10話 話しとご飯と確認と本気の心配
Side:ビシャル 紫犬獣人
【闘士の門】のギルドメンバー
・学校の教室でいきなり床に魔法陣が浮かび、問答など無く誘拐された。
・邪神とその信者を殺すよう命令された。
・クラスメイトの1人がさらっと『やります!』と馬鹿言い出したから口論となった。
・自称神が僕だけ残れと命令して、何故か皆命令を受け入れて出ていった。
・自称神に捕らえられて、いきなり被害者アピールし始めて、つい『おばさん』て言いかけたら攻撃された。
「覚えてるのはそのくらいですね。」
と大きい白い板に黒い文字を書いて、タマゴサンドをもぐもぐ食べてる、黒いレンズのメガネをかけてるイセちゃん。
あっさりしてね?とんでもない体験してんのに、他人事みたいな反応。
「あっさりし過ぎじゃろう・・・。なんかもっとないのか?」
ゴウちゃんがイセちゃんのあっさり加減に呆れ半分で問う。
確かにもうちょい中身が欲しいね〜。
「と言われても、本当にそのくらいしか無いですよ?その後はこのダンジョンで目覚めて、ブルウィという名のやらか神に説明されて、皆さんが来た。ほんとにそれだけ」
「あっ、結局やらか神呼びはやめないのね」
ついつっこんでしまったオレっち
ブルウィに冷たいイセちゃん。
色々迷惑かけられてるらしいし、仕方ないかね〜。
というかなんで黒いメガネかけてるの?
「お〜い、イセぇ。カツとたまごのおかわりぃ」
「はいはい」
マハガルにおかわりのサンドイッチを出すイセちゃん。
オレっち達も全員サンドイッチを食べていた。
3人が美味そうにもぐもぐ食べてるから、オレっち達も食べたくなっちゃった。
3人共大食漢なだけでなく、料理の美味い不味いに関して正直だから、あの3人の反応でカツサンドが本当に美味いのだろうと分かっちゃってたからねぇ〜。
「お〜い。俺もカツとたまご」(リフォ)
「はい」(イセちゃん)
「・・・照り焼き」(ゴドさん)
「どうぞ」(イセちゃん)
遠慮なくおかわりする3人。
イセちゃんもお腹空いてたみたいだから、「皆さんも食べますか?」て聞かれたから、食べますて言って食べる事に。
カツサンドって言う肉にパン粉を付けて揚げて、柔らかい食パンてやつで挟んだ物。ゆで卵を潰して調味料と混ぜて作ったタマゴサンド。色んな野菜を挟んだり、鶏肉を甘めのタレで焼いた照り焼きチキンサンドとか色々なサンドイッチって言う、イセちゃんの手作り料理を、オレっち達もモリモリ食べた。
いや〜、3人を馬鹿に出来なくなっちゃった。
こんなに美味しいと、あんなにバクバク食べちゃうよね〜。
オレっちはたまごが一番好きかな〜。
食いしん坊3人におかわりのサンドイッチやアイスコーヒーを出し終えたイセちゃんに、ダルヤさんが口元を拭きながら、
「イセ君。君が本当の事を言っているかは、この先こちらが調べれば良いので、この話は一旦終わりましょう。次に、君が使った魔法に関しての質問をしていきます」
とイセちゃんに質問した。
ん〜、ダルヤさん。イセちゃんがそれにちゃんと答えるかな〜。
自分が持ってる、こっちが知らない魔法の知識。
こっちとやり合う為の手札を、ぽんっと渡す訳ないよ。
話しても嘘を部分的に入れればいいだけだし。
「・・・それなんですけど、ダルヤさん魔導士でしょう?何で僕程度の奴に魔法の質問を?ダルヤさんのが魔力も知識もあるでしょうに」
「イセ君が使った魔法が、私が使える魔法【サンダーランス】より強力だからです。何故あれほどの威力を出せるのか。私より魔力がかなり低いイセ君がどうしてあれほどの魔法を放てるか。分からない危険な魔法を使える。知らないと危ない存在の魔法を警戒するのは当然でしょう」
「いや、何故も何も僕が作った魔法ですし、自作の魔法を作れない魔導士がいる訳ないでしょ。魔法文字も別に魔導士だけしか読めない訳でもないし」
・・・・・・・・・。
ダルヤさんだけでなく、オレっち達も固まっちゃった。
イセちゃん?すごい変なこと言っちゃってるよ?
