻(注:約一時間)。
戦闘音が一度、大きな爆発音の様なものを聞いた以外、それらしき音を聞きませぬ。
一体何が行われているのか。
獣王様やマハガル殿、スレイ殿達が出来立てのダンジョンに苦戦しておられる。と言うのは正直考えられませぬが、予期せぬことに遭遇されておられるのであろうか?
不安と焦りで腰に差しておる刀の鍔元を握り締め、深く呼吸を繰り返しておりますが、中々落ち着けませぬ。
・・・未熟者なのは自覚しておりました。
あの方々にはいらぬ心配だと思いたいですが、心はそうはいきませぬ。
薄い青色の袴に、籠手・脛当てを付けた動きやすさを重視した、某の故郷の東方列島国エドフルの一般的であり遠い昔、異世界より来た勇者や異界人と言われる人達の伝えた、エドフルの伝統的な軽装備。
それらを見た後、自分の刀と手のひらを見る。
父上と母上、兄弟子達が言っていた様に、覚悟だけで心はすぐに強くはなれないのですな。
「王様達、遅いなぁ。何かあったのか?」
「なんかあったから、爆発音がしたんだろ。何も無くてあんな音が鳴るなんて、むしろ何があったんだよ?」
「何も無くて王様とマハガルが喧嘩始めた」
「・・・いや、んな訳・・・。ダメだ一番しっくりくる!?」
ここに集まっておられる【闘士の門】の皆様と兵士の方達が、ダンジョン攻略に行かれた獣王様達と、ダンジョンから聞こえた爆発音に対して話をしております。
爆発音の原因がお二人の喧嘩だと思っておられる様子。
・・・某もそうなのかも、と考えておりました。
獣王様達の安否を考えておられると、不愉快な匂いと気配が近づいてきてしまった。
「おい、獣ども!お前らの親玉共はどうなった?」
「獣どもが満足にダンジョンを攻略なんぞ、出来はせんか?いや、当たり前のことじゃな!」
某だけでなく、皆様不愉快だというのを隠さずに視線だけ向けまする。
そこには、一応この国の冒険者ギルドのギルドマスター・ダーデと魔道士ギルドマスター・カハトが、こちらを馬鹿にする態度を隠さずに、獣王様やコーダル殿達の事を馬鹿にする発言を、躊躇いなく口に出している。
ダーデは金髪で多少筋肉質の人族の男性。特徴というか、左目辺りに縦一文字に古傷があるくらい。
背中に身の丈並みの大剣を背負っている。
カハトは綺麗に髪を剃って・・・否、禿げている白髭の老人。
真っ黒で縁が金で装飾されているローブを纏い、宝石が散りばめられている両手杖を持っている。
2人だけでなく、ダーデの手下と言っても過言でない冒険者の者達と、カハトの手下の魔道士達もぞろぞろ群がっていまする。
「あ〜ん?今更何しに来やがった!腰抜けギルマス共!」
「仕事放棄しておきながら、うちのギルドマスター達を馬鹿にしに来ただけかぁ?」
「仕事まともにしてない奴らに、ダンジョン攻略云々言われたかねえよ!」
【闘士の門】の皆様と兵士の方達が獣王様達への罵倒に怒り、声を荒げまする。
某は気が付くと刀の柄に手をやって、少し刃を出した状態に、いつでも斬りかかれる体勢へと移っておりました。
・・・落ち着かねば。
「はっ!獣共が吠えても現実は変わんねえよ!実際あの獣の王はダンジョンから戻って来ねえんだろ!中で死んでんじゃねえか?」
「ホッホッホッ!獣に攻略なんぞ芸当出来はせんよ!自分達の立場をわきまえて、地に伏して謙って丁寧にお願いすれば、儂らも慈悲深くお前らを手駒にしてやる程度で許してやろうと思ったのにのう!」
・・・もう斬ろう。
【闘士の門】の皆様方と兵士の方達も武器に手を掛け、臨戦体勢へと移っておられる。
某だけ何もせずに傍観など、くだらぬ真似など致しませぬ。
あちらもこっちの殺気に反応し、全員が武器や魔道具を取り出し、双方の殺気が渦巻く様な空気が。
・・・ん?
獣王様達の気配と匂いが、ダンジョンから上がってきまする!?
皆様も気配と匂いで獣王様達に気づき、武器から手を離しまする。
「おーい、何があったんだこれ?」
「・・・武力衝突間近だった様」
「はぁ〜・・・。今頃来たんですか?仕事が遅い、いや放棄してたというのに?」
獣王リフォングラン様・ゴド様・ダルヤ様。
そしてその後ろからゴウ殿・コーダル様・スレイ様が上がって来られました。
・・・?大小様々な形をした鞄。アイテムバック?をゴド様・ダルヤ様・スレイ様が持っておられまする。
ゴド様は青色の箱のような形の物を2つ、箱に付いているベルトを肩に掛けて持っていらっしゃる。(注:クーラーボックスとアイテムバックが融合した物だという事でお願いします)
ダルヤ様とスレイ様は大きい茶色の鞄の形でございまする。それらも2つお持ちになられておられる。
・・・マハガル殿・ハウロウ殿・ビシャル殿は何処に?
