第七話 質問
「えっと、それじゃあ幾つか聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「はい、構いませんが……」
暫し時間が空いた後、俺は彼女に質問をすることにした。
何も分かっていない状況で動くというのは流石に自殺行為であろう。
「まずんだけど、この森に名前とかってあるのかい?」
「この森の名前ですか?
ここはトレーズオグ……、いえ、人の呼び方ですとデエス大森林だったはずです。」
「どこだそりゃ」
「ご存じないのですか?
かなり有名な場所だと思いますけれど。
ええと、他の種族の言い方ですと……」
「いや、べつにいいよ。
ありがとう。
それじゃあ次の質問なんだけど、ここから一番近い街ってどこだい?」
「人族の街でしたら、東に二百キロほど行ったところにあるはずですけど……。
それ以外となると、わからないです。
ごめんなさい」
「知りたかったのは人族の街だから十分だよ。
しかし、二百キロか〜。
なかなか遠いな」
「そうですか?
森の中で走りずらいというのはありますけど、半日あればつけると思いますが……」
えっ?
半日ってことは六時間?
あぁ、そういえば、この子は馬だったっけ。
「まぁ、君の足であればそれぐらいでつくだろうけどね~。
残念ながら俺の足だともっと時間がかかると思うんだよ」
「?」
「いや、『えっ、何を言っているんですか、この人は?』見たいな顔はやめてください」
「あっ、いえ。
別にそんなことを言ったわけではないんです。
ただ、私が見た感じそんなに鈍足そうには見えないんですけれど」
「ん?
まぁ、そこそこ走るのは速いが……」
帰宅部ではあったが、一応五十メートル六秒台である。
「身体能力も高そうですし、そんなに時間はかからないと思いますよ。
ところでなんですけど、その姿で話しづらくないんですか?」
「?」
「えっと、なんで『どうかしちゃったの、この子は?』見たいな顔で私を見ているんです?」
「いや、言っている意味が全く分からなかったから」
「何で普通の人間型にならないんですかって言うことですよ。
顔とか、人型のほうが話しやすいじゃないですか。
まぁ、今の状態でも普通に話せていますけど」
「!」
言われて気づいた。
そういや、俺今現在鱗を出したままの状態だったのか。
確かに若干しゃべりづらかった気はしてたんだよな。
よし、消すか。
そう思い、特に何かを考えることもなく、俺は鱗を消すことにする。
「キャッ!」
その直後、エクラがさっと顔を左側へと向ける。
そして、ちらちらとこちらの様子を伺っているようである。
「?」
いったいどうしたのであろうか。
彼女の目線の先を追う。
「……。」
「……。」
あれ?
俺ってこんなナイスバディーだったっけ?
太ってこそいなかったが、腹筋が割れているなどということは決してなかったと思うんだが。
「え、えっと、どうして何も着ていらっしゃらないんですか?」
「あ、あぁ。
さっき落ちてきたときに破けてしまってな。
逆に聞くんだが、どうしてそんなに恥ずかしがっているんだい?」
「当たり前じゃないですか!
人前で肌をさらすなんて!」
よくよく考えてみると彼女の服装はどちらも顔と首以外肌を一切さらしていない。
もしかしたら種族的にそういう習慣があるのかもしれない。
「とはいえ、俺が着ていた服は破けちゃっているからなぁ」
「?
新しく着なおせばいいじゃないですか」
「いや、だからその服がないんだって」
「新しく創造しなおせばよろしいではありませんか」
「創造?」
「ええ、さっき私がやったのと同じですよ。
もしかして言い方が違ったりとかするのでしょうか」
もしかしてあの服装を変えたやつか?
「すまん、やり方がわからないんだが教えてもらえるか?」
「別にかまいませんが……、本当に知らないんですか?」
「あぁ、常識に疎くってな」
その後、俺は彼女に教わってしばらくその練習をすることにし、割とすぐに成功することができたのであった。
イメージとしてはただ単に鱗の形状を変えるといった程度のものであったため割と簡単にこなすことができた。
鱗の硬度を落として軽く、柔らかくするイメージである。
そして、完成してからしばらく、俺はエクラとともにファッションショーのようなことをして遊んだのであった。
思ったより楽しかったということをここに記しておこう。




