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加護を受けし青年  作者: バルデル
第三章 戸惑いの日々
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第五話 第六感再び

「……」


 いつのまにか、見ていた景色が変わっていた。

 そこにはすでに自分以外は誰もいない。

 さっきまでいた子は親か誰かがつれて帰ったのかなぁ。

 そんなことを考えるも、どこか現実味がないような、そんな感覚を受ける。

 その違和感を紛らわそうというわけではないが、暗くなっている空を見上げぼんやりとしていると、いつのまにか隣にエクラが立っていた。


「どうかしましたか?

 先ほどから結構な時間上を眺め続けていましたけど。

 空には何もないと思いますよ?」

「確かにそうかもしれないな。

 でも、何もなくとも、そこから何かを感じ取ることはあるって聞いたことがあってね」

「そうなんですか……、私には何も感じ取れませんね」

「俺もだ」


 じゃぁ何でいったんだよって話だなと自分で自分に突っ込みを入れたくなるような、そんな会話。

 なぜだろう。

 話がすらすらと出てきて、少し変な気分だ。

 このまま夜風にあたっていたいような気もするが、このままいるとさらに変になってしまいそうな気がする。

 現に頭が若干痛くなってきた。


「さてと、とりあえず戻るとするか」


 そういって泊まっている宿のほうへと向かうと、その横を何も言わずついてくる。


「そういえば、しばらく時間があったけれど何をやっていたんだい?

 この町の観光とか?」

「いえ。

 少し、調べ物をしていました」

「ふぅん、調べ物か~。

 何か興味を引くようなことは見つかったのか?

 もしくは、なんか現状に変化をつけそうな出来事とか」

「いえ、たいしたものは。

 ただまぁ、そうですね。

 とても偉い方が来るそうですよ、この町に」

「町の噂か何かかな?

 ちなみに名前とかは分かるか?」

「ええ、まぁ。

 名前は残念ながら分かりませんね。

 何でも、この国の方ではないそうでして。

 わざわざこの国にやってくるということは何かがあるんでしょうね。

 おそらくはですが、エリュウテリアのことではないかと」

「ふ~ん、あの町の噂はまったく聞かないのに、なんでそんな噂は流れているんだろうね?」


 というか、あの町に何かが起こっているっていう実感がわかないんだよねぇ。

 実際に見てたりしないからだろうか、いや、そもそも町が危機に陥るということに対してあまり実感がわかないというだけなのかもしれない。


「さぁ?

 私はそういうことには詳しくないのでよく分かりませんね。

 きっと、人間というのはそういうものなのではないんですか?」

「ふむ、そうかもな」


 よくよく考えてみると、日本でもお偉いさんとかが来たって言うのは話題になりがちだけど、何のためにというのを知っていることはあんまりないし、それほど変わった話ではないのかもしれない。


「ところで、先ほど話していた空の話もそうなんですけれど、そういう話は親から聞いたりとかしているのでしょうか?」

「んにゃ、本とかに載ってたりしたやつが多いかねぇ。

 そういう先人の教えって言うのはねぇ、意外なところで役に立つ物だから知っていて損はないさ。

 お祖母ちゃんの知恵とかいって、食べられる野草だったりなんだったりを教えてもらったりするとかあるじゃないか。

 あれと同じだよ。

 そういうことを聞いたことってない?」

「あぁ、そういうことでしたら私にもあります。

 ずっと小さい頃に聞いた話なのでうろ覚えだったりしますけどね。

 でも、幾つかは今でも覚えています。

 ところでなんですが、食べられる野草というのはどういうことでしょうか?

 苦い、辛いとかはありますけど、食べられないことはないと思いますけど」

「……毒がある場合は食べれないからね、普通の人は」

「あっ、そうでしたね」


 そういってスッと目をそらされる。

 忘れないぞ。

 これは食べれるとエクラがいった物を一緒にを食べた翌日、俺だけが高熱に犯されたことを。

 吐きそうだけど吐けない、あの苦痛を。

 一日で直ったからよかったまだ良かったが、下手したら死んでた可能性もあるわけだからなぁ。

 横で「大丈夫ですか?気候の変化のせいですかねぇ」とかいってたエクラにどれだけ反論したかったことか。

 まぁ、その後で色々とお話をしたわけではあるが。


「でも、少しぐらい毒があるものの方がおいしいんですよ?」

「まだそれを言うか」

「ええ、本当のことですから」


 意外と強情で、こういう意見を絶対に曲げないエクラだが、この事例に関して言わせてもらうと、その後俺が実験台になって激マズだったことが判明している。

 が、エクラはおいしいじゃないですかと食べていたので、エクラの味覚が若干狂っているんだと思う。

 本人はそう思っているのだから仕方ない。

 がしかし、その意見を押し付けるのは命の危険すらあるのでやめて欲しい。

 サバイバルとかで毒のある食べ物を気にしなくてもいいというのはすごい有利な気がするけど、毒のある物を仲間にだしてしまう可能性があることを知ったいい事例だったのであった。




