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加護を受けし青年  作者: バルデル
第三章 戸惑いの日々
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第六話 不穏な空気

 ぶらぶらと散歩に出かけた後、俺は宿に戻ったのだが、部屋には「ちょっと町の外まで出かけてきます」という書置きしかなかった。

 わざわざ外へ行くとは何の用事だったのだろうと思ったが、自由人なのでまぁ、そういうことなのだろう。

 俺よりも気配察知は得意だし、逃走もはやいしで、よっぽどでなければ危険なはずもないので、放っておくことにする。

 はぁ、暇だな~。

 少しごろごろしてから、何か食事にでも出かけるとしますか。

 買い食いをしたので少し眠くなってきたしちょうどいいであろう。

 人間やることがなければぐうたらになるのは仕方のないことなのである。

 心の中でいつものように言い訳しつつ、眠りにつくのであった。




 目が覚めると同時にエクラが帰ってきた。


「お帰り、何か収穫はあった?」

「少しだけ薬草を手に入れましたが、その程度ですね。

 ケイさんは何かありましたか?」

「何も。

 この町は平和だねぇ~。

 さて、すこしお腹も空いてきたし何か食べに行きますかね。

 エクラはどうする?」

「ご一緒します」


 というわけで食事をしに外へ出る。

 中央の広場へと就く寸前で朝に出会った衛兵の人を見かけた。

 お礼をしておいた方がいいかな……うん、そうしておこう。

 というわけで声をかけておく。


「あっ、先ほどはありがとうございました。

 おかげで無事に戻れました」

「ん?

 あぁ、先ほどの方か。

 いや、役に立てたようで何よりだ」

「もう仕事は終わられたのですか?」

「まぁな。

 ふむ……よかったら夕食を共に取らないか?

 まだこの町に来たばかりなのだろう?

 私の行きつけの店を紹介できるが」

「ありがたい、まだこの町に慣れてないものですから。

 そうだ、代わりに私がご馳走しますよ」

「私はそれなりに量を食べるが大丈夫なのかな?」

「その辺は心配いりませんよ。

 エクラ、こちらの方がお店を紹介してくださるそうだ。

 あぁ、そうでした。

 私はケイといいます。

 どうぞよろしく」

「エクラです。

 お心使い感謝いたします」

「ナイマだ。

 よろしく頼む」


 というわけで、店を紹介してもらえることとなった。

 食事のついでに何か情報なんかを仕入れられたらいいな。




「それにしても、衛兵の仕事というのは割と早いものなのですね。

 この時間以降に来客する方とかはいらっしゃらないのですか?」

「いや、普段はもう少し遅いのだがな。

 私がちょうど用事を言いつかったのでね。

 今日は少し早くに終わったのだよ」

「へぇ、そうなんですか。

 ということは、明日の朝早くからの仕事なのですか?」


 行きつけだという串焼きの店で話を膨らませていく。

 この店は特にタレに力を入れているそうで、ぜひ持ち帰りたいと思うぐらいにはおいしい。


「あぁ、昨日来る予定の方が来なくてな。

 連絡もないということだし、明日の朝いちばんで見て来てくれということらしい。

 まぁ、この時期だから人が足りないらしくてな。

 俺が駆り出されることになったわけだ」

「なるほど、それは大変ですね」


 取り立てみたいなものなのかな?

 どちらにしても心地いい仕事というわけではなさそうだなぁ。

 そんなことを思っていたのが顔に出てしまったのであろうか、苦笑いを浮かべつつ、ナイマさんがそんなことはないと否定してきた。


「幸いなことに明日行く村は割と裕福な村でね。

 近くの森で資源が豊富だから税金が払えないということはまずないんだ。

 どちらかというと、ただ忘れてただけの可能性の方が高いね」


 村があるのであろう方向を指さしつつそう話すナイマさん。


「そうなのですか。

 まぁ道中はお気をつけて」

「ああ。

 さてと、そろそろ帰らせてもらうとしますか。

 明日は早いのでね」

「はい、お疲れ様です。

 代金は心配しないでください」

「あぁ、困ったことがあればここの店主にメモでも渡しておいてくれ。

 多少時間を作れるだろう」

「ありがとうございます。

 それではお疲れ様です」

「ごちそうさまでした」


 そういって店を出ていくナイマさんを見送る。

 途中まではエクラも話に加わっていたのだが、最後の方は会話に参加せず、しまいには何かを考え込んでいた。

 いったいどうしたのであろうか。


「どうしたんだい、エクラ。

 最後の方は考え込んでいたけど」

「あっ、いえ。

 たいしたことはないんです。

 ただ、先ほどのナイマさんという方がさしていたのは、ちょうど私たちが来た方向だと思っただけです」

「へぇ、そうなんだ」

「後、やりたいことがあるので、その内容を思い出していたんです」

「採ってきた薬草と関係があるの?」

「ええ、まぁ。

 いろいろとできるかもしれないと書いてあったので試してみようかと。

 少しだけ部屋の中で変なにおいがしてしまうかもしれません。

 たぶん大丈夫だとは思いますが……」

「別に気にしないから大丈夫さ。

 さて、帰ろうか。

 会計お願いします」


 そんなこんなで会計を済ませた俺たちは宿へと戻ることにしたのであった。

 ちなみに、結局においがひどいとかそういうことはなかったので一安心である。




 ◇




 その次の次の日。

 町の中では一つの出来事が大きな話題となっていた。

 エクラがつかんだ誰かお偉いさんが来るという情報ではない。

 それとはまったく違う出来事、市民にとってみれば、自分たちにとっても身近なこと。

 俺の視点から言えば、ナイマさんが任された仕事に関係することであった。

 そう、その任されて向かった村が壊滅していたのだそうだ。

 いや、正確に言えば、向かった村の人々が誰一人としていなくなっていたということであった。

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