3人がいない事を、奴らは嬉しそうに、嫌味ったらしい笑顔で獣王様達に言う。
「おいおいおい獣野郎共!人数足りねえんじゃねえか?あいつら死んじまったか!見殺しにしやがったんだな?」
「ホッホッホッ!その持ってる物の為に見殺ししおったか!やはり獣じゃのう!利益の為に見殺しかの!」
・・・・・・もう限界。
堪えられませぬ。
某だけでなく、皆様方も殺気を高めて・・・。
「落ち着けお前ら」
獣王様の一言。
張り上げた訳では無いが、ここにいる全員にしっかりと届くであろう声。威厳と落ち着かせようとする優しさを感じまする。
某含めた皆様方が武器を下ろし構えを解きまする。
「はぁ〜・・・。お前ら偉そうに椅子に座って、仕事してますって格好ばっかだから、考える力無くなっちまったのか?マハガルにハウロウにビシャルは死んでねーよ。つーか死んでたらこんなにアイテムバック持ってる訳も、お前ら相手にする元気もねえっつーの」
「考える脳が無いから仕方ない」
「・・・ダンジョン攻略はしない。警備に人員を割いてもいない。仕事をしてない。けど馬鹿にしに来たって、どんだけ暇なんですか?」
獣王様とゴド様とダルヤ様が奴らへ返答。
仕事してない奴らに文句言われたく無いと、当たり前の事でございますが、キッパリと言い切ってくださった。
某達の怒りを代弁してくださった様に感じまする。
「あ〜、親父。わしはわしの用事済ませてくるからのう。お二人共これで。」
「あぁ、うん分かった。ゴウ君行ってらっしゃい」
「お気をつけて」
ゴウ殿はコーダル様とスレイ様に別れを告げ、足早に何処かへ。
如何したのであろうか?
【闘士の門】のメンバーの1人がコーダル様に問いまする。
「あのー、ギルドマスター?一体中で何が?説明頂きたいのですが?」
「ああ、そうだな。皆に説明が必要だな。簡単に言うとダンジョンマスターと会った」
「・・・・・・・・・はい?」
・・・・・・ダンジョンマスターに会った?
本当に簡潔におっしゃいましたな。
もっ、もうちょっと何か・・・・・・。
「ダンジョンマスターのイセ君と言う犬獣人なのだが、彼自身ダンジョンマスターになりたくてなった訳では無いし、この国にダンジョンを作る気も無かったらしい。スレイに獣王様達も嘘では無い、と言ったから私も信じる事にした。それでイセ君はとりあえずこのダンジョンで生活したいと言って、私達にお騒がせしましたという意味で、お詫びの品としてこれらアイテムバックと中身の品をくれたのだ。そしてこちらと取引・交易をしたいというのと、イセ君自身の探究欲を満たしたいと言ってきたのだ。獣王様も私達も、その取り引きに応じる事を選んだ」
しっかり分かりやすく、簡単に説明頂いた。
実際はもっと細かい話をしたでしょうが、難しい大事な話をここでする訳にもいきませぬな。
「おい蜥蜴野郎!何貴様らだけでんな大事勝手に進めて決めやがった!」
「そうじゃ!誰の許可を得て勝手な真似を!」
ダーデとカハトがコーダル様に、変な事を言い出しまする。
許可など要らぬであろうに。
某だけでなく他の皆様方もそう言おうとしたら、ダンジョン内から、マハガル殿・ハウロウ殿・ビシャル殿と、もう1人知らない匂いと気配を感じもうした。
「オメーらの許可も承諾もいらねーっての。仕事してないのに口は挟みますって、ふざけたことをここまではっきり言えるのは、呆れを通り越してすげーとは思う。ここまで馬鹿でも一応地方の支部のトップやれるもんなのか?」
知らない声の呆れと怒りの混ざった言葉。
ダンジョン入り口を見ていたら、マハガル殿達が上がって来られました。1人知らない犬獣人の方が。
彼が、もしかしてダンジョンマスターなのでござろうか?
ボロ布のつぎはぎの服、の様に見えましたが、所々に魔道具らしき装飾を付けている、上は薄汚れた感じの肌色?の服。下は同じく薄汚れた黒色のズボンを履いた、失礼ながらふくよか、いや?毛太り?の体格の顔上半分灰色で下は白色の犬獣人。
「やれるから一応ギルマスなんだぜぇ、イセぇ」
「この様な事を悪気無く発言出来る奴が、こいつらという訳だ。人族全員がこうだという訳では無いからな、イセ」
「オレっち達もその辺は分けて考えてるよん。アレらと一緒の感性なんてごめんだしね〜。イセちゃんも誤解しないでね」
「アレらと一緒だなんて、考える訳ないってビシャル。そもそもあんなレベルのアホにどうやってなれるのか、不思議でたまらん」
マハガル殿達がイセと呼ぶということは、彼がダンジョンマスターであるイセ殿なのか。
「ん?イセ、ハウロウとビシャルにも敬意払えなくなったか?」
「敬語じゃなくていいって言われたんだよ!お前とマハガルと一緒にすんな!ゴウにも『敬語じゃなくていいぞ』って言われたから使って無いだろ!」
「あぁ、そっか。と言うか、茶色いローブから着替えたのか?」
「ああ、あれは作業着みたいなもんだよ、リフォ。魔道具とか魔法作る時、汚れたりしても大丈夫なやつ。【魔力自然回復量上昇】とか【自己修復】とか、5つくらいエンチャントを色々付けたやつなの。こっちは最近作った戦闘用の服。なんとなくこんな感じに作ってみた」
・・・獣王様へのあの態度。
マハガル殿や獣王様が冒険者時代に知り合った人達ならまだ分かる。分かりまする。
イセ君。殿?があの態度で獣王様に話しているのを、ダルヤ様は眉を顰めるだけで注意しないのは何故なのでござろうか?
というか今さらりととんでもない事を言っていたような?
「・・・イセ。今何個エンチャント付けてるって言った?」
「・・・5つくらいって言ったけども?」
「・・・2つ以上付いてる物って国宝級なんだが?」
「・・・いやんな訳ないって」
「いやマジで」
「いやいやんな訳・・・」
獣王様が言っている言葉を、イセ殿は「いやいやありえない」と言っていまするが、本当の事でございまする。
2つ以上のエンチャントを付けるのは、今の魔導士には不可能と言われております。
なのにさらりと「5つくらい付いてるの」と言ったイセ殿。
本当に「ありえない」という顔をして獣王様と会話するイセ殿に、あの2人が噛み付く。
「おい犬野郎!俺らに失礼な事言いやがって!ふざけてんじゃねーぞ!」
「そうじゃそうじゃ!儂ら人族を馬鹿にしおって!」
・・・失礼も何も事実でござろう。
あとあんたらを馬鹿にしたのであって、人族全員馬鹿にした訳ではないはずなのに・・・。
奴ら今度は何かいい事思いついたように、ニタニタ気味の悪い笑顔をし始めた。
「そうだな・・・。お詫びとして、さっき言ってた国宝以上のエンチャントローブは当然として、お前が持ってる魔道具全部俺らに差し出すなら、不問にしてやんぞ?」
「おお、それはいいのう!獣の失礼な真似を、その程度で許してやる儂らの心の広さに、感謝するのじゃ」
「何で名案みてーに言ってんだ?お詫びも何もお前らに迷惑かけてねーし、リフォとコーダルさんには既にお詫びの品渡してんだよ。さっきコーダルさん言ってたはずだろ?もう頭から抜け落ちたか。じーさんはまだ分かるが、そっちの金髪はもう脳の劣化が始まってるのか、可哀想に。ギルマス辞めて隠居してろよ2人共。後継ぐれーいるだろ?」
2人の馬鹿な言葉に、イセ殿がはっきりとやる訳ないと言いまする。
そして2人に罵倒でも返しまする。
初対面で、しかも2人相手にあんな風にズバズバ言えるのは凄いですな。
「うるせえ獣風情が!いいから寄越せ!」
「儂らが大人しいうちに寄越すのが賢明じゃぞ、獣如き犬ころには勿体ない名誉な事じゃ!」
「あーやだやだ、言い返せなくなったら大声で怒鳴って罵声を浴びせるって、典型的な小物のとる行動言動だぞ?つーか金髪は寄越せって、自分の言ってる事に正当性無いって自覚してんじゃん。ハゲヒゲじーさんは・・・?ボケたのか?名誉って受け取る側の価値観で変わるもんじゃね?」
2人の反論?・・・ではありませんな。罵倒に律儀に返すイセ殿。
2人だけでなく、手下の輩の顔も怒りと屈辱に染まりまする。
そんな奴らなどどうでもいいという風に、イセ殿はハウロウ殿とビシャル殿に向き直り、
「さて、あんなのほっといて、ハウロウ・ビシャル。これ皆さんにお願いね」
「わかった、イセ」
「ほいほーい。任せてん」
と言って、イセ殿が虚空に手をやると、薄暗い不定形な空間が。
アイテムボックスですな。そこからいくつか箱?の様な物をいくつか取り出しましたな。
ゴド様が持っている青い箱に似てますが、より小さな物ですな。
「イセちゃん、そんなかどれだけはいってるのん?」
「沢山」
「いや、そういう回答が欲しかったんでなくてね?ここにいる【闘士の門】と兵士の人達分あるのか聞いてんのよ」
「おそらく多分あるかなー」
「うおーい、不安になる曖昧な言葉選ばないで〜」
「おかわりとかしたら足りないかもしれないな〜。あっちの奴ら分必要無いなら、1人一つ分あるのは確実」
「それならだいじょぶだねん」
ビシャル殿が何やら確認をとって、ハウロウ殿と受け取ろうとした時、ダーデとカハトが武器を構えて、
「舐めるのも大概にしろお!」
「紅蓮の炎よ!火球となりて・・・!」
イセ殿目掛けてダーデが大剣を担いで突進!
カハトは詠唱を!
止めなくては!
罵倒・悪口には皮肉で返す。
上手くいっているといいのですが。