 ◇




 翌朝。

 俺は町の中心部である噴水広場へとやってきていた。

 特に目的はない。

 いわゆる散歩というものだ。

 部屋にこもっていてもやることが何もなかったともいうが、まぁそれはおいておくとしよう。

 そんなことをエクラには言って出てきたのだが、実際は嘘である。

 いやぁ、実は第六感が「なんかここら辺なんかありそうじゃない?」と言っていたのだ。

 前回とかも含めて、俺の第六感は残念ながらいいことは拾ってこなさそうなので、一応一人で様子見というわけだ。

 ちなみにこれまでに働いた第六感的なものの結果は、

 ①竜みたいなのに絡まれる。

 ②超強そうな人に絡まれる。

 とほんとにろくなことになっていない。

 まぁ、街中ではそんな危険な目には合わないだろうということで、多少気を付けつつ、感に従って歩いていくと、一軒の豪邸へとたどり着いた。

 豪勢な門をしたその建物は少し裏通りに入ったような場所で、道幅はちょうど片道一車線といったイメージである。


「ここか?

 いたとしても、質の悪い貴族みたいなのしかいなさそうなんだけどな~」


 もしくは大商人かなどと言いつつ周りを見渡すと、明らかにこの家を守っていそうな警備員的人がいたので話しかけてみる。


「すみません、最近ここに来た新参者なんですが、こちらのお宅はどちらの方のお宅なんでしょうか?」

「む?

 ここは家ではなく、財務署だ。

 周りからとられた税金を集めたりしているところだな。

 家ではない」


 どちらにしろ、いても質の悪い商人程度だろうな。


「そうでしたか、手間をかけさせてしまって申し訳ございません」

「いや、たいしたことはない。

 ところで、もしかして迷子になったのか?

 目的地を教えてもらえれば、方角なら教えられるぞ」


 ここで何か言わないと怪しまれそうな気がするなぁ。

 ふむ、ならばここは……。


「えっと、それでは『燻んだ鏡の館』はどちらなのか、ご存知でしょうか?

 小さな噴水のそばなのですが……」

「ふむ、それはそこの小さな噴水ではないな。

 一度噴水広場まで戻るといい。

 中央広場には衛兵がいるから彼らに聞けばすぐにわかるだろう」

「ありがとうございます。

 助かりました」

「なに、たいしたことではない。

 来客をもてなすのは基本だからな」

「それでは」


 まぁ、そんなに脅威になるものでもないだろう。

 一応場所とかだけは記憶に入れておくとしますか。

 さて、気もすんだことだし戻りますか。

 何か買い食いして帰ろっと。

 おいしいものはありますかねぇ?




 ◇




 キィイという音と共に大きな扉が開き、中から一人の老人と中年の男性が出てくる。


「お疲れ様です、財務長官殿」


 先ほどまで門番に立っていた男性が敬礼とともに声をかける。


「警備の方ご苦労。

 それではナラー卿。

 本日はご足労いただき、感謝いたします」


 その老人の呼びかけに対し、中年の男性は軽く会釈をし、老人はそのまま建物の中へと戻っていく。

 そしてその場には二人だけが残った。


「今、門をお開け致しますので少々お待ちください」


 門番がそういうと、部下であろう者たちに指示を出していく。

 そして、自分も向かおうとしたところで、中年の男性、ナラー卿に呼び止められた。


「すまないが、一つ聞いてもいいかな」

「もちろんでございます、ナラー卿」

「先ほど、君は誰かの相手をしていたが……彼は、何を?」

「つい先日この町に来たそうでして、迷子になってしまったそうです」

「そうか、いや、先ほど窓から偶然見えたものでな。

 少し気になったのだ。

 あまり人が来るような場所ではないからな」

「そうですね。

 それではどうぞ」


 目の前の道路につけられた馬車に乗り込む。

 中には樽やら箱やらが多く積み込まれていた。


「前の道が狭いばかりに窮屈な思いをさせてしまい大変申し訳ございません」

「いや、たいした問題ではない。

 すぐだからな」

「そういっていただけると幸いです。

 それでは、良き旅を」


 その言葉が合図であったかのように扉がパタンと締まり、馬車が進んでいく。

 一頭でしか引いていないその馬車は大量に積み込まれた荷物の重さをまるで感じさせず、滑らかに進んでいくのであった。

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