第三話 燻んだ鏡の館
「よし、とりあえず泊まるところを探そう」
そういって俺たちは町の中を歩いていく。
町は噴水があるといっていたからなんとなく想像がついていたが、水の豊かな町なようで、水路が幾つか通っている。
飲み水に使用できるかどうかは怪しいが。
今回泊まるところとして理想的なのは、あまり大きくない宿だ。
別に大きさが問題ではないのだが、大きいところは必然的に人の量も多いだろうし、ストレスがたまりそうなので、できれば小さめの宿がいい。
とはいえ、せっかくお勧めされたので、まずは一番大きいという噴水を見に行ってみた。
人がそれなりに多かったものの、普通に近くによることはできた。
感想としては、大きいねぇといった程度で、特にはない。
強いていうなら湧き出ている水はきれいそうだったという程度か。
というわけで、俺たちはそのまま宿を探しにメイン通りをそれて、街中を探していったのだが。
「どう見ても宿とかなさそうな気がするなぁ。
明らかにここ市街地って言うか、地元の人たちが住んでるところだろ」
「まぁ、ちょうど良く散歩できたということで。
来た道を戻るというのもつまりませんし、道沿いに行ってみるということで良いのではないでしょうか」
「まっ、それで良いか。
別にそこまで急いでるわけじゃないしな」
太陽はまだ高い位置にあり、宿もそこまでこんでいるということはないだろう。
しばらくして、また小さな噴水のある広場のような場所をみつけた。
それと同時にその傍に宿屋と思わしき看板を見つける。
「あれ、宿屋のように見えますね」
「そうだな。
聞いてみるか」
とりあえず入ってみることにする。
両開きの扉を開けるとまず目に入るのは大きな鏡。
少し燻んではいるものの、その周りの装飾をみるにかなり高価なものなのであろう。
「いらっしゃいませ。
お泊りですか?」
「ん?
あぁ、ちょうど宿を探していてね。
部屋は空いているか?」
「利用するのはお二人のみでしょうか?」
「ああ」
「でしたら、二人部屋であればご案内できますが、よろしいでしょうか」
ふむ。
二部屋とってもいいが、お金の無駄だし、前から一緒の部屋にいたわけだし、それで良いか。
着替えとかもいらないしね。
「それで構わないよ。
えっと、料金は……」
とりあえず一週間分前払いをして、部屋の鍵をもらう。
2-3号室だそうだ。
入ってみるとわりと広い。
全部木で作られた、なんだろう自然を意識した作りって言えばいいのかな?
そんな部屋である。
荷解きするようなものもないので、ちょっと部屋を探索していると、エクラが何かを見つけたようだ。
「なんだそれ?
何が書いてあるんだ?」
「誰かの日記みたいなものですね。
えっと……。
『この宿の名の由来ともなっている広間の鏡ははるか昔、一人の職人が自らの娘のために作ったといわれる一品物である。
周りを覆っている金の装飾は代々もっとも優れた職人が作り上げてきた見事なものでありもちろん素晴らしい。
だがしかし、本当に見て欲しいのは、縦に五人、横に二人の人が余裕で並べるほどの大きな鏡の本体だ。
この鏡は燻んでおり、表面には幾つかの傷がついてはいるものの決して割れたことはないのだ。
自らの娘のために作った鏡は表面に傷がつきこそすれ、決して割れることはない。
故にこの鏡は『家族同士の愛』を象徴するのだ。
城壁が『恋人同士の愛』の象徴、鏡が『家族同士の愛』の象徴とするのならば、後もうひとつはいったいどのようなものなのであろうか。
私がこの命尽きるまでに見つけるのは不可能なのかもしれない』
って書いてあります」
「ふぅん。
てことはその日記によれば三つあるってことなのかな?
何かの象徴が」
「だと思います。
きっと、この町に伝わる伝説みたいなものなのではないでしょうか?」
「まぁ、そういうのって三つのイメージがあるもんな。
三種の神器みたいに」
「そうですね」
まぁ、三種の神器は「鏡」「玉」「剣」だからすでに違ってるんだけどな。
にしても、三種の神器ってここでも通じるんだねぇ。
そんなことを考えていると自分のお腹がすいてきたことに気が付く。
「ちょっと何か食べ物を探しにいこっか」
「そうですね、これどうしましょうか」
「もとあったところに戻しておけば良いんじゃないか?
どこにあったんだ?」
「床板の隙間に挟まってました。
隠してあったんですかね?
封印されてましたし」
「えっ、封印?」
「そんなに難しいものではなかったですし、本気で隠したかったわけではなさそうですけどね」
えっ、何?
全く驚いていないけど、封印って割と普通にあるものなのかなぁ。
食事のときに聞いてみようと思いつつ、とりあえずお腹がすいたのでとりあえずそれを満たしにいくことにするのであった。




