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加護を受けし青年  作者: バルデル
第三章 戸惑いの日々
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第七話 自分の目的

 村が一つ消えた。


 この大きなニュースはすぐさまこの町のほぼ皆が知るところとなった。


 当然、俺たちにもそのニュースが飛び込んでくることとなる。

 朝食の最中であったため若干パンがのどに詰まりかけながらも思考をめぐらす。

 はじめは、もしかしてナイマさんもいなくなったのではと思ったのだが、彼は人手が足りないのでと言っていたことを思い出し、少しほっとした。

 人手が足りないということは多分一人で行ったんだろうし、それならば、情報が来ている以上大丈夫なのだろうと判断したからだ。

 何かに襲われたならまだしも、急に消えたという状況、仮に一人ではなかったとしても一部だけ残るというのは考えにくいからな。


 とはいえ、その内容は気になるわけで、早速その日の夜にまた、例の店に向かってみることにした。

 その店に向かう間も、


「村がなくなったらしいな」

「何か悪いことをして、神様の罰が当たったんだってきいたぞ?」

「三丁目のあんちゃんが、実はこれは魔族の侵略の一端で、あそこが今、魔族の前線基地になってるんじゃないかってこの町のお偉いさんが考えているって聞いたが」


 そんな話が次々と耳に入ってくる。

 前線基地なら見てきた人たちが帰ってくるはずもないだろうよなどと思いつつもうわさというのはこういうものなのだろう。


 実際上層部の人たちはどう考えているのだろうか?

 流石に町で流れている根も葉もないうわさと同じようなことを考えてはいないと思うが……どうなのだろうか。


 そんなこんなで、店の中に入ると、ナイマさんは一人で食事をしていた。

 野次馬なんかに囲まれているんじゃないかと思ったが、案外そんなことはなかったようだ。

 というわけで、俺自身が野次馬として合席させてもらうことにする。


「お疲れ様です、なんか大変なことになっているみたいですね。

 町ですごいうわさになっていたよ」

「あぁ、そうだな」


 夕食を頼み、ナイマさんに声をかける。

 ちなみに、今日は俺一人だ。


「まぁ、してやったりなわけだけどな。

 こっちとしては」

「ははぁん」


 ふと顔を見てみると、なんだか悪い顔をしている。

 どうやら、わざとうわさを流したようだ。


「話すら聞いてくれなくてな。

 だから、少しだけね」

「本当に少しなんです?」

「さぁ、どうだかね。

 まぁ、この町の人間に近い、俺たちなりの抗議ってことだ」

「なるほど、それを俺に言っちゃってよかったんです?」

「この町の人間じゃなさそうだし、それに俺は今なにも言っていないからな」

「まぁそうですね」


 確かに何も言及してはいないなぁと思いつつ笑う。

 ちょっぴり悪い笑顔だったなぁという自覚がある。


「まぁ、それと理由があってだね。

 近々、おそらくだけど、あの村の調査が行われることになる。

 流石にここまで話題になれば動いて、民衆を安心させる必要があるからな。

 でだ」

「……俺にその調査に参加してほしいとかそういう話ですか?」

「まっ、その通りだな。

 方向音痴の商人はいないもんだし、ということはそれ相応の腕があるだろ?

 あの宿はああ見えて結構なもんだからな」

「そうなんです?」

「あの宿はなんかそういう客を引き付ける何かがあるらしくてな。

 実のところ、だから少し丁寧に縁を作ろうとしたわけだよ」

「なるほどなるほど」


 いろいろと裏の事情があったらしい。

 そういう理由とあと少し酔っているのか、ナイマさんが結構饒舌だ。


「いくら今は人材不足とはいえ、ここまで来たら、動かざるを得ないだろう。

 そこまで馬鹿ではないだろうからな。

 とはいえ、実際人材不足がひどくてな。

 俺の直属の上司から、人を集められるだけ集めてこいと言われているんだ」

「まぁ、実際に動いたら考えるとしますよ」

「あぁ、それで構わない」


 そういうと、ナイマさんが先に立ち上がる。


「今日はこちらでおごろう。

 では、前向きに検討しておいてくれ」

「そうですか。

 ごちそうさまでした」


 実際気になるし、こっちにも影響は出そうなので首を突っ込ませてもらうことにしよう。

 そう思いつつ、せっかくなのでおごられることにしたのであった。




 ◇




「というわけで、気になるから参加してみようと思うんだがいいか?」

「はい、かまいませんよ。

 私も気になりますから」


 帰ってきた後、エクラにそう告げると何を言うこともなく同意をもらえた。

 そんなエクラをふと見ているとふと疑問がわいてくる。

 先ほどのナイマさんの発言のせいもあるだろう。

 どうして、エクラは俺についてきているのかということが気になったのだ。

 基本的に俺は自分勝手に動いていることが多い。

 特に目的がないというのが一番大きな理由だろう。

 目的がないからこそ、行動に一貫性がないということが自分でもよくわかる。

 自分がそういう風に動くと決めて動くのなら、それはそれでいいと思う。

 が、彼女はそうではないだろう。

 ついてきてくれるのは心強いということで、特に聞いてみたりはしなかったのだが、せっかくの機会なので、聞いてみることにする。


「本当にいいのか?

 他にやりたいことがあるなら、そっちをやってもいいんだぞ?

 俺も別にこだわりがあるわけではないからな」

「いえ、本当に問題ないですよ。

 どうしてそんなことを?」

「いや、エクラも何か目的があるんだろ?

 こうしていろいろとやってるからにはさ」


 時々、一人で行動して、いろいろと情報を集めるようなことをしていることからしても、それは明らかだろう。

 だからこそ、その目的を果たさなくてもいいのかと気になってしまうのだ。


「まぁ、そうですね。

 確かに、私にも目的はあります。

 ですけど、今はまだ、その時期ではないですから。

 それでも、気になさるというのでしたら……。

 もし、もしその時が来たら、私に協力してください」

「そんな口約束だけでいいのか?」

「ええ。

 今は、その口約束だけで十分ですよ」


 裏があるかどうかなんて俺には残念ながらわからない。

 だが、それでいいというならば、それを信じることにしよう。

 そもそもそういう風に言ってくるのであれば、それしか選択肢はないと思うしな。


「そっか。

 まぁ、心配しないでくれ。

 俺は約束はちゃんと守る男だからな」

「ふふ。

 お願いしますね」


 そう言ってエクラはクスリとほほ笑むのであった。

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