魔法を作る?魔法文字を読める?
魔法式を弄るのはまだしも、魔法文字を読むのは不可能って言われてるよ?
学者達が長年研究しても、解読出来ない神聖な物って発表だった。
詳しくは学者じゃないから分からないけども、それが魔導士の中での常識らしい。
新たな魔法を作ろうと躍起になってはいるものの、未だ碌な成功例無いらしいし。
こっちの反応に、イセちゃんが首を捻って、
「あ、いや、待てよ?こっちの世界で魔法文字とか魔法式が同じとは限らないよな?ん〜、でも同じじゃないと【雷槍】が使える訳ないし・・・?」
イセちゃんがうんうん唸って考え込む。
あ〜、確かにイセちゃん異世界から来たって言ってたね。
イセちゃんの世界とこっちの魔法の知識が同じじゃない可能性は大だよね。
でも、イセちゃんが魔法を使えたのなら、魔法に関しては同じ感じって事なのかね?
「・・・ちょっと失礼」
イセちゃんがイスから立ち、オレっち達から距離を取り、壁に向かい指を鳴らしながら、
「【サンダーアロー】」
バチンッ!
という音と共に、雷で出来た矢がイセちゃんの前側に数十本出て来て、
ビュオンッ!
という風切り音を立てて、ダンジョンの壁に向かい、
ババババンッ!
と雷の爆発を生み出しながら破裂。
「・・・使えるな。今度は、【ストーンウォール】」
ゴオンッ!
と3メートルくらいの高さの石の壁を出すイセちゃん。
・・・さらっとやってるけど、詠唱とかしないのね・・・。
ダルヤさんどうなってるかな〜と、ちらりと見る。
「・・・・・・・・・」
ぽかーんとしてる。
ダルヤさんにとって、いや今の魔導士にとってあり得ないものを見てる反応。
イセちゃんは腕組みしてまだうんうん唸ってる。
「ん〜、え〜?使えるよな?強化も補助も出来たし、その他の系統も使えるって考えでいいかな?全部使うのは流石に疲れるし」
「・・・なぁ、イセ。お前が確認して使えるのはいいが、確かめる方法なら簡単なのがあるぞ?」
リフォがイセちゃんに近づいて、人差し指を立てて言う。
「ゴウは魔闘学園ってとこに通う学生だ。そこで使う魔法科の教本を見ればなんか分かると思うぞ」
「あ〜。確かにこっちの魔法式見るのが早いかも。違いがすぐ分かるかもだし」
あ〜まあ、それが良いかも。
学園っていうけど、学者達が集まる研究所みたいな側面もあるから、魔法の研究もそこを中心に行われる時もある。
魔導士ギルドだけが魔法を研究する訳じゃないし、学生も沢山研究や探究をする。
・・・てか、沢山研究探究して魔法式を改良してるはずなのに、ゴウちゃんというか、オレっち達が使える魔法が全然ないのは何でだろ?
今更だけど。
「イセ、これが教本じゃ」
「ありがとうございます」
「あ〜、敬語使わんでよいぞ別に」
「え、あ。じゃあそうするよ」
ゴウちゃんとイセちゃんのやりとり。
・・・ゴウちゃんとかオレっち達には敬語なのに、リフォやマハガルには使ってない。
理由が、『敬意が払えない。最初から脅迫だったし。』だって。
ま、最初の会話が脅迫じゃね。
ダルヤさんは何か言いたげだったけど、リフォが最初にやらかしたし、強く言えない様。
それはそうと、教本を開いたイセちゃん。
物凄い変な物を見たような、眉間に皺を寄せてゴウちゃんを見る。
「・・・・・・」
「・・・・・・どうしたんじゃ?」
イセちゃんがリフォに近づき、
「・・・リフォ。息子さん虐め受けてますよ」(イセちゃん)
「んだとおぉぉ!?」(リフォ)
「受け取らんわあぁ!?」(ゴウちゃん)
えぇ〜!?ゴウちゃんが虐められてる!?
