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加護を受けし青年  作者: バルデル
第二章 町での日常
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第九話 災厄③

「ここまで来れば大丈夫でしょうか」

「あぁ、多分大丈夫なんじゃないかな。

 さてと、さっきできなかった話をしようか」


 現在は深い森の中……ではなく、普通の道を二人歩いている。

 辺りはすでに真っ暗で、割と時間がたったんだなぁと言うことを実感する。

 しばらくすると二人でぎりぎり座れそうな岩を見つけ、二人で横並びに座って話し始める。


「さて、まずは俺のほうから話させてもらうよ。

 森の中での話しなんだが……」


 森の中でのことを話していく。

 あぁ、そう言えば、せっかく『悪魔の罠』の実を採ったのに一口齧っただけで他全部置いてきちゃったなぁ。

 ていうか、かごも置いたまんまか。

 話しているとそんなことが気になったがまぁ、どうでもいい話だな。


「なるほど、魔族と会ったんですか……、それで警告されたと……」

「そういうこと。

 ちなみに彼女は自分たちのことをオラクルって自称していたけどね。

 で、そっちの話はなんだい?」

「私の同族と思わしき人に出会いました。

 ただ、それだけです」

「それだけ?」

「ええ、ただ、その人がどうもその『強制共鳴』させていたようでして。

 ……この言い方で分かるでしょうか」

「いや、すまん。

 さっぱりだ」

「えっと、簡単に言えば、自身の考えを無理やり相手に伝えて、相手を指示通りに動かすということです。

 言葉や文字を使わずに直接刷り込む感じなのですがこれで分かりますか?」

「あぁ、なんとなくな」


 あれだろ?

 つまり、洗脳とかテレパシーみたいなものってことだろ?

 それを街中でやっているやつがいたと。

 そりゃ逃げるべきだわな。


「私だけなら大丈夫だったかもしれませんが、ケイさんは多分抵抗できなかったと思ったのでできる限り早く離れたかったのです。

 勝手に出ようとしていたことについては謝罪します」

「いや、それは俺のためってのもあったってことだろ?

 なら問題ないさ。

 まぁ、ほんとはあの二人を説得するまで待っていてほしかったんだが」

「そんな時間はなかったと思います。

 先ほど何者かが広域に魔法を展開したのが確認できました。

 一歩遅かったら私たちも巻き込まれていたかもしれませんし、残念ながら、あの二人を助ける余裕はなかったでしょう」


 冷静な分析をエクラがしてくる。


「そうか」


 俺はそれに対してそんな答えしか返すことができなかった。

 そして暫しの沈黙が流れ、俺が会話を再開する。


「にしても、そんな魔法が発動されたのなんてよく分かったな。

 結構な速度で走ってる最中だったって言うのに」

「私が使う魔法と根底が同じなので察知できるんです。

 それに元の姿のほうが察知とかはしやすいですから。

 手を使えないのが不便なので普段はこの姿ですけど」

「なるほどねぇ。

 ちなみに、エクラも同じようなことはできるのか?」

「いえ、私のような中途半端な存在ではできないと思います。

 試したことはないので分かりませんけど。

 でも、私の父親は同じようなことができたそうです」

「そうなのか?」

「昔一度だけそんなことを聞いたことがあります。

 まだ私が幼かった頃なので、正確な記憶ではありませんけどね」

「子供の頃か。

 どんなんだったんだ?

 エクラは」

「普通の子でしたよ。

 話を聞いた頃なんかは両親も優しくて同い年の子も何人かいましたから、いろいろと遊んだりしていました。

 ケイさんはどうだったんですか?」

「俺か?

 そうだねぇ」


 俺の自分の子供の頃の話を少しだけエクラに話す。

 ちょっと厳しめだった父親と、優しかった母親との暮らしだ。

 なんだか、すごく懐かしいように感じると共に、少しだけ違和感を感じる。

 なんだろうなぁと考えているとエクラが少しうつむきがちになっているのが目に入った。


「どうかしたのか?」

「いえ、たいしたことでは。

 ただ……。

 ただ、昔のことを思い出してしまっただけです」

「そうか」


 俺はその言葉が嘘だと思った。

 彼女の表情に特に変化は見られないのだが、過去を思い出しているのであれば、逆に表情が変化していておかしくないのだから。

 だから、彼女は表情を自分で隠しているのだろう。

 ただ、それを今聞くことはできなかった。

 彼女の唇の端が少し切れてることに気づいてしまったから。

 その話を聞くのは少なくともこのタイミングではないだろうと悟ったから。

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