第9話 俺、魔王を絶対に討伐すると誓う。さて、こいつをどうしましょう?
天地祓流剣の使い方を完全に物にしたのは、あれから2ヶ月後のことだった。
俺たちは、今日、ようやく魔王を討伐するために、魔王が自分のために作り上げた居城、『月の魔界』なるダンジョンに足を踏み入れた。
当然、世界最強の犯罪魔導師が、他人にすぐに見つかるような所にねぐらを置くはずもなく、それは、世界から隔離されたところにあった。
無論、魔王の妹であるフツルギがいたので、俺たちはすんなりとそのダンジョンに潜入することができた。
「ご主人様、これより、魔王の居室までワープします。私につかまってください」
アリスが、俺に手を差し出す。
それに触れたとたん、体全体が不自然な浮遊感に襲われ、気がつくと、ある大広間に転移していた。
「あら、フツルギちゃんじゃない?幽霊になってまで私にリベンジするなんて、頑固な娘ね。その後ろのお二人さんはフツルギちゃんのお友達かしら?」
その部屋の中央には、全身をおおうマントを着た、フツルギと同じ髪と目をした女性だった。
「そんなこと言えるのは今のうちかもねぇ、おねぇちゃん!!」
フツルギは話を切るなり、両手に持った大鎌を魔王へと斬りかける。
「kila fullulu」
(魔法言語訳:絶壁)
魔王が呟くと、フツルギの持つ鎌の動きが止まる。
「くそっ!一記、ぼさっとすんな!」
彼女は毒を吐き、命令する。
「いわれなくてもっ!!」
俺は無詠唱でマルファスを発動させる。
黒い雷を纏った球が数個、魔王へと飛来し、だがしかし、彼女の障壁によって、それは弾かれる。
その隙に、フツルギに対する集中が減り、彼女の大鎌が再び魔王を狙う。
「ソウルイーターっ!」
フツルギは大鎌の銘を唱える。
大鎌が巨大化し、その速度が急激に上昇する。
その隙に、大雪の大蛇を召喚し、纏わせた俺は、凍結の魔法をソウルイーターに施し、威力減少不可のバフを与えつつ、後方から魔法、ニブルヘイムを放つ。
瞬間、彼女の姿が消え、後方から衝撃波をくらい、魔法が中断される。
「こんなものか?」
魔王はそう言って、上からゲーゴスを放ったアリスに対し、黒い盾をどこからか生み出して防御する。
「つまらないわ、フツルギちゃん。1対3だから少しは面白くなると思っていたのに」
跳ね返されたゲーゴスがアリスを攻撃、天井にめり込む。
一方で、大雪の大蛇を解放し、俺は魔王を照準する。
「へぇ、面白いことするね、君」
魔王が神月を展開、防御準備をする。
大雪の大蛇、フリージングワールド・シェイド発射準備完了。
ふと、魔王の気配が神月の向こうで消え失せる。
「ファイア!」
圧縮された魔力砲が、振動数を消し去って氷の世界を築いていく。
神月が凍りつき、氷解となって散る。
直後、後ろでフツルギが悲鳴をあげた。
振り向く俺。
魔王がフツルギを蹴り飛ばした。
魔法武器、大雪の大蛇の剣を構え、魔王へ斬りかかる。
魔王が素手で受け止め、弾き飛ばす。
空中でマルファスを生成、打ち出す。
神月を応用して、空中に障壁を作り、壁を蹴って前へ突進しながらゲーゴスを応用してビームサーベルを作り、攻撃。
魔王が左手を差し出し、空中に円を描く。
マルファスが止まり、方向を変えてこちらに向かってくる。
ビームサーベルを振り回してマルファスを斬り、同時に魔王へ斬撃の軌道を向ける。
ゲーゴスが屈折し、蹴り飛ばされたフツルギへ向かう。
「フツルギぃーっ!」
「せいっ!」
俺の叫びと同時に、転移したアリスが、それを魔王と同じ方法で魔王に返す。
ゲーゴスを中断した俺は、八寒の天井下ろしを発動させた。
しかし、魔王は、存在の性質を変え、回避する。
直後、フリージングワールド・シェイドを発動させ、座標を凍結し、ジスカ・マーニラムを発動。
しかし、それは失敗に終わった。
「ダミー!?」
後方から圧縮された空気の弾丸が俺に降りかかる。
俺はそれを神月でガード、応用して、地面から影の刺突を行う。
横から空気の揺らぎを感知、大雪の大蛇の剣で影でできた鎌をガード。
しかし、それは腐っても影なので、それは無意味に空を斬り、その黒い刃が首をかすめる。
「ex ul!」
強化の魔法を使い、その剣を影の手でつかみとり、魔王に降り下ろす。
空を斬ったその軌道から、光の矢が大量に放たれる。
その隙にバックダッシュしようと軸足と蹴り足に力を込めたとき、後方から重い斬撃を食らい、吹き飛ばされる。
「ぐはっ!?」
「ご主人様っ!」
飛んでいく俺の体をアリスが受け止め、二人もつれて床を転がる。
「fullulu」
(魔法言語訳:回復)
彼女の応急処置で回復した俺は、アリスに礼を言う。
「それより、これを」
そう言って渡してきたのは、フツルギの武器化アイテム、天地祓流剣だった。
「これ...」
俺はそれを受けとる。
「あらあら、戦闘中によそ見なんて、いい度胸してるじゃない」
魔王はいいながら、ジスカ・マーニラムを発動。
しかし、それは効き目を見せる前に消え去った。
「何...。フフ、面白いじゃない君」
魔王が微笑む。
「アリス、下がって俺に援護を頼む」
「了解です」
俺は作戦を伝え、天地祓流剣を構える。
「相談はもう終わりかしら?それじゃあ、こちらからいかせてもらうわよ」
魔王は、消えるような速さでこちらに迫る。
「オーバーエンド!」
叫び、刀が纏う二色の炎が離れ、刀の形になり、三刀の刀が同時に魔王にインパクトする。
魔力消失、物質破壊、一撃昇天の三属性が同時に魔王を襲う。
しかし、魔王は少し傷ついただけとでもいうように、その場に立っていた。
「なかなか面白かった。けれど、これで終わりよ?」
彼女が右手を差し出し、空を掴む。
後ろで、破裂音が響いた。
嫌な予感化して、振り替えると、そこには────
「ごしゅ...じん...さ.........ま」
ぐちゃぐちゃに潰れた、アリスの亡骸が、赤い血溜まりの中に浮かんでいて────
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──────────!!」
─────死んでいた。