嘘おん!?マジで!?
どゆこと!?
「おいこら、イセ!?何を言うとるんじゃ!?わしは虐めなんぞ受け取らんわ!?」
「いやこれ虐めだろ!?虐め以外なら学園の教師だけでなく、こっちで魔導士名乗ってる奴ら全員が馬鹿やってるってレベルじゃねーぞ!?何がどうしてこうなった!?これ本当に学園で使ってる教本なの!?」
イセちゃんが本気でゴウちゃん心配してるみたい。
「おいゴウ!?お前虐められてんのか!?」
「虐めなんぞ受け取らんわ親父!?されてたらわし自分で解決するわ!」
「あーまぁ、確かに?」
リフォがゴウちゃんの発言に納得してたら、
「いやリフォ。本人虐めと気付いてないパターンって結構あるぞ。家族や友達に気を遣って言わないってのもある」
「おいゴウ!隠さずに言え!犯人ぶっ飛ばすから!」
「だからされとらんわ!?イセ!適当な事言うんじゃないわ!?」
「適当じゃねー!虐めでも問題だが、教師とか魔導士名乗ってる奴らがこんなの作ったって事実を、受け入れたくねーんだよ!こんなに酷いの見たくなかったよ!読めない方が幸せだったかもと本気で思ってるんだからな!」
あーちょっと、興奮しちゃってるな3人とも。
落ち着かせなきゃ。
「あーはいはい。落ち着いてねー。イセちゃん。深呼吸深呼吸」
3人の間にオレっち・ハウロウ・スレイ・ゴドさんが割り込み、オレっちとハウロウはイセちゃんをぐいぐい押して遠ざける。
ひとまず深呼吸させて落ち着かせる。
「そうだぞイセ。ゴウが虐められてるか否かは分からないが、まず落ち着くんだ。イセだけがこの本の問題が分かったとしても、何が問題なのか分からないまま、ゴウが虐められてると言われても俺たちは納得出来ないぞ。落ち着いて聞かせて欲しい」
ハウロウがイセちゃんと同じ目線まで腰を落とし、落ち着くように諭す。
オレっち達は、どうしてゴウちゃんが虐められてるとなったか分からないまま、イセちゃんが興奮しちゃったからね〜。
イセちゃんも自分が暴走していたのは分かっているらしく、目を瞑ってふうふうと荒く深呼吸を、落ち着くために繰り返してる。
ハウロウがイセちゃんの手を握り、肩に手を置く。
オレっちも反対の肩をぽんぽんする。
「リフォ。イセは本気で心配してた」
「だな。俺も分かってたからゴウを本気で心配しちまった」
「どんだけ酷かったんだぁ?」
ゴドさんとリフォはすでに落ち着いてた。
マハガルはイセちゃんの取り乱し様に、どれだけ教本が酷かったのか首を傾げてる。
「ふぅ〜・・・。びっくりしたわ。突然虐められとるなんぞ言われるとはのう」
「ゴウ様。確認ですが、本当に虐めを受けてないのですね?」
「誰かを庇っているのでは無く、本当に受けてないのか?」
「どうなんですか?ゴウ様」
「受けてません」
ゴウちゃんを心配して、スレイ・コーダル・ダルヤさんが順に聞き、ゴウちゃんが否定。
落ち着いてきたイセちゃんに、何がどう酷いか教えてもらう事に。
さーて。どれだけ酷いのかな〜。
ゴウ「今更じゃが、何故黒いメガネかけとんのじゃ?」
イセ「頑張ろうと思ったけど、皆さんと面と向かって話すのが怖くて、これ付けておけばある程度だいじょぶかなと」
マハガル「似合わねぇ」
イセ「でしょうねぇ